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ギフトボックス  作者: つまらなくて御免
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五香君との出会い~

目覚めると自宅の天井という事はなく、殺風景な部屋を見回して嘆息する。

部屋に居ても仕方が無いので、市街地へ出ることにした。


市街地ではオンラインの有志メンバーが集い、ボス攻略を目的とするチーム(breaking dawnと言うらしい。ちなみに略名はBD)も組まれていた。

まだ例のログアウト機能喪失の日から三日と経ってはいないが、

こういう集団が出来るあたり、まだ希望はあるのかもしれない。


なにも、俺がボスを100体討伐しなければならないわけではないから、

こうしたメンバーが活躍し、ゲームのクリアをしてくれれば俺としてはバンバンザイである。


とは、言ってもこのまま無為に過ごすには暇すぎるので、自己鍛錬はしようと決意した。

その日は市街地から出てゴブリンを数十匹を屠った。


ゲーム内での死が怖いので無茶をする気は甚だ無かったが、

カレーライスを食べれば一撃で屠れるのが分かっている俺は、

勇み足でゴブリンを屠っていった。


ちなみに今日分かったことだが、バフ効果は空腹になるまで続くらしい。

結構有能な【異能】であると改めて認識した。


夜は自宅に戻ってステータスの確認を行った。

Lvは10になっていて、

ステータスは平均的に10上がっていた。

レベルアップの能力値の上昇が平均1であるのは分かりやすい反面、

これからを思うと途方のなさを感じた。


ちなみに【異能】のレベルも上がっていた。

食料召還Lv2になって、召還できる食材が二種類増えた。

ステーキ:攻撃力、防御力が50上がる。

馬刺し :素早さが50上がる。


翌日以降、3日連続でステータスの上昇効率からステーキを立て続けに食べていたが、

味に飽きてカレーとからあげ定食も織り交ぜるようにした。

馬刺しは元より好きではなかったので食べていない。


【ギフトボックス】に幽閉されて一週間が過ぎた頃、

俺のレベルはそろそろ20になるだろうところまで来ていた。


幽閉二日目でレベル10に到達していた俺は、

4日目で20になると思い込んでいたがそう簡単ではなかった。

レベルアップの速度が落ちている。


無論、討伐する敵もゴブリンばかりではなく、

異様に素早い狂犬なる「スピードドッグ」や、

異様に硬い飛ばない鳥「マザーバード」など倒していたのだが。


まあ、死ぬわけ無いくらいの倒せる敵をチョイスしてる時点で、

経験値という点で言えば、少ないんだろうなと思ってはいたので、

仕方なしと割り切った。


ちなみにBDのメンバーはというと、まだボスを一匹も討伐していないらしかった。

皆が、死亡時のデメリットを知ってるがゆえに、レベルを大きく上げてからの挑戦とのことだった。

聞くところによるとチームリーダのレベルは既に35に到達していて、【異能】もそれなりに強いらしい。

Lv持ちでは無いようだが、【天衣無縫】という異能名ということは聞き出せた。

言葉の意味を知っている人なら分かると思うが、自然体で美しいものを指す言葉だ。

強そうな要素はあまり無いが、聞く話によると人間のリミッターを解除することが出来るらしく、

3倍~5倍まで能力を引き上げるそうな。


ただし、無茶すると動けなくなるらしい。

まぁ、人間のリミッターというのは、許容できない負担を受けないようにあるので当然といえば当然か。


ちなみに副リーダの【異能】は【土塊】というらしい。

土塊を降らせることが出来るのと、自身を土塊で覆うことで防御力を上げることが出来るらしい。

土塊まみれの人間なぞ見るに耐えないと思ったが、鎧のように見た目を装飾しているらしく、見た目的にはカッコいいそうな。


俺より遥かに強そうだから、彼らに任せとけばええなと思った。

がんばってくれ。

ちなみにこれは酒場で盗み聞きした内容だ。


ボス討伐に関して言えば俺は微塵も興味が無かったのでBDに任せる気満々だが、

俺の【異能】がレベルアップして食べれる食材が増えるのは俺個人として嬉しいので

敵を屠る日課は継続して続けていこうと思う。


ちなみに、【ギフトボックス】の世界でも通貨を支払えば屋台や飲食店でご飯を食べることは可能である。

俺も異能だけの食べ物では飽きてしまうので度々利用している。


ちなみに通貨は敵が落とすので今のところ困っていることは無い。

しいて言うなら娯楽がないことだ。


端的に言って暇なのだ。

だから敵を倒しているといっても過言ではない。


一週間も経つとこの生活にも慣れてくるもので、そろそろ友人が欲しいなと思う頃でもあった。

最近の夜は酒場で過ごし、誰か声を掛けてくれやしないかと、密かに願っている。


二日通っても声を掛けられないもんだから、その辺で一人で飲んでいた兄ちゃんに話しかけた。


「君はレベルいくつだ?」


相手はいきなり声を掛けられてしばし瞬いていたが、

少し置いて20レベです。と答えてくれた。


兄ちゃんの名前は五香優ごこう すぐると言うらしい。

25歳だそうだ。俺の一つ下だった。


レベルが近かったこともあり、普段倒す敵が同じであったり、普段の生活も似通ったものだったから、

親密感はスグに生まれ、話題に困窮しなかった。


久しぶりに人と会話をして、内心嬉しく思った。

さっそく、明日チームを組んで狩りに行こうという話になった。


二人だから多少強そうなところに行こうと言う事になり、それに合意した。

明日は洞窟に潜り、スモールベアを屠る予定だ。


待ち合わせ時間と、場所を決めその日の酒場を後にした。

帰宅してベットに横になる。


ゲームしたいなぁ・・・。と俺は思っていたのだが、

よくよく考えればここはゲームの中だった。


翌朝、いつもより少し早く目覚めた俺はステーキを食べた。

朝から食べると胃がもたれそうになるが、洞窟に潜る手前バフ効果は入念に掛けておきたかったのだ。

だが馬刺しは食わん。


待ち合わせ場所に着くと、五香君は既にそこにいた。

こいつも楽しみにしていた性質だな、と思った俺は笑いをこらえつつも五香君に挨拶をした。


「おっす、おはよう」

「あ、おはようございます」


たかが一歳年上なだけだが、礼儀を重んじる性格らしく敬語を使ってくれていた。

敬語でなくてもいいと伝えはしたが、本人がこれで良いというのでまぁ良いかと今に至る。


洞窟のあるあたりまで歩くと五香君がそういえば・・・と俺の【異能】について尋ねてきた。

説明をし終えたら、うらやましがったので、君の【異能】は?と尋ねてみた。


ひとしきり説明を聞いてうらやましがる理由が分かった。

彼の【異能】は【自画自賛】というらしい。


自分を褒めることで能力をあげることが出来るのだとか。

それでさっきから仕切りに、俺は強い、最強だ、誰にも負けないなどという言葉を陳列していたのか。

聞いていて恥ずかしかったので、突っ込もうと思っていたが、そういう【異能】なら仕方ない。

気の毒に思うくらいで勘弁してやろう。


そうこうしている内に洞窟の入口に付いた。

別に入口が危険というわけではないが、二人して警戒心を引き上げた。


「いくか」


俺のGOサインを合図に二人で洞窟に踏み入れた。

道中キックラビットという足がやけにでかいウサギの敵が居たり、

ボーンバッドという骨のこうもりが居たりした。


二人組みということもあり難なく倒すことが出来た。

ボーンバッドに関して言えば、五香君がこの骨削れば武器になりそうだの言って、

倒したボーンバットの羽を引きちぎるもんだから若干引いたが、なるほど追いはぎでアイテムを得るのもありかなと思った。


奥に進むとスモールベアと思わしき黒い獣が寝ていた。


スモールというものの、全長は2mくらいはありそうなもんだ。


「寝てるようですけど、どうしますか。寝首を掻きますか?」


なかなか五香君は考えが下衆い気がしないでも無いが、俺はそうだなと返事を返し忍び足でスモールベアの元へ向かった。


五香君が右手に短刀を持ちながら、俺は強い、俺は神だなどと言っているのを傍から見ていると、

真面目にキチガイかと思わずにいられないが、彼は彼で真剣だ。


俺にはそれを茶化す権利なんて無いだろう。


「うりゃ!」


短刀がスモールベアの喉元に突き刺さる。


「浅いな・・・うらっ」


短刀をさらにグリグリと押し当てている。

・・・やだ五香君怖い。


スモールベアは痛覚によって目覚め、首元から流れる血を見て暴れまわる。


「結構深くいったから、その内死ぬと思ういますけど絶命するまでの間、

どうにかしないいけないですね。がんばりましょう、坂上さん」


言葉遣いは優しいのに使う言葉がいちいち怖いので、お、おぅなんて生返事をしてしまったが、

暴れているスモールベアを見て気を引き締めなおした。


あの爪に当たったら大分やばそうだ。


5分度ほど逃げ回り、スモールベアの様子を見ていたが絶命する気配なぞ微塵も無かった。

大振りな攻撃なのでかわすのは、難しくないが、こうもタフだとこちらも攻勢に出るしかない。


俺はスモールベアの攻撃をかがんで回避するとともに懐へ入り込みミゾウチに懇親のパンチを決めた。


「コイツ、かってぇな」


俺の打撃が効いているのか、スモールベアは少しクグもった声を出したが、

俺の予想していた大ダメージとは程遠いようだった。


というか、今更ながら武器を持ってきたほうが良かった。

五香君も、素手なんですか!?と驚いている。

イケると思っていたんだが・・・。と誤魔化して敵と距離をとった。


なおも暴れるスモールベアの攻撃を回避しつつ、倒すための考察をする。

打撃は効かないし、生半可な刺し傷では絶命に至らない。

何か良い手がないだろうかと必死に頭を巡らせる。


五香君はというと、短刀片手に接近戦を挑んでいる。

が、やはり動き回っている相手には深いダメ―ジを与えるに至っていなかった。


「まずいですよぉ、坂上さん。」


そんな会話をしている際、五香君がスモールベアの足と交錯して、五香君が転倒した。


「五香君!」


スモールベアがこのスキを突いて腕を振り上げる。


「くっそがぁ、食材召喚!馬刺し!」


目の前に現れた皿と五キレの馬刺し。

こんな状況で無ければ絶対に食べることはなかったが、

皿にのる五キレの馬刺しを片手でわしづかみし、醤油もつけずに口にほう張り、咀嚼せずに飲み込む。


突如、体の血が彷彿するように滾る。

素早さが元のステータスから考えて三倍に膨れ上がった。

足に力を込め全力で駆けだす。


「間に合え~!!!」


疾風の如く駆けだした走りの勢いに、自慢の拳を乗せスモールベアの顔面に渾身の一撃を入れた。

加速度も加わった拳は今までにない手ごたえと共に、スモールベアの前歯をことごとく粉砕する。


「助かりました、坂上さん。」


いうや否や、スモールベアの首元の傷口に短刀を押し当て深く抉る。

一際大きな血が噴き出すとともに、スモールベアは倒れた。


「いやぁ・・・。焦りました・・・。と言うか、なんだったんです。突然加速しましたよね???」


サラッと殺してサラッと話しかけてきた。


「あぁ、さっき説明してなかったが、馬刺しを飲んだんだ。嫌いだから食う事はないと思って説明を省いていた。」


「馬刺し?」


馬刺しの件について説明をすると、素早さが50上がることに関して驚愕した顔を見せたが、

まぁ、ステーキの効果の方が強いか・・。と渋々納得しているようであった。


ちなみに自画自賛で上がるステータスは、褒め方に左右されるらしく、

心の底から自画自賛できればできるほど、ステータスの上がり幅が上昇するらしかった。


今のところ上がり幅は低いという事なので、まぁ心から自画自賛できている訳ではないだろう。

気の毒ではあるが、人としてまともそうなので安心したのは言うまでもない。


「にしても、レベルが6も上がるとは思いませんでした。」


俺もそれを聞いてステータスを確認する。


名前 :坂上 龍太

攻撃力:35

防御力:35

魔法力:10

魔耐性:26

素早さ:30


【食材召喚Lv3】

飴:魔耐性、防御力が5上げる。

蒟蒻ゼリー :魔耐性、素早さを5上げる。


レベルは25になっていた。

【異能】のレベルも上がり召喚できる食材は増えた。

まぁ、能力を見る限りあまり優秀には思えないので、お菓子が増えた程度で考えることにした。


「俺もレベル上がってた。25になった。」

経験値の効率で考えれば良い物であったが、

極力恐怖を感じる敵とは戦いたくないなと思った。


五香君が例によって死体剥ぎをしている傍ら、

スモールベアが寝床にしていたと思われる場所に、

不思議な形をした首飾りが置いてあった。

それは十字架にさらに一本斜めに刺したような首飾りで、バランスの悪さを感じた。


こうして手に入れるアイテムはバフ効果がある場合や、デバフ効果がある場合があるので、

大体の人は手に入れたらまず、装備はせず武器屋なり防具屋でそのアイテムの効果を確認するのが一般的であるため、俺もそれに習うことにした。


一応レアアイテムだったら五香君に何か言われるかもしれないと声をかけたが、

命を救ってもらったし、首飾りに興味はないので貰ってください。との事だった。

話がはやい奴である。


五香君はスモールベアから大きな爪を剥ぎ取り武器になりそうと喜んでいた。

もはやコイツの所業に文句は言うまい。


市街地に帰った後は祝勝会をしましょうという五香君の誘いに乗って、

居酒屋に行き、酒を数杯吞んだのち帰宅した。


自宅に戻ってから首飾りの事を思い出したが、明日にしようとその日は寝ることにした。


後にその首飾りを巡って起きるトラブルに巻き込まれることをまだ露程も知らずに。














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