大野さん ~2~
大野さんの話は次話で最終です。
2年生に上がる頃には私と柳川君がみんなの公認となっているのだけど、
私は全面的に否定していた。
「付き合ってなんかないよ~。」
友達から聞かれるたびに、ハッキリと答えていたのだが、
「ええ、けど、彼からは「何かそんな風になってるね~」って否定もしないし、
「内緒だよ。」って言われたよ。」
・・・どうやら原因は彼にあるようだ。
深いため息が漏れてしまい、みんなから心配される。
「大丈夫?大野ちゃん・・・。」
「うん、大丈夫だから。」
私は覚悟を決めてそのまま柳川君がいるクラスへといった。
決着をつけなくちゃ、これは終わらない・・・。
「ちょっといい?」
柳川君の教室に入って、柳川君に話しかける。
ちょっと澄ました顔をして、笑顔で迎えてくるのだが、
「外に行こうか。」
周りがザワザワしている中で、彼は教室から出ようとするので、
「ううん、ここでいいよ。」
私の言葉に戸惑が、何かまんざらでもない顔を浮かべる柳川君。
私と柳川君の光景を見ているクラスメイト達の雰囲気が一気に高まっていくのがわかる。
それに・・・
何でこの柳川君はちょっと照れてるんだか?
私の頭の中をよぎっているのは、
今後の部活動が気まずくなるよな・・・
部活辞めた方がよくなるかな・・・
そんなことが浮かんでおり憂鬱な気分になっているのだが、
目の前の彼はニヤニヤしていて今か今かと待っている感じがする。
正直に言って、この彼の一番嫌いなところがある。
彼は・・・
女の子から告白をさせる・・・
彼がイケメンであるのを認める。
そして、彼も自分でそのことを認識しており、女子にその気もないのに、
女子をその気にさせて告白させるのだ。
“私の友達もこの悪意にかかって、こっぴどくフラれていた”
フルのはいいけど、その後も一定の距離を保って、その気にさせて
離れるにことができないふわふわとした関係を維持しようとしていた・・・
ハッキリ言って、そんなことをする彼が私の中で許せるわけがないのだ。
注意もしたけど、彼にはまったく響くことはなかった。逆に、
「大丈夫だよ。気持ちは揺るがないから。」
などの良く分からない返答が返ってくるくらいだ。
目の前にいるイケメンのまだかまだかの顔にハッキリと告げる。
「私は君と付き合ってないんだから、ハッキリと否定してくれない?
それに・・・私は君が嫌いだから、今後はこんな噂を流すのはやめてくれないかな?」
彼の顔がいっきに強張っていく。
周りの生徒達も空気が固まっている。
ああ・・・これで平穏な学生生活は送れなくなるな・・・
覚悟を決めて、私は教室から出ていった。
その後は予想通り、陰ではひどい女と言われているらしい。
部活でも気まずい空気が流れるが、せめてもの救いは男女で別々の練習をすることだ。
ただ、専門種目の練習の時は、私も柳川君もハードルを選んでいるため
一緒に練習をしないといけないのが憂鬱だけど・・・。
そんな中で、新一年生の部活動見学が始まったのである。
初々しい感じの一年生達が、陸上部の練習を見学に来ている。
陸上部のみんなが色々と説明している中で、私の目にはある子が目に入ったのだ。
「柊!なに?陸上部に入るの?」
私に声をかけられた瞬間に嫌な顔を浮かべてくる柊。
「・・・その顔は・・・何か不満があるのかな?」
「・・・大野先輩、陸上部なんですね・・・。」
「なぁに?もしかして選ぶのやめようとか思っちゃったの?」
私の顔を見て、引くような顔をする柊を見れば、
を考えているのかが手に取るようにわかる。
ただ・・・せっかくなら、柊が入ってくれたなら、ちょっとは楽しくなりそうだな・・・
さすがは柊も私が何を考えているのか分かっているようで、
すぐに私の意図を察するのだが・・・
「陸上部に入りますから安心してください。」
「・・・え?」
ちょっと予想とは違う返答に戸惑いながらも、
柊の気が変わらないうちに入部届けに署名をさせる。
結局気も変わることなく柊は入ってきて、
更には私と同じハードルを選択してくれた。
・・・何か、思ったよりも拍子抜けだな・・・
柊が入ってくれたことで、陸上部に行くのが、ちょっと楽しくなってきた。
基本練習は男女別だが、専門練習になると男女で隣同士にハードルを設置するから
一緒に練習するし、その時に普通に話すことが出来る。
ただ、色々と問題も起こっていくのだが・・・
入部して、1カ月も経たないうちに、柊が3年生ともめたのだ!
ちょうど練習の合間の時間で休憩時間中に事が起きた。
「お前、一年のくせに生意気なんだよ!!」
休憩場所から少し離れた場所から怒気を含んだ声が聞こえてきたかと思うと
すぐに悲鳴も入り混じった喧騒が聞こえてくる。
そっちの方向を向くと、バスケ部の子達に、落ち着くように促されている柊と
その足元に苦しみながら転がっている陸上部3年生の生徒が3人いたのであった。
この後、先生が入っていって、その場はおさまったのだが、
柊は喧嘩をした罰として、職員室で頭を丸められたらしくて、
次の日に部活に出た時には、
「マルコメじゃん!!」
多いに笑いを誘うことになったのであった。
事件の事の発端は陸上部の先輩がバスケ部の新入生に
ちょっかいを掛けたことが発端となり、
それを仲裁に入ったのだが、柊だったようだ。
一見いいことをしたのだけれども、手を出すのは
良くないということで、柊は坊主にさせられた。
ただ、これは先生の狙いもあったようで、
3年生は3人とも部活参加を3カ月間停止しており、
柊にも同じ罰が及びそうになったのだが、
それを柊は助けたことと暴力については坊主にすることで守ったみたいだ。
「これで大会にも出れるからな!!」
そんなことをいう先生の腹黒さをちょっと感じるのは言うまでもない。
この先生の判断が、柊を県内でも屈指のハードラー(ハードルを専門にする人)にする。
始めた出た試合で、先輩達を押しのけて一位を獲ったのだ!
ただ、これもまた事件を呼び起こすきっかけになるのだが・・・
そして、なんで柊が陸上部に入ったのかも分かるきっかけだ・・・
夏の大会を前に先生から、選手が種目ごとにみんなの前で呼ばれていくのが、
うちの学校の方針なのだが、それはハードルの時に起こった。
各学校からは一種目に2人しか選ばれないのに、
ハードルの選手に3年生の先輩と柊が選ばれたのだ。
更に低学年リレーという2年生と1年生で
組まれるリレーの選手にも選らばれて、2種目に参加する。
その放課後に男子の部室で怒声が飛び交った。
「柊!お前、辞退しろよ!」
「ハードルの2年が2人とも出れてないんないんだぞ!!」
「普通先輩に譲るのが常識だろう!!!」
「ちょっと速いからって、いい気になるなよ!!」
「そうだ!この間の試合でも2年生に勝ちやがって!華を持たせるってことを知ってんのか?」
「1人で2種目出やがって!舐めてんのか!」
女子の部室までは結構な距離があると思うのだが、
女子の部室までしっかりと聞こえていた。
その後も柊に対して、怒声が飛び続ける。
ただ・・・
「お前さあ、大野と楽しそうに話してるけど、どういうつもりなんだ?」
「・・・どういうつもりとは?」
今まで聞こえてこなかった柊の声が聞こえてくる。
たぶん、柊は黙っていたのだろう。口答えすると
されがまた攻撃材料になるから。
「大野はあいつの彼女なのに、なんでお前が話してんだよ!」
「・・・違うでしょう?大野先輩は断ってるはずですよ。」
「ああん?」
「断って、周りから非難浴びてんでしょう。理不尽過ぎじゃないですか、
勝手に盛り上げといて、その意に従わなければ非難するって。」
「・・・何言ってんだお前?」
「あんたらみたいに勝手に周りが囃し立てんじゃねえよ!!
本人の気持ちを確認して発言しろや!!無責任すぎなんだよ!!!」
その頃になって
「何やってんだお前ら!!!」
陸上部の顧問の声が響くのであった。
結局、この時は、特に生徒指導室に呼び出されたりすることはなく、
「俺が柊を選んだんだ。言いたいことがあるのなら、俺にハッキリといえ!!」
先生の怒声で幕がおりたのであった。
気づいた点は修正・追加していきます。
拙い文章で申し訳ないです。
修正
12行目 不快 → 深い




