日暮さん ~5~
ちょっと重い女子の日暮さんのお話です・・・
それはバレンタインデーの数日後、私が買い物がてらに
街に繰り出して、ショップで物色している時のことである。
「あ!?」
遠くからでもわかるシルエットが通りを歩いていて、すぐに気づいた!
身長が185センチあると言っていたのもうなずけて、
街を歩いている人だかりの中でも頭一つ抜け出ている感じである。
「ひ・・・。」
そのシルエットの主である柊君に声をかけようとして、
その隣にいる女性を見つけて、私は声をかけるのを止めた。
・・・あの人が・・・
・・・あの女が・・・
噂には聞いていた。
美人な彼女が柊君にはいると・・・
その彼女が今、一緒に歩いている女子なんだろう。
大学で見たことがない顔であるし、何より・・・
柊君と手をつないで歩いているのだから・・・
その光景を見て、イライラが募るが、
それでも私は自分の敵となる人物を見定めていく。
私が見ても可愛らしい女子だけど・・・
私が彼女に見劣りするとは全く思えない!!
確かに見た目は劣るのは分かるけど、
内面で彼女に劣るとは全然思っていない。
・・・私の方が絶対に柊君のことを好きなのに・・・
二人が手をつないで歩いている光景を苦々しい思いで、見つめる。
今はあの二人は2人だけの世界に入っていて、
私はただ、そとから眺めているという・・・屈辱だ!!
ちょっと私より早く柊君と出会えたからって・・・
私の方が、柊君の傍にいるのに相応しいのに!!
思わず、叫びそうになってしまうのだが、
そんなことは出来ずに、私は走りだしたのであった。
どこまでも走っていく私。
私にたまったエネルギーを消費させないと
思わず叫びそうになってしまう!!
そのエネルギーを消費するために私はどこまでも走ったのであった。
・・・どこまで走ったんだろうか・・・
全く見覚えのない景色が周りにあったのである。
慌てて、携帯の時間を見るのだが、
すでに1時間半が経過していたのである!
私、1時間半も走っていたの!?
その事実に驚愕するのだが、
それよりも現在地が分からずにどうしていいのかがわからなかったのであった。
どうしよう・・・
どうしよう・・・
そんなことを思っているとドンドン辺りが暗くなっていき、
どんどん恐怖に身を駆られてしまうのであった。
そんな不安な気持ちが一杯になった時に、やっと自分の体の不調にも気づく
踵がすれていて、靴擦れを起こしており、血が出ている。
今まで普通に立っていることが出来たのが、
ここまで走ってきたためか、急に足に力が入らなくなってしまうのであった。
その場でへたりこんでしまいそうになりながら、
私は・・・その不安に駆られて柊君に電話を掛けるのであった・・・
何コール目かは分からないが、その電話はつながり、
「もしもし、どうした?」
そこには心配そうな声で電話に出てくれた柊君がいた。
その声を聞いて思わず泣きだしてしまうのであった・・・
どのくらい喋っだのだろうか、
そしてどんなことを喋っただろうか。
気がつけば、柊君が私を迎えに来てくれていて、
「ほれ。」
そういって、背負ってくれたのであった・・・
「・・・恥ずかしい。」
「じゃあ、今度からは靴擦れを起こしてもいいように
絆創膏を常備しておくんだね。」
そう言いながら私を背負って近くの駅へと向かう。
走って数駅分の距離を私は走っていたのであった。
「よくこんな距離を走ったね?」
笑いながらいう柊君に、
「柊君のせいだよ・・・。」
「へ?俺のせい?」
「・・・。」
そう言って、私はもう何も返事をしないのであった。
柊君のせい・・・
柊君が私じゃない女子と一緒に街を歩いていたせい・・・
私を選ばないせい・・・
そして・・・そのことに気づかないせいだ・・・
この後、電車を降りて、また柊君に背負われて私の家まで送ってもらった。
家に着いた時に、
「コッソリとだったら中に入れるけど?お茶ぐらいだそうか?」
「いいよ。日暮さんは女子なんだから、そんな簡単に男を部屋に誘っちゃだめだよ。」
その言葉を聞いて、私は嬉しくなってしまう。
だって、柊君が私を女子扱いしていることが分かったんだから!!
「じゃあね。」
だけど、喜んでいる顔を見せたくないため私は、
すぐに背負向けて、シェアハウスの中へと入って行くのであった。
嫌なこともあったけど、イイこともあった・・・
何よりもあんな女と一緒におらずに私といる時間を選んでくれたことが嬉しい。
今頃、あの女はどれほど辛い思いをしているか・・・
私のだから・・・
柊君は・・・
あなたなんかには絶対に渡さないんだから!!
そう心に決めるのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




