坂井さん ~17~
2人の自転車・・・青春ですね~
「・・・肉まんが潰れちゃいますよ。」
柊君の言葉にハッとして、
「ご、ごめん。」
慌てて、柊君から手を外して肉まんを頬張る。
「・・・あ、美味しい。」
「でしょう!」
柊君から受け取った肉まんは、おおぶりだけど
味もしっかりしており、何よりこの寒空の下では温かいモノは格段に美味しい。
ちょっとドヤ顔の柊君を見て、思わず笑ってしまうのであった。
「・・・何で笑われるんですかね?」
今は2人は歩いている。
柊君はチャリを押しながら、肉まんを頬張る。
私はその横を歩きながら、肉まんを頬張っていた。
「いや、初めて柊君のドヤ顔を見たからね。」
「・・・そんな笑われる顔をしてました?」
「いやいや、新鮮だっただけだよー。」
お互い笑いながら歩いて進んでいるのだが、
もう少しで私の家に到着する距離になっていた。
・・・あとちょっと・・・
「何か、柊君に送ってもらうと彼女さんに悪いね。」
「ああ・・・。」
柊君が言い難そうにしており、私は反射的に失敗した!?と思い、
「あ、いや、そんな意味があって言った言葉じゃなくてね・・・・。」
「いやいや、こちらのことで・・・先日別れたんですよ。」
「へぇ!?」
「・・・そんなに驚かなくてもいいんじゃないんですかね?」
「い、いや、予想していなかった回答だったから・・・。」
「まあ・・・そうですね。」
「どうして分かれたの?なんか悪いことした?」
「・・・・俺が何か悪いことをするが前提のように聞こえますけど?」
「え?だって・・・ねぇ。いや、柊君って・・・ね。」
「ちょっと、坂井先輩の心の中で俺がどう思われてるかを確認したいんですけど・・・。」
ジト目で見てくる柊君に、
「いや、素直というか、優しいというか・・・。」
「何でそんな慌てて、取ってつけたようなセリフなんでしょうか?」
「そ、そんなにグイグイ来ると困っちゃうな~。」
「・・・困るようなことを考えてるからでしょう?
まったく・・・こんな真面目な生徒を何だと思ってるんでしょうかね?」
「・・・真面目?・・・では・・・ないかな・・・。」
「・・・・人の恋心をえぐってきて、更に俺の性格までえぐってくる何って
・・ひどいです・・・坂井先輩・・・。」
そう言いながら、下を向くので慌てて私は、柊君を励ます。
「そんことないよ!
柊君は真面目だし、しっかり者だし、みんなからいっぱい好かれてるよ!
ほら、うちらの代も柊君のファンクラブがあるの知ってるでしょう?」
「・・・知らない・・・。」
「体育の時間とか、窓から柊君の名前叫ばれてたじゃん!
あの子達は柊君ファンクラブのメンバーだからね!
ほら!柊君って意外とモテるんだよ!!」
「・・・意外と・・・。」
「あ、いや、ご、ごめん。今のは言葉の間違いで。
ものすごーくモテるよ!
ほら、東屋さんって、柊君と同じクラスだよね?
あの子も柊君はクラスでも人気者って言ってたよ?」
「え?けど、東屋さんは僕のファンクラブじゃないでしょう?」
「そ、そうだね・・・。
東原君のファンだよね。っていうか、恋人同士じゃなかったかな?」
「そうですよ・・・。友達の彼女からいい人って言われても
全然嬉しくないです。だって、彼氏の友達を悪く言うわけないでしょう?」
「う!?・・・そ、そうだけど。
だけど、柊君はほら三年生の人達からも人気あったじゃん!
卒業式で写真撮ったり、ボタンあげたりしてたでしょう?」
「・・・もういないっす・・・。」
「いやいや、だけど、もうすぐ新入生入ってくるしさ!
きっと柊君ならまたファンクラブが出来ると思うよ!」
「・・・東原よりですか?」
「え?・・・。」
思わず言葉を失ってしまう。
柊君も人気があるのは分かるけど、東原君と並ぶとは言えない・・・
「・・・ぷ、あははははは!いいんですよ、そんな必死にフォローしなくても。」
笑いながら顔を上げる柊君。
「あれ?泣いてたんじゃ・・・。」
「泣いてないですよ。ちょっとだけ坂井先輩に意地悪しただけです。」
そう言って舌をだす柊君。
・・・
もしかして・・・
おちょくられてた!?
今度は私がちょっと怒る。
ほっぺを膨らませて柊君を睨むと、
「可愛いですね坂井先輩。」
そう言いながら私のほっぺを突くのであった。
「先輩をおちょくって!!」
「まあ、ここまで送ったのでチャラにしてください。」
「うう・・・汚いぞ・・・。」
ちょっとにらみながら柊君を見つめる。
柊君は笑みを浮かべながら私の睨みをスルーするのであった。
「・・・私の家ここだから。」
私の家のあるマンションの前までたどり着いていた。
「じゃあ、気をつけて帰ってくださいね。」
「私の家はそこだから・・・
むしろここから柊君の家の方が遠いいでしょう?
遠回りさせちゃったし・・・。」
「全然大丈夫ですよ。ほら、早く家に行ってください。
一応、心配だからここで見てますんで。」
「ええ!?いいよ。建物の中は安全・・・でもないか。」
私は思わず苦笑する。
そういえば、先日市内の別のマンションで住民が撃たれたというニュースが流れてたな。
「でしょう。だから、ここにいますよ。」
「・・・わかった。じゃあね、お休み。」
「おやすみなさい。」
そう言いながら2人で手を振りあって、
私は建物の中へと入って行くのであった。
5階にたどり着いて、通路から覗くと入り口付近には
確かに柊君がこちらを見ていてくれたのであった。
声を出すと近所迷惑のため手だけを振ると、柊君も手を振り返してくれたのであった。
私はそのまま家へと帰っていく。
その後、部屋から外を見ると、
柊君が自分の家へと帰っていく後姿が遠くに見えたのであった。
柊君って彼女と別れたんだ・・・・
お風呂に入ったの後で、柊君にお礼のメッセージを送る。
“今日は送ってくれてありがとう。また自転車の後ろに乗せてね。”
今までだったら、彼女がいたため言えないセリフを付けておくる。
するとすぐに、
“今度は・・・
坂井先輩が漕いでくださいね”
一生懸命自転車をこぐスタンプと共に送られてきたので思わずふいてしまう。
“私は箱入り娘なので。”
と返しすと
“ガーン!!”
といったスタンプが送られてきたのであった。
それと続けて、
“じゃあ、頑張ります!”
そんなやり取りをするのであった。
ハニカミながら・・・・。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




