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六話


 浮遊感に包まれたかと思いきや、地面に尻から着地した守。


「痛たたた……」


『物理耐性がLv.1からLv.2にレベルアップ』


 無機質な声が脳内に響く。

 嫌な予感に狩られた守は、すぐさま自分の体力を確認する。


【体力】180/200


「……これは何のバグだ?」


 守は自分の目を擦ってみるが、半透明のウィンドウが突きつける事実は変わらない。


「嘘だろう、尻餅で体力が削られるとか……俺の物理耐性はゴミ屑以下じゃねーか!?」


 守はその場に崩れ落ちた。


『すまん、マモル。どうやらマモルの耐性は元々低いようで、俺の加護をもってしてもあまり意味がないようだ。まあ、なんだ、逞しく生きよ』


 守の脳内に響く戦神の声。戦神さん、イケボですね。戦神さんの声を聞いてるだけで、腰砕けそうですよ、はい……って、なんで俺の耳元で囁いているの!?

 守は慌てて自分のステータスを開く。


【ユニークスキル】

 ・温泉宿Lv.1

 ・源泉スキルLv.1

 ・サバイバルグッズLv.1

 ・用具入れLv.1

 ・神々からのコメントLv.1→Lv.2

 ・魔力変換

 ・神々のささやきLv.1


……いつの間にかにユニークスキルが増えるんですけど? てか、神々のコメントのレベルがUPしてる。


【神々のささやき】

 神々が直接耳元に囁いてくれる。信者たちにとっては鼻血級のチートスキル! 鼻血を吹きすぎて、貧血にならないように。神々のコメントLv.2で解放される。

『お主が寂しい思いをしていても、これでいつも話しかけることができるのじゃ! byお爺さん』


 心配してくれているお爺さんには申し訳ないが……全然嬉しくない。もっと別のスキルを寄越して欲しかった。


 複雑な思いを抱きつつも、守は周囲を見渡す。

 どうやら、守が転移したのは街外れの森の中らしい。

 守はふと自分の装いを目を向けた。学校帰りで召喚されたせいか、いまだに制服のままである。


「先ずこの姿をどうにかしないとだな……」


 街の中に入り、辺りを観察すること数分。守は周囲の視線がかなり自分に集まっていることに気づいた。

 それもそうだろう。見たこともない装いをした男がその辺をうろちょろしているのだから……。

 守は心の中で「怪しいものではないですよ~」と叫んでおく。


「お兄ちゃん、どこから来たの?」


 怪しいお兄ちゃんに話しかける少年が現れた。皆、守の正体を掴もうと耳を傾ける。


「え、えーと、異世界から来たんだ」


「えっ、お兄ちゃん、勇者様なの!?」


 キラキラと尋ねてくる少年には申し訳ないが、ここは真実を伝えなくてはならない。


「ごめんね、お兄ちゃん、勇者召喚に巻き込まれただけなんだ。体力もこの世界の平均以下だし」


 魔力量は神クラスだけど。


「えーー、つまんないの」


 少年の言葉が鈍器となり、守の精神に襲いかかった。

 子供って素直だから、仕方ないと分かっていても少年の言葉が守の心に突き刺さる。


(と、取り敢えず落ち着くんだ俺。少しでもこの少年から異世界の情報を聞き出さねば)


「この世界について少し教えてくれないかな?」


 守がそう言うと、少年は不思議そうに首を傾げた。


「この世界について? そうだね、この世界は偉大な神様達が治めているんだけど、時々その神様達から加護を受けた者が現れるんだ。で、教会が加護を受けた者達の管理をしているんだよ」


(やっぱりあの人達が治めているのか……この世界、よく崩壊しなかったな。それにしても教会か……なんか嫌だな)


「どうして教会は加護を受けた者達の管理をしているんだい?」


「加護持ちが国のものになってしまうと、それを利用する奴らが現れるからだよ。だから、教会が管理するの。そして、監視するんだって!」


(……俺の場合、ユニークスキルがあれだから、下手したら一生監視下に置かれるんじゃあ……)


『お主のユニークスキルが教会にバレたら、絶対に監禁コースじゃのう』


 お爺さんが突然耳元で囁いてきたため、守の背中に悪寒が走る。


「うわッ!?」


「ん? お兄ちゃんどうしたの?」


「な、なんでもないよ! ちょっと寒気がしただけ!」


(このクソジジイ! 急に俺の耳元で囁くな! ジジィのしゃがれた声を聞いても誰も嬉しくねぇよ!)


『相変わらず、失礼な奴じゃのう。せいぜいバレないように頑張ることじゃ』


 お爺さんはそう言い残して声が聞こえなくなった。


(なんて心臓に悪いスキルなんだよ……せめて美女の声がいい)


「あ、最後にこの世界の通貨についてと近くに衣服屋ないか、教えてくれないかな?」


 守がそう言うと、少年は丁寧に教えてくれた。

 通貨価値は1円=1ゴールドとなっており、商業神がスリを防ぐために『お財布ボックス』というものを一人一人に与えたらしく、それは本人の合意がなければ、お金を受け取ることはできない設定なのだとか。

 少年から一通り説明を受けた守は、脳内で『お財布ボックス』と呟く。すると、半透明なウィンドウが飛び出してくる。


【所持金 25,000,000ゴールド】


「ゴホッ!?」


 自分の所持金に思わず咽せてしまった。


(一文無しよりはマシだけど、多すぎだろう!)


『おっと、そのことについては私が説明しよう』


 商業神の声が耳元で囁かれ、思わず身震いした。


『あちらの世界での守の貯金をそのまま反映させてあげました』


(なんて気がきく神様なんだ! ありがとうございます!)


『いえいえ、守には期待しているので、いわばこれは投資です。是非利子をつけて私に返してくださいね。では!』


(……ちゃっかりとしているな)


 守は商業神に対しての認識を少し改め、少年に教えてもらった衣服屋へと向かった。

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