坂井さん ~16~
肉まん・・・美味しいっすよね~
「こんなところで寝てたら風邪ひきますよ。」
掛けられた声に一応反応するのだが、
あまりの眠気のために覚醒することが出来ずに
また眠りへと陥ってしまう。
そんな状態でいると・・・
パシャ
・・・あれ?今のは・・・
その音を聞いて、ちょっとだけ覚醒する。
ゆっくりと目を開けるのだが、イマイチ現状を認識できてはいなかった。
灯りが目に入ってきて、一部が影になっている・・・
「・・・めっちゃ寝起きが悪いんですね・・・坂井先輩って・・・。」
その声のする方をぼぉーと見てしまう。
男子?
ぼんやりとだけど、目の前にいるのを男子だと認識しながら
周りを見回すと、どうやらここは学校らしいことはわかった。
1階?かな・・・
横にあるトロフィーなどを飾っている棚を見て、
自分が校舎一階の昇降口にあるベンチにいることを認識する。
ああ・・・
そう言えば、あと次のバスが来るのが、
30分も待ち時間があるからって、
バス停で待つよりもここで待っていた方が温かいと思って・・・
ブーブーブー
あ、携帯鳴ってる。
のそのそと画面を見ると天野だ・・・
「・・・もしもし?」
「おはよう、坂井。」
「?おはよう。」
「よく寝てたみたいだね。」
天野の笑い声が聞こえてくるのだが、
「どうして私が寝てたのを知ってるの?」
「今、柊が私に写メ送ってくれたから♪」
「柊君が?」
そして、ここに来て頭が急速に回転するのであった。
思わず前を向くと、笑っている柊君がいた!!
私、寝顔見られた!!
っていうか、起こされたの!?
顔から火が出そうなくらいに顔が赤くなっていくのを自分でも感じるのであった。
慌てて、天野の電話を切って柊君に、
「・・・・見た?」
「何をですか?」
「・・・寝てるところ。」
「バッチリ。」
そう言って、私の寝顔の写メを見せてくれるのであった。
そこには暢気に寝ている私が映しだされていた。
「消してー!!」
柊君の手からスマホを取り上げようとするが、
ひょいとかわされてしまう。
「というか、バスは大丈夫なんですか?」
「バス?」
そう言われて、ハッとする。
そういえば私はバスを待っていたのだ!!!
慌ててスマホを見るのだが・・・
「あと一分でバス停にバスが来る・・・。」
「・・・ご愁傷さまです。」
全力走ってもバス停まで5分は、かかる道のりであるため
柊君も絶対に間に合わないっていうことが分かっているのだろう。
「はぁ~・・・これでまた30分待ちか~。」
思わずため息が漏れてしまうと、
柊君から一つの提案があった!
「じゃあ、俺の後ろに乗って帰ります?」
「ふぇ?」
「今日、俺チャリですから。二人乗りで帰れますよ。」
「えぇ!?」
「じゃあ、帰りましょうか。」
そう言って、柊君は私のカバンを持ってくれて
自転車置き場へと2人で向かうのであった。
「わるいよ~。」
「じゃあ、30分ほど待ちます?
けど、その後の乗り継ぎがこの時間だとうまく行かないでしょう?」
「うぅ・・・」
「バスで30分乗って、そのあとバス停で30分待つのは
3月とはいえ、今日は寒いし、大変ですよー。」
確かに柊君の言う通りなのだが・・・
すでに遅い時間帯になっているため、バスが極端に少なくなっており、
乗り継ぎがうまく行かないのである。
「ほら、覚悟を決めて乗ってください。」
そう言いながら、2人乗りできるように足場用の棒を取り付けてくれる。
「重いよ・・・。」
「まあ、箸よりは重いでしょうけど、箱入り息子じゃないんで大丈夫です。」
そう言って、早く乗るように促してくるので、
私は覚悟を決めて恐る恐る乗る。
「じゃあ、帰りましょう。」
そう言って、自転車をこぎ始めたのであった。
最初はゆっくりと進んでいたのだが、途中から慣れて来たのであろう
いっきに加速していくのであった。
「はやいねぇ~!!」
「そうでしょう?バスみたいに止まったりしないですからね。」
バスだと30分くらいかかってしまう乗り換え場所まで15分ほどで到着するのだ。
そして、いつもだったらここから迂回して、私の家まで帰るバスに対して、
自転車だと真っ直ぐ進めるためさらに15分ほどで私の家の近くまで行くのであった。
「・・・早すぎじゃない?」
私のいつもの通学時間は1時間。
夜遅くだと1時間半かかる道のりだ。
それに対して、自転車だと30分で到着したのである!
「早いに越したことはないでしょう?」
「そうだけどさ・・・。」
そう言いながら、私の家の近所で急に、
「ちょっと寄り道しますよ。」
「え?」
そう言いながら、一本違う道へと進んでいく柊君。
するとそこには一軒の中華屋さんがあり、
「ここの中華まんってテイクアウトできるんですよ~。」
・・・何で地元の私が知らない情報を柊君が知っているんだろうか?
そんなことを思っていると、中華屋さんの前にチャリを止めて、
お店の中へと入ってきて、二つの肉まんを買ってきてくれたのであった。
「寒かったでしょう。」
そう言いながら私に渡してくれるのだが、
私は、柊君から借りた手袋とマフラーを付けていたため寒くはなかった。
むしろ、今私に渡してくれる時に触れた柊君の手の方が
ずいぶん冷たかったのである。
「柊君、手、めっちゃ冷たいじゃん!」
そう言いながら、思わずギュッと私が手を握る。
とっさの行動であったためか、柊君もちょっと呆然としてしまうのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




