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〈プロローグ
彼は《大賢者》であった。
彼は世界を大きく拓いた。
彼が生まれたのは此処とは異なる世界であった。
彼は《勇者》や、その仲間である《聖騎士》、《聖女》と共に、英傑召喚によってこの世界に呼び寄せられた。
彼は《賢者》として、まだ《英雄》であった《勇者》の側に立ち、時には剣に手にとって、共に万難を乗り越え、魔皇を討ち取った。
魔皇討伐こそが召喚された自分の使命である。魔皇討伐こそがより良い世界に変えるのだと信じて。
これは幾度となく繰り返されて来た、これからも永遠に繰り返される、敗者と勝者の物語の一つ。
しかし、その中でも特に珍しい結末に辿り着いた。いや、たどり着かせた一人の人間の物語だ。