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プロローグ

 俺ーー藤嶋(ふじしま) (まもる)は、ど田舎のそこそこ有名な旅館の三男坊で、今単身で都会のエリート高校に通う高校二年生である。

 実家がかなり稼いでくれているおかげで、一人暮らしとは思えないような悠々自適の生活を送っている。

 また、学校には内緒でお小遣い稼ぎ程度にモデルの仕事をやっていたりもした。

 両親が揃いも揃って美形の分類に属し、俺もその恩恵をしっかりと受け継いでいる。

『使えるものは何でも使う』

 それが俺のポリシーだ。

 一方でこの容姿が原因となって、幼い頃からそれはもう酷い目に遭ってきた。

 特に女性関係で……。俺の彼女の座を狙って繰り広げらる女同士のバトルなんて、それはもう見るに耐えないものものだった。

 女の扱いに長けていて自分の容姿を最大限に活かす器用な兄達とは違って、俺は不器用で比較的無口な方であった。

 そのため見知らぬ女に声をかけられようが、それを無視していたのである。

 その結果、自称彼女を名乗る女が続出し、修羅場に発展し、血を血で洗う醜い争いが勃発した。


 人見知りであった俺は、このことが原因となり、一人で行動することが多くなった。

 そんな俺に、何を勘違いしたのか女子生徒達は「守くんってクールだよね」「うんうん、守くんの放つあの雰囲気が素敵!」「いや~ん、痺れる~」と勝手に妄想し、真実とはかけ離れた会話がよく飛び交ったものだ。

 こんなことが続き、俺の中学校生活はかなりハードな内容のものばかりだった。

 そんな地元に嫌気がさした俺は、表向きエリート高校に通いたいという理由で上京することにした。

 もちろん、両親からかなり反対された。が、時間をかけて攻略し、地元の連中が誰一人行けないようなエリート高校を受験することに成功。

 元々頭脳明晰であった俺は、入試をトップの成績で突破し、見事そのエリート高校に入学した。

 その際俺は、二度と同じ轍を踏まないようにネットでダサい伊達眼鏡を購入し、母の友人である美容師に頼んで地味なカツラを作ってもらった。

 なんせ俺の髪は、ロシア系の血をひく母の影響で、日本人特有の黒髪ではなく、淡い金髪だったのだ。

 流石にエリート高校で金髪はまずいだろうと思い、急遽作ってもらった。

 おかげで、俺はクラスの隅っこにいるようなモブ男子生徒へと変貌したのである。

 取り敢えず、平日は真面目な高校生として黒髪とダサい伊達眼鏡で生活し、休日はハーフ系モデルとして活動した。

 実家から毎月送られてくる生活費とモデルのバイト代を足すと、二十代前半のサラリーマンの平均月収を遥かに凌いでしまっている。

 そんな俺に密かな楽しみができた。

 それは、マンション近くの銭湯に朝一で通うことだ。

 その銭湯は朝の5時半に始まり、俺は学校に通うついでにその銭湯に立ち寄っている。

 そこの温泉は種類がとにかく豊富で、いつも逆上(のぼ)せるギリギリまで入ってしまうのが悩みだ。それでも毎日通うが飽きることはない。

 一方で、毎日温泉に通っていたせいか俺の肌は、ゆで卵のようにツルツルピカピカである。美肌コンテストがあったら、楽勝に優勝できる自信まであるほどだ。

 そして今日、学校の中間考査を無事に終えた我が身を労うため、いつもの銭湯に向かっていた俺を悲劇が襲った……。

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