岩崎さん ~7~
ザ・関西人の岩崎さんの話です!
それは、柊君がコンビニに来てから一カ月が経過したころである。
約束通り、柊君は火曜と木曜にコンビニに廃棄を取りに来る代わりに
私を家まで送ってくれるようになっていた。
その日も私がバイトが終わるまで店内のイートインスペースで待っている柊君。
「うわ!?真面目か!?」
私がイートインスペースに行くと、柊君はそこで勉強をしていたのであった!
「まあ、一応、大学生ですからね。」
「そうだろうけど・・・。
普通の大学生なんてそんなに勉強せずに、恋に遊びにバイトに励むんじゃない?」
「まあ、これでも一応は楽しんでるんで良いんですよ。」
「ほんま?全然固い気がするねんけどな~。」
「そりゃ~岩崎さんに比べればでしょう?」
「こんなに砕けてるのは柊君の前だけやで?
他の人の前では全然やねんな~・・・。」
そうこんな風に話すのは柊君の前だけである!
それでもこの影響は徐々に私の学生生活の方にも影響が出始めていた。
影響というか・・・地が時々出てしまうようになっていたのである。
ただ、それを好意的に受け止めれくれる人もいれば・・・
もちろん悪い方向に受け取ってしまう人もいた・・・
その後、しばらくしてから、コンビニのバイトを終えて、
服を着替えてから、イートインスペースにいる柊君の元へと向かう。
「おわったでぇ~。」
「それじゃあ、帰りますか。」
そういって、今まで広げていた勉強道具を片付けて、
私と一緒に家路へと着くのであった。
「それでなぁ~藤本君にな、女子高生を今度紹介せなあかんねん!」
「無理でしょう~あいつには~。」
「せやろ~、けど、本人の希望もあるし、こちらの一存だけで決めるのもな~。
それに藤本君、紹介してくれないと土下座を止めてくれへんしさぁ~。」
「はぁ~!?あいつ土下座したんですか!?」
「せやねん!事務所で土下座をしたねん!
いやぁ~みんなからの視線が痛い痛い!
うちが望んでやってもらったわけやないんねんで!!」
「あいつなら必死にやりそうですね・・・。」
「そう!それなのに、私にみんなからの視線がきてさぁ~・・・。
すぐに同意するしかなかってん!
だから、きっと柊君にも迷惑をかけることになると思うねんなぁ~。」
「何で俺がそこで出てくるんですかね?」
「ええ~、だって・・・。」
そんな会話をしている時だった。
柊君がいきなり険しい顔になったかと思うと、
急に私の前に立ちふさがって、
「な、なに!?」
驚く私に、
「静かにしてください。」
そう言うのだが、視線は前方から一切話すことはなかったのだ。
「ど、どうしたん?」
その険しい顔と今までの優しい気配が一切消えて、
あきらかに前方を警戒している柊君に畏怖を感じてしまう。
私は柊君の後ろから前方へと視線を向けるとその先には一つの影が見えた。
その影はその場にとどまっており、
更には手には何かを持っているように見えるのであった。
今だに現状が分かっていないため
私はただ前方の暗闇にある影をジッと見つめている。
するとその影が、ゆっくりとではあるがこちらに動き出したのであった。
その影の動きに合わせたように柊君は、
手に持っていたお弁当の入った袋を地面において、
ゆっくりと見たことがないような構えをとって、
「絶対に俺の傍から離れないでくださいね。」
「あ、うん・・・。」
その力強い言葉に考える間もなく返事をする。
何が・・・起きてるんだろうか・・・
前方の影はやはりゆっくりとではあるが、こちらに近づいてきている。
それは本当にゆっくりで、左右に影が揺れながらこちらに近づいてくる。
「ちぃ!やっぱり気のせいじゃないか。」
「え?」
一段と険しくなる柊君。
そしてその影が10メートル程の距離まで近づいてきて、私は気づいたのだ!
いや、たぶん柊君はもう少し早く気づいていたのだろう!
その影は・・・
手に刃モノを持っていることに!!
その影がこちらに向かてくる途中の外灯の灯りできらりと光った時は
何かと思ったのだが、ここまでくると外灯の灯りで識別できる!
それは間違いなく刃物であった!!!
「ひ、柊君!」
「大丈夫ですから。絶対に俺の傍を離れないでくださいね。」
「に、逃げないと!!」
「その恰好で逃げるのは厳しいでしょうに。」
そう言われて私は自分の格好を思い出したのだ。
普段はジーンズとスニーカーといういで立ちでバイト先に行っていた。
そのままコンビの制服を上から着ればOKにしていたのだ。
だけど、ここしばらくは夜に柊君が迎えに来てくれるということで、
ジーンズにスニーカーという服はコンビのバイトの時だけで、
行きと帰りは別に余所行きの服に着替えるようにしていた!
今日もミュールとタイトスカートという組み合わせである。
確かに柊君の指摘通り、その状態で走れるわけがないのだ!!
だから、柊君は逃げなかったんだ!?
「岩崎さん、電話してもらえますか?
あれは刃物ですから、警察に不審者がうろついているって通報を・・・。」
「う、うん!!」
私はすぐに自分のスマホを取り出して
警察へと電話を掛けようとするのだが・・・・
「岩崎さん・・・・」
私達に近づいてきたその影が、私達にそんな声をかけてきたため
私の電話を掛けようとしていた指が止まる。
そして声をかけてきた影の方へと視線を向けるのであった。
今だに顔の方は陰で見えないのだが、
その輪郭には見覚えがあった!!
更に、私達にかけてきた声に聞き覚えがあったののだ!
少しずつ近づいてくる影が、一番近い外灯の下に来た時に私は確信を持つ!
その影が・・・
「ポスドク・・・。」
そう自分の研究室のポスドクであることに・・・
更には、その手には包丁が握りしめられていることにも・・・
「岩崎さん・・・。」
そう呼びかけられた声は、ひどく冷たい声であった・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです




