表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

二話

 守は一旦これまでの状況を整理することにした。


1.自宅近くの銭湯に向かう。

2.二十メートル先を歩く男女四人を発見。

3.中々抜かせなくて、イライラする。

4.光の触手の登場、四人は光の陣の中に引きずり込まれた。

5.死闘!! 守vs光の触手!!

6.守、敗北

7.気がついたら、ここに。

8.ヨボヨボの爺さんが登場。

9.現在に至る。


……これは世にいう異世界召喚というものではないだろうか?

 そうなると……目の前の今にも死にそうな爺さんは神様という存在だろうか? 


「爺さんって神様?」


 守は爺さんに試しに質問してみた。


「そうじゃ。儂が神様だ」


 爺さんは自信満々にそう言い切る。

……色々とガッカリした。こんなヨボヨボ爺さんが神様とか……この世界、大丈夫か?


「む? お主、信じておらんな?」


 爺さんが不機嫌そうな声で言う。


「え? 俺、心の声が漏れてた!?」


「ふん、儂は神様だと言っただろう。人間の考えていることなど、手に取るように分かるわ」


 やれやれといった風に溜息をつく爺さん。

 このヨボヨボ爺さんにそんな特技があったとは……本当に神様なのかもしれない。てか、そんな力があるなら、若返りとかすればいいのに……。もう少し見た目に気を使った方がいいだろう。どうみても落ちこぼれの神様にしか見えない。

 腐った爺さんよりも、見目麗しい女神様とかの方が良かったな、と思ってしまうのは男として仕方ないことだろう。


「……お主、今儂のことを腐った爺さんと思っただろう!!」


「うわっ!? マジでバレてる!」


「お主の考えていることなど、筒抜けだ! 本当に失礼な奴じゃな……儂の不手際で間違ってお主をこちらの世界に召喚してしまったと思い、申し訳ない気持ちでいっぱいであったというのに……」


 ん? 今この爺さん、かなり重要なことを言った気がする。


「おい、ジジィ。お前、つまりヘマしたってことだよな? どうしてくれるんだよ! 俺、今から至福のときをすごす予定でいたっていうのに! 早く戻しやがれ! 腐っても神様なんだろう!」


 守は仮にも神様を『ジジィ』呼ばわりした。それぐらい頭にきていたのだ。


「腐っても、は余計だ……それで儂は、お主に謝なければならないことがある」


 眉をひそめ、ただならぬ雰囲気を放ち出す爺さん。


「え、嘘……まさか、帰れませんとかじゃないよね?」


 異世界転移系でありがちな『帰れません』の文字が頭をよぎり、守の声が震える。


「帰れないわけではない。ただ、今すぐには帰れないということじゃ」


「はっ?」


「この世界は魔物の侵略に疲弊しきっておってな。困った儂は異世界から勇者を召喚することにしたのだ」


 この爺さんにも止むを得ない事情があったようだ。


「……それでどうして俺が巻き込まれたんだよ?」


「それがのう……この子達が物凄いイケメンを発見したと興奮して、お主をこの世界に引っ張ってきてしまったようなのじゃよ……」


 爺さんはそう言って、足元に目を向ける。そこには、翼の生えた四人の可愛い女の子達が目を潤ませ、こちらを見上げていた。多分この子達があの光の触手の状態だったのだろう……なんか複雑だ。


「ごめんなの、お兄ちゃん、とってもかっこいいからつい手が出てしまったの~、ふぇ~ん」


「「「ごめんなさい~」」」


 守は何も言えなくなった。こんな可愛い子達に、『俺の人生、どうしてくれるんだよ!』なんて、怒鳴れるはずがない。


「すまぬのう……儂とて、異世界にこの子達のドストライクがいるとは予想もしておらなかったわ。それにしても……どうしてそんな地味な格好をしておるのじゃ?」


 爺さんが守の痛いところをついてくる。


「色々と面倒だからだよ」


「そうなのか……」


「で、俺はいつ帰るわけ?」


「お主と一緒に召喚した四人がこの世界で使命を果たすまでじゃ。取り敢えず、彼らが使命を果たすまでの期間、そなたはこの世界を満喫していよ。中々面白い世界なのじゃよ」


「ふーん、温泉とかあったりする?」


 守にとってこの質問はご飯を食べるのと同じくらい大切なことだ。


「温泉か……多分あると思うのう。しかし、あんなの何がいいのじゃ? ただのお湯ではないか?」


「おい、ジジィ。取り敢えず、黙れ」


 温泉を『あんな』呼ばわりをした神様を守は強く睨みつけた。


「ほほ、怖い怖い。それにしてもお主は相当温泉が好きなのじゃな。ほれ、見ろ。そなたの熱意が、ステータスにまで影響を及ぼしておるわ」


 爺さんが愉快そうな声を上げる。


「……は?」


「取り敢えず、『ステータス』と呟いてみよ」


 爺さんの言われた通りにすると、目の前に半透明の画面が出現した。



『ステータス』


【名前】フジシマ マモル

【性別】男性

【年齢】17

【職業】温泉宿の主人

【称号】巻き込まれた異世界人 

    温泉をこよなく愛する者

    温泉マニア

【レベル】1

【体力】100/100

【魔力】500,000/500,000

【スキル】

 ・水魔法Lv.1

【ユニークスキル】

 ・温泉宿Lv.1

 ・源泉スキルLv.1

 ・サバイバルグッズLv.1

 ・用具入れLv.1

 ・神々からのコメントLv.1


 

「……なんだこれ?」

 守は思わずそう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ