準ヒロインかもですが?
あの後、奴隷を含まない村の全員が国のどこかにある牢獄へ閉じ込められたそうだ。ユウキとアミルは深く感謝された。「助けてくれてありがとう」、「何て勇敢な人なんだ」、「これはほんの小さなお礼だ。受け取ってくれ」。
その時に貰ったのは『ジル』、つまり金だ。その村にあるほぼ全ての大金。計五億ジルほど貰った。大きな袋パンパンに入った金をユサユサと、チャリチャリ鳴らしながら二人は次なる村へ移動する。
「ユウキ、大丈夫?」
ユウキの足取りはどうも重い。金の重さだったら特殊能力でどうとでもなる。
「ああ……大丈夫だよ……」
フラフラと右往左往するユウキを心配そうにアミルは見つめる。こんなに小さな子が自分を心配している。だがここで弱音を吐いたら、それこそダメだと何処かで確信してしまった。
「……ユウキ、休んで」
「……大丈夫だって」
「フリフリ」
大きく首を横に振る。
「私はユウキの能力知らない。でも、みんな一緒。能力を使いすぎると、いずれ死んじゃう」
珍しくたくさん喋るアミルに驚きながらも苦しい笑みを浮かべ片手で袋を持ち、もう片方で優しくアミルの頭を撫でる。
「大丈夫だよ……。俺は死んだりしない。それより、速く……行かないと」
そのままユウキは前に倒れ込み、意識を失ってしまう。
「ユウキ! ユウキ!! ユウキ!!! 起きて! 死なないで!」
必死に訴えかけるが声は届かない。目いっぱいに涙を浮かべ一人の少女の声が深い森に響かせる。
その時だった。遠くの方からカサカサと人の歩く音が聞こえてくる。
「……!? だ、誰!」
返答はない。静かな音が少しずつ近づいてくるだけ。
「ユウキだけでも、助けないと……!」
「人を殺し屋みたいに呼ぶの、やめてくれるかしら?」
木々を分けて出てきたのは軽装の女性。赤髪ショートヘアーで優しそうな顔立ちだ。
「安心して。あたしは貴女たちに危害なんて加えるつもりはないから」
片目を瞑り相手を安心させるような話し方。アミルの警戒心が少しずつ溶けているのを読み取りながら、眠ったままのユウキに視線を送る。
「やっと会えましたね……あたしの」
「あたしの?」
「王様ー!!」
シリアスだった顔をあほ面に変えて赤髪はユウキに飛びかかる。
「やめてー!!」
本気の右ストレートが赤髪の頬を抉り取るように殴り飛ばす。何回か回転した赤髪は華麗に体制を戻し殴られた頬をすりすりと慰める。
「もうなんなの? 嫉妬? いいわよね、貴女はいつもそばで」
「いやいや。いつも一緒って言われても……。私、ユウキと今日あったばかりだし……」
何だか申し訳なさそうなアミルは若干キャラ崩壊気味だがそんなのも気にしないで赤髪は言う。
「とりあえず名乗ると、あたしは『ミナミ・シャドー』。この王様は本当はココで旅をする器じゃないの。あ、言っとくけどいい方の意味だからね?」
ミナミと名乗った赤髪は慌てながら手を目の前で振り、自分の言葉を否定する。
「王様は転生者。それだけで普通の人とは明らかに違った権利を取得する。それにこの人は違うの。目の色。左目が変わったりしない?」
そう言えば。とアミルは考え込む。村人から自分を救った時。確に左目の色が変わっていた。
「それが、どうしたの?」
「かなり厄介な人間が、王様にいるの」
その言葉はかなり衝撃的だった。