西尾さん ~4~
西尾さんの最終話です。
ちょっと不快な話になります。
不快に感じれば飛ばしていただければと思います。
Another Storyで柳川くんと月原くんがありますので
そちらも良ければお読みください。
「久しぶりね、元気だった?」
そんな私の呼びかけに竹中は目を見開いて驚きながら、
「いや~、絶対に話しかけられないと思ってたからね。」
苦笑する竹中。
私だって話しかけるつもりは・・・いや、いい機会だ!
「今、何してるの?」
「うん?東京で弁護士やってるよ。」
「え!?」
「・・・そんな風には見えない?」
「いや、そんなことは・・・。」
驚いてしまいうまく反応できずにいると、
「西尾さんは何をしているの?」
「私は、東京で専業主婦をしているわよ。」
「・・・何かセレブチックな言葉遣いだね・・・。」
「ま、まあ、旦那が部長をしているから、
その付き合いをしなくちゃいけないからよ。」
「へ~、大変だね。」
軽く流しているようだけど、どうせ心の中ではあせってるんでしょ?
「竹中さんの旦那様は何を?」
「ええっとね、ベンチャー企業の社長をやってるよ。」
そこで上げた名前に驚いてしまう。
テレビにも出てくるその会社・・・
そう言えばそこの会社は若手社長が立ち上げたって言ってたような。
「そこって確か今の社長さんが学生時代に立ち上げたって・・・。」
「そうそう、私もそこの大学でね。学生時代に知り合ったんだよ。」
・・・とういうことは、竹中も同じ学校?
だって、あそこは関西のドンの国立大学だったはず・・・
そう言えば、弁護士?私達の歳で弁護士っておかしいんじゃないか・・・
「弁護士って、何か試験を合格しなくちゃいけなかったんじゃなかった?」
「そうそう、司法試験をね。それは学生の時に合格しちゃたの。
それですぐに研修をし始めたんだけど、妊娠もしちゃってね。
結構バタバタとしちゃったんだ。」
「あ、お子さんがいるのね。どこの学校に通わすの?
私は主人の出身の〇応に行かせようかと思ってるのよ。」
「うん?今年入試?じゃあ、うちの子の後輩になるかもね。
今、うちの子が通ってんだよね。
そっか・・・何か分からないことがあったら私に聞いてよ。
色々やらないといけないことがあるから大変だろうから。」
「・・・ええ、ありがとう・・・相談・・・行くわ。」
自分でも分かるように衝撃を受けていることに、
彼女に何を言っても私の上をいかれてることを痛感して
ただただ歯がゆさを感じていく。
・・・こんな奴に・・・
その後の竹中との会話は常に頭を殴られるような感じだった。
車の話でも、
「今、ポルシェ911カエラって車に乗ってるんだ~。」
そういう彼女が見せてくれた車はスポーツカーであり、
コッソリとスマホで調べるとうちの買った車よりも高い値段の車であった・・・
私の友達は私の話に驚き、羨んでくれるのだが、
最後になると竹中と比べられてしまい・・・。
私にとっての最悪な同窓会はこうして終わったのだ。
気分が落ち込んだ帰省であったが、
私が帰京すると、すぐに先日のお茶会に来ていた新参者の奥様から連絡があり、
「清水部長の奥様には本当にお世話になりました。」
そう言って、お茶菓子を届けに来てくれたのだ。
会えば私の服装を称賛してくれて、お茶会の席ではみんなが私の話を聞いてくれる。
「うらやましい。」
「あこがれます。」
「私も清水部長の奥様のようにします。」
ああ、こここそが私のいるべき世界なんだ。
先日の同窓会では品位もない席であり、あんな世界は私が行く席ではなかった。
私は笑顔を私の下座に座っている奥様方に向けて話をするのであった。
そんな世界ももろく崩れていってしまう。
ある日の夕方、いつもより早い帰宅をしてきた主人に疑問を持つが、
玄関に迎えに行くと一緒に男女二人がそこにいた。
「お久しぶり、西尾さん。」
にこやかに話しかけてくる女性の方が・・・
「・・・竹中・・・。」
どうしてこいつがここに居るの?
「ふふふ、“さん”付けを忘れるほど驚かれるとなかなか気持ちがいいね。」
「おい、竹中。仕事をしろよ!」
竹中の隣居た男性が竹中をしかりつける。
「了解です。それで今日来たのは・・・清水部長の横領が発覚したからよ。」
「え!?」
驚きのあまりからだが固まってしまうのだが、
それでも話しは進んでいく。
「まずは会社への賠償を済まさないとダメなので、
とりあえず資産をしっかりと開示させてもらうわよ。」
「・・・。」
呆然とする中で、主人が弁護士二人の指示に従い、
通帳などを差し出していた。
「・・・いくら横領したの?」
「・・・。」
何も答えない主人に代わって、竹中が、
「10億だよ。」
「!?」
絶句する金額だ。
そもそもうちに入れている金額よりもはるかに大きい金額だった。
「・・・通帳に記載されている金額とは大きく乖離しているのですが、
他に口座をお持ちじゃないですか?」
当然弁護士もその点を尋ねると・・・
「・・・だ。」
ぼそりと呟く主人に、聞き取れなかったため弁護士が、
「もう一度、はっきりと。」
「愛人のところだ。」
・・・あいじん?
何を言っているのかワカラナイ・・・
主人の口から出てきた言葉が全く理解できなかったのである。
私が呆然としていると竹中が私を
ソファーに座らせて落ち着かせる。
主人が今後について弁護士と話をしている中、
そこに座って仕事をしている竹中の姿が私の目に飛び込んできた。
しっかりとした自分を持っている彼女・・・
私にはないものをたくさん持っている彼女を・・・
内心ではきっと私を馬鹿にしている・・・
こんな男にひっかかったことを・・・
「・・・バカにしてるの?」
私の言葉に、竹中が手を止めてこちらを見てくる。
「は?」
「だから、私をいつまでバカにしてるのよ!!」
「別にしてないけど・・・。」
「この間の同窓会でも馬鹿にしてきて!!
いじめたことをまだ根に持っているんでしょう!?」
「・・・いや、ざまあみろとは思ったけど・・・。」
「やっぱり・・・。」
「なんだったっけ、ちょとと前に流行ったドラマで・・・。あ!?思い出した!」
得意気な顔をして、竹中が、
「やられたらやり返す・・・
倍返・・・イタぁ!?」
男の弁護士に頭を叩かれる竹中。
「馬鹿なことを言ってないで、仕事をしろ。」
「・・・了解です。」
そういって、仕事を再開する竹中。
どうやら今後の方針が決まったようで話し合いが終わった。
すると竹中が私の傍に来て、
「これから一緒に頑張ろうか。」
「・・・はぁ?」
「まあ、これから色々と大変だろうけど、頑張ろう。」
「何であんたはそんなに普通にしていられるのよ!!」
「そう?」
「私は虐めていた相手よ!!」
「そうだね・・・。」
「貴方を見下していた!!」
「そうだね・・・。」
その後も罵詈雑言を飛ばして、怒ることなく私の言葉に耳を傾けくる竹中。
「ねえ・・・どうして?」
「え?」
「どうしてそんなに・・・優しいのよ・・・。」
「・・・ねえ、柊は優しくなかった?」
「え?」
「柊って優しくなかった?」
「・・・優しかった・・。」
「だよね。私もさあ、あいつみたいになりたんだよ。
あいつのように、優しくて、厳しい人間になりたいんだよ。」
「・・・。」
「まあ、これもいい経験になるからね。
虐められていた相手を助けるなんて、なかなかないからね。」
そう言って笑う竹中を私は呆然と見ることしかできなかった。
「柊って・・・何の見返りもなくて私を救ってくれたことがあるんだよね。
しかもそれで怪我までしてさ・・・それでも笑顔で恨みもなく私と接してくれるんだよ。」
「・・・。」
「私もあんな人間になりたいんだ。だから、まずはその第一歩に西尾さんを助ける。」
「・・・そう。」
「これから大変だよ。まずは愛人から慰謝料請求して、
あ!離婚しちゃう?がっぽりと貰おうか慰謝料。」
「・・・他人事だと思って・・・。」
お茶らけている竹中を見ていると、
きっと私を励ますためにしているのだなっということが伝わってくる。
「これから・・・よろしくね。」
「ええ、こちらこそ。」
私の中で憑き物が落ちるような気持になった。
まだまだ色々とやらなくてはいけないこともたくさんあるのだろうけど、
まずは・・・
「離婚をお願いするわ。」
その言葉を聞いた竹中弁護士が、
「喜んで!」
どこかの居酒屋で聞いたセリフを笑いながらいうのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。
修正
誤字脱字が多くてすいません。全体的に誤字脱字の修正をしました。
第一弾は6月18日に一段落つきます。
第二弾は6月19日以降更新していきます。




