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五話


 銀髪美丈夫を前に、守はただ唖然としていた。


「ふむ、そなたがマモルか? 私は戦いの神だ。よろしく頼む」


 戦いの神は、中世の騎士が着ているような黄金の甲冑に身を包み、青いマントを靡かせている。これこそが守の求めていた理想の神像である。


「か、かっこいい! 俺は藤堂守です! よろしくお願い致します!」


 お爺さんのときの態度とは打って変わって、守はかしこまりながら、戦いの神が差し出す手を自分のそれを重ねた。


「中々強い魔力を見に秘めているようだ……が、体力が残念であるな」


「……へ? どうしてそれを?」


「私はその者に触れただけで、その者のステータスが手に取るように分かる」


 守の手を握っただけで、守のステータスを把握してしまう戦いの神で驚愕する。


「……いいだろう。マモルに私の加護を与えよう」


 守を前に戦いの神は片膝をつき、守の手の甲にそっと口付けをする。それだけで、守は発狂もんだった。

 いくら、戦いの神がかっこいいとはいえ、これを見て「キャー! 私の騎士様みたい!」などという乙女思考を守は持ち合わせてはいない。

 茹でタコのように真っ赤になる守を無視して、戦いの神は静かに呟く。


『我は戦いを司る神なり。創造神の名の下に、汝に加護を与え、汝の盾となろう』


 もう一度戦いの神が守の甲に口付けをした途端に、守の身を焼けるような痛みが走った。


「ッ!?」


「マモル、すまない。私の加護は身体に馴染むまで強烈な痛みが襲うのだ。だがすぐに終わる」


 何ッ!? 男に自分の手の甲に口付けをされるということでさえ精神的ダメージを受けたというのに、次は物理的ダメージだと! 既に守の精神ライフは(ゼロ)に近い。


「ほうほう、やはり戦いの神の加護は別格じゃのう。守のユニークスキルがすごいことになっておるわい」


 お爺さんが感心したような声を上げる。


(くそ爺ぃ、呑気な、ことを言いやがって……ッ!!)


 身を裂くような痛みに耐えることも、数分。なんとか痛みに堪えた守は、自分の身が何も変わってないことに落胆した。あんな痛みが襲ってくるのだから、てっきり身体が作り変えられ、素手で熊と戦えるほど無敵になっているのとばかり思っていたからだ。


「見ろ。そなたのユニークスキルと加護が増えておるぞ」


 戦いの神に促され、自分のステータスを確認する。


『ステータス』


【名前】フジシマ マモル

【性別】男性

【年齢】17

【職業】温泉宿の主人

【称号】巻き込まれた異世界人 

    温泉をこよなく愛する者

    温泉マニア

【レベル】1

【体力】150/150→200/200

【魔力】500,000/500,000

【スキル】

 ・水魔法Lv.1→全属性Lv.1

 ・物理耐性Lv.1

 ・魔法耐性Lv.1

【ユニークスキル】

 ・温泉宿Lv.1

 ・源泉スキルLv.1

 ・サバイバルグッズLv.1

 ・用具入れLv.1

 ・神々からのコメントLv.1

 ・魔力変換

【加護】

 ・商業神の加護

 ・戦神の加護


【魔力変換】

 体力が底を尽きようとも、魔力が体力に変換される。ただし、その時は身体に激痛を伴う。

『そんな簡単に上手くいってもらっても困るのじゃ、ホホホ。まあ、頑張りなさい。by創造神』


 な、なんだとッ!? 簡単に死ななくなったのは嬉しいけど、“激痛”って何!? 危険なワードがあるんですけど!

 守は何とか心を落ち着かせ、【戦神の加護】をタッチする。


【戦神の加護】

 武術スキルを覚え易くなる。

『私の加護でも少し役に立つだろう。by戦神の神』


 奴に立つってものじゃない! とっても助かります!


「良かったのう。これでお主も安心して異世界に行けるだろう」


 お爺さんが愉快そうな声を上げる。他の神達も生暖かい視線を向けてくる。


「ああ……ちなみに神様でいう“激痛”ってどのくらい?」


 守は恐る恐るお爺さんに尋ねる。


「そうじゃのう……身を裂かれ……いやおそらくかすり傷程度の痛みだろう」


「今言い換えたよね! 身を裂かれ、まで言ったよね!」


「えぇーい! 男が何をビビっているのじゃ! ここは男らしく腹をくくるところじゃろう! さっさと異世界に行くのじゃ~!!」


 お爺さんが叫んだと同時に、守の身体を一瞬光が包み込み、光が収まったときにはそこに守の姿はなかった。


「頑張るのじゃ、マモル」


 そう呟くお爺さんの頬に涙が……流れなかった。

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