武田さん ~11~
イジメられっ子だった武田さんのお話です!
私の大学生活4年間で柊君に思いを告げることは出来なかった・・・。
私の周りでは、関さんや御船さん、前さんが何度か告白しているのを
聞いてはいるのだけど・・・結局柊君がその誰かと付き合うことはなかったのだ。
本当にみんな、私とは違って、一生懸命に告白をしていた。
そんな彼女達はすごくキラキラと輝いていたように思える。
人を好きになるって、こんなに人がかわるんだなぁ~と思ってしまうほどに。
私も・・・あんな風に告白できればいいのに・・・
そう思っていた時のことであった。
柊君とスーツを着たどこかのサラリーマンの部長風の貫禄がある人が
一緒に構内のカフェでお茶を飲んでいる姿を見かけたのだ。
そこには更に、柊君の入った研究室の教授も一緒にいた。
その光景を見て一抹の不安がよぎったのは言うまでもない。
・・・どうしたんだろうか?
そう思っていると気が気でなくなる。
ただ、私もたまたま研究室の仕事のためにその傍を通っただけで、
その場にとどまることは出来ずにすぐに離れないといけなかった。
用事を終えて、研究室に戻ろうとした時もまだそのカフェには3人が座っており、
談笑をしている姿が見れた・・・。
その日、初めて私は自分から電話を掛けたような気がする。
メッセージやメールは送ったことはある。
だけど、今まで電話を掛けたことはなかったのだ。
数回コールが鳴ると、
「はい。こんばんは。」
柊君の声が聞こえて来たのであった。
「こんばんは。」
「どうしたの?」
「あ、いや・・・。今って電話大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
そう言ってくれるのだが、なぜか声がこもっているような声になっていた・・・。
これって・・・
「もしかしてまだ学校?」
「そうだよ。まだ研究室にいるよ。」
「え!?じゃあ、電話切るよ!」」
「大丈夫、もう誰もいないし。どうしたの?」
「そうなの・・・。ええっとね・・・。」
そこで思わず言いよどんでしまうのだが、
わざわざ電話を掛けてまで何の用事もないよっていうわけにはいかない!
それにたぶんこのままだと気になって寝れない!!
意を決して言わないと!!っと思うのだが、なかなかその言葉が出てこなかったのだが・・・
「そう言えば、昼間、どこか行ってたの?そっちの研究室メンバーは?」
「え!?あ、うん。実験に使う薬品を取りに行ったりしてたんだ。」
「そうなの?カフェに居た時にチラッと見たんだよ。」
「え!?気づいてたんだ・・・。」
「そりゃぁ~ね。何してるんだろうなぁ~と思ってチラ見したんだ。
こっちは企業のお偉いさんが来てて、ガッツリは見れなかったんだよ。」
「そうなの?どこの人が来てたの?」
「うん?南日本電機って会社の部長が来てたんだよ。」
「そんなんだ!!・・・用事はなんだったの?」
ヨシ!聞けた!!ついに聞けたよ!!
「ああ・・・
南日本電機に来ないかって話をされたんだ。」
「ええ!?あれ!?柊君って就職だったの!?」
思わず驚いてしまう。てっきり進学かと思っていたのに・・・
「一応、就職だったんだけどね。
何か、今日の話だと、一年後にはなるけど、
またここの大学の大学院に通わせてくれるらしい。
南日本電機のお金で。」
「え!?」
そこから今日あったことを柊君が教えてくれたのだが、
教授には進学ではなくて、就職の旨を伝えたところ、
すぐに南日本電機の部長が来たらしくて、
大学院の勉強がしたいというならということで、
入社してくれるならという条件で通わせてくれるらしいとのことであった。
ただ、一度入社はしなくれはいけないらしくて、
一年後に入学するらしいということであった・・・。
「・・・どうするの?」
「うん?いや、入社をしようと思うよ。自分のお金ではなく、
会社のお金で勉強できるのなら万々歳だからね。
それに生活費も普通に給料から出るしさ。」
「そっか・・・。」
返事をしながら私の中では結構な衝撃を受けていた・・・。
あと2年以上一緒に入れると思っていたものが、
ここで急に崩れたのだから当然だけど、
一年間、柊君がいなくなるんだな・・・・
すっと自分の目から涙が落ちていた。
それは全然気づいておらず、何か頬をつたったな~というくらいの感覚だったのだが、
触ってみて初めて気づいたのである!
私泣いてる!?
思わず自分に絶句してしまう!
え?え?どうして?
だけど、原因は分かっている。
柊君がいなくなるからだ。
だけど、一年後にはまた会えるのに?
いや・・・一年会えないって考えただけで、心が泣いたのだろう・・・
頭はクリアであるのに、それに心がついてけてない。
そう一年後に会えるということにホッとしていたと思ったのだが、
心は一年間会えないことにショックを受けて泣いているのだ・・・
このことがあまりに衝撃となって、
柊君と電話で話していたはずなのに
何を話していたのかを全く覚えていないのであった・・・
ああ・・・
私ってそんなに柊君のことを思っていたんだってことに気づかされた瞬間だ・・・
大学4年の時には、告白まで至ることはなかった。
だけど、私は大学院進学の際に、柊君がいた研究室を選んだ。
柊君がいなくなったことで、一枠空いたのは知っているし、
何より・・・そこで柊君が来るのを待ちたいと思ったのだ・・・
意気地がない私だけど、今度はきっとこの思いを伝える。
そして、それは柊君が戻ってくるこの場所で伝えたいと思ったのだ・・・
柊君がいなくなる一年間で自分の気持ちを整理しよう・・・
柊君がいなくなる一年間で自分の気持ちを伝える覚悟をしよう・・・
あなたが好きだと伝えたいから・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




