表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍転生 炎系魔法使いの異世界攻略記  作者: 三浦 祐希
第一章 闇然な小国
6/14

第一章5 『地図は人を、惑わせる!』

──小国《ユルコ王国》に建つ ユルコ城・地下


石造りの階段を降りたところにある少し開けた空間。周りの壁にはタイルがはられ、部屋のどこを見ても何かの資料やら、気味の悪い液体やら、生き物の死骸が目に入る。


そんな部屋の中心。青白い光を放つ魔法陣の上で、何やら呪文のようなものを男が唱えている。


「コノ世ノ闇ヲ身ニ纏ワセシコクナル龍ヨ、死シテナオ光放ツ聖騎士ノ魂ヲ糧ニ、今再ビコノ世界ニ舞イ降リタマヘ!」


男が呪文を唱え終わると、辺りの壁にビッシリと魔法陣が浮かび上がる。そして、男のいる魔法陣を中心に壁の魔法陣から黒い霧が渦を巻く。


「ハッハッハッハッハッ!やった、やったぞ!クククッ、これでこの国は...。さあ、現れよ!この世に闇をもたらす″第二の滅龍″よ!ハハハハハ.......グゥ.....ガッ.....ウ、アァァァアァァァアアァァァァァァァ............」


* * * * * * * * * * * * * * * * * *


「‼」


何かに、体を揺すられている。


「!!!」


またも何かに揺すられる。 今度は前よりも強く。


「…」


......ふぁぁぁ〜〜、眠い。あと五分...


「✲」


「ウワッ!冷た!!!」


気づけば、寝転んでいた地面が凍りついていた。


『兄さん...朝、ですよ。』


「...あ、あぁ」


朝か...確か街?に行くんだったっけか?あー、直前になって面倒くさくなるパターンだわ、コレ。ま、可愛い(今の見た目はスライムだが)妹が誘ってくれたんだから行くんだけど。


「あと五年...」


『何をふざけているんですか、冷却しますよ?』


「あぁー違う違う!間違えた、あと五分あと五分!」


『まだ、寝足りないのですか?数千年も寝ていたのに?面白い事を言いますねぇ。あっ!そうだ、いっそのこと永遠に寝てるってのはどうです?兄さん!』


「ひぃ!」


殺気が凄いですよー、夢さーん。モンスターが、モンスターが寄ってくるから止めてー。まぁ、俺も夢もモンスターだけど。...じゃない!


「あーゴメンなさいゴメンなさい、起きる起きる!だから殺気抑えて!」


『フン、最初っからそうしてください。まったく...さあ、行きますよ、兄さん♪』


「...」


一瞬にして機嫌が直った。女の子って怖いわー。ん?二千年以上生きてるから女の子じゃないのか?ま、いいや。


『ほら兄さん、行きますよ♪顔洗って♪』


「顔洗ったらHP減っちゃうんだけど。」


『回復するでしょ!日が沈む前に着きたいんですから!』


「寝起きなんだから、あんま急がせないでくれ。ふぁぁ...あ〜。」


俺は顔を洗い、身だしなみを整える。


あ〜、冷たい水がHPを削ってく〜。痛い、ジワジワと痛い。いや〜、お風呂とか入りたくないね!


──10分後


「うっし、行くか!」


『兄さん...女の子ですかぁ?準備長いな〜。』


男の子ですら怪しいと思うんですが。高校生的に、ドラゴン的に。


「つーか、その格好のまま街に行くのか?メッチャ目立つと思うんだが?」


『このまんまな訳ないじゃないですか。メタモルフォーゼ!』


変身って。そう叫んだ夢の体は水に包まれる。瞬間、身を包んでいた水が弾ける。ソコには、さき程と比べだいぶ小さくなったスライムが。おおよそ、体高10㎝程度。


「Dクエストのスライムは、そんな事しません!」


『デルトラですか?』


「ドラゴンだよ!」


『何そんなに声上げてるんですか?行きますよ。』


ピョンっ、とスライムが肩に乗ってくる。


「ウワッ!一張羅が溶ける!」


『大丈夫ですよ。酸もスキルの一つですから、抑える事が出来ますよ。』


「あ、あぁそうなの?」


...右肩にモチっとした感覚が。オッパイってこんな感じなのかなぁ。解けた保冷剤みたいに冷たいけど。


『兄さん...変な事考えてませんよね♪』


「あ..あい、何も考えておりまぜん。」


皆、異世界でスライムに会ったら逃げようね。


──歩くこと10分


...気まずい


「な、なあ。夢って何Lvなの?」


『レディにLvを聞くだなんて。失礼ですよ。』


年齢を聞くなんて!みたいな言い方すんなよ。ちょっと罪悪感が。


「いいじゃぁ〜ん、減るもんじゃないし。」


『そんな事言うなら、兄さんの方から教えてください。』


嫌だなぁー。ネトゲとかやっててよく思ってたけど、自分よりレベル高い人とパーティー組むと気まずいんだよなー。役に立って無い感が出るからさ。


「れ、レベル...ん?あれ?レベル35になってる。」


『プププ、低いですね兄さん。』


「あ、いや、......ソウダスネェー。ゆ、夢はどうなんだよ!何Lvなんだよ!俺をこんなにも馬鹿に出来るって事は、相当高いんだろうなぁー!あー、楽しみだなぁー!」


(そんなに馬鹿にはしてないと思いますが。)

『器が小さいですよ、兄さん。』


「小さ!?」


『分かりました、教えてあげますよ。私のレベルは...』


ズドォーンッッッッッ!


凄まじい爆音と共に、地面から巨大なクマ?が飛び出した。体高約5m。身体中が黒く、ウサギの様な耳が付いている。白い穴の様な目?。口元?は数本の糸の様な物で縫われている。


「な!?」


『兄さんとの楽しい会話を......邪魔しやがってぇぇぇえぇぇぇぇ!!!........排除します!』


「え?何て?ゴメン、良く聞こえなかったんだけど?!」


『兄さんはココにいて下さい♪アレは私が殺ります。』


右肩から凄い殺気がぁー!怖いっす、夢さん。


『フォルムチェンジ・モードレット!消えろ、″ルーフス・イーラ″!』


俺の肩から飛んだ夢は、黒クマウサギに向かって行く。大きさは変わらないが、さっきよりも赤っぽくなっている。


「...」


流石にコレは、逃げた方が良いんじゃ…ズガァァァッッッンンンッッ!!!


黒クマウサギが、吸い込まれるかのようにスライムに滑りこんで行く。すると、スライムの反対側から爆発と粉々になった黒クマウサギが出る。まるで、シュレッダーの様だ。


『消えろ、低級がぁぁぁ!!!』


「夢ー、キャラ崩壊してね?」


黒クマウサギを粉々にし終えた夢は、元の色に戻り肩に戻ってくる。


『ふぅ、こんなもんですかね?』


こんなもんですかって、跡形もないんですけど?


「何だったんだ、さっきの黒クマウサギ?」


『黒クマ?あぁあ、ウサベアーの事ですか?』


ウサベアーて言うのか。名前付けた奴の、センスを疑うね!


『兄さん、私のレベルですが...』


アレやった後に、まだレベルの話しすんのかよ!強いの分かったからもう良くね?


『371です。今ので1Lv上がっので、Lv372です。どうです?凄いでしょ?!』


「レベルって、100以上まであるんだな。」


『......凄いでしょ?』


「さっきのウサギのレベルって何だったの?」


『凄いですよね?私、凄いですよね?兄さんのレベルの約12倍ですよ?』


グサッ


「い、いやぁー実は、さっきのウサギが弱かっただけなんじゃないの?」


『...ウサベアーのレベルは290ですよ。』


「...」


『凄いですよね、兄さん!』


「いや、でも...」


『兄さん、あの世ってあるんですかね?』


「いやぁーレベル290を一撃って、凄いなぁ!夢は本当強いんだな!」


『♪』


女の子って、本当怖いね!


──それから約2時間


「なぁ、まだ着かないの?こんだけ歩いてんのに、影すら見えないんだけど。」


『兄さんの移動速度が遅いんですよ。』


「夢が速すぎるんだよ!」


これ本当に日暮れまでに着けんのか?


『しょうがありませんねぇ。』


「にんにくも無いけどな...」


『...』


「氷魔法...なんつって、あはは...」


やばい、何かやばい気がする。


『クッ....クフフッ......ククッ...ゥ、ゲホッゲホッ...』


「おい、大丈夫か?」


あまりの怒りで身を震わせている!!!ヤバイ!ふざけ過ぎたか?


『ふぅ、それじゃぁ特別に″テレポート″を使ってあげましょう。かなりMPを使うのであまり使いたくはありませんが、兄さんのためです。仕方ありません。』


あれ?怒って...ない、のか?


『あまり遠くまでは跳べ無いので複数回ジャンプしますが、初めてだと酔ったりするので気を付けてくださいね。』


「は、はい。」


『それでは行きますよ!...転移テレポート!』


身体が浮遊感を覚える。クッ、そう言えば、こんな感覚の中死んだんだったなぁ。痛みも何も感じなかったけど。あー、気分悪い。浮いたかと思ったら今度は、急に身体がおもくなったし。ウエップ.....吐きそう。


『....さん.....に....さん.....』


「ん〜〜。」


『兄さん!』


「は!」


『大丈夫ですか?兄さん。』


「あ、あぁ大丈夫、大丈夫。俺、どのくらい気、失ってた?」


『ホンの数秒ですよ。』


数秒か。何だか何年も寝てた気分だぜ。


『ほら、見てください。あそこに見えるのが、小国《ユルコ王国》の首都、イタモニラです。』


「へ?小国?」


『はい、言ってませんでしたっけ?イタモニラ・ミジャハと言うのはあの国の首都、と言っても小さい国で、あの街しか有りませんけど。』


目的地が国の首都だと言うことにもビックリしたけど、それ以上にコレで小国なのか?


周りには高さ70mくらいの分厚そうな壁が立ち並び、遠くには壁よりも高い、城の様な物が建っている。パッと見大国といった感じだ。


「ほへぇ〜。」


『兄さん、ふ抜けた顔してないで、街に入りますよ。』


「入れんのかよ?」


『....多分』


「多分って、大丈夫なのかぁ?」


『私を信じて下さい。諦めたらそこで冒険終了だよ、兄さん!』


信じろったって、スライムだよ!肩に乗ってるだけの小さなスライムが、どうにか出来るセキュリティなのか?


そのまま壁に向かって歩いていくと、門のような所に鎧を着た二人組が立っている。


「......」


「おい、止まれ。悪いがここを通りたけりゃ、検査を受けてもらうぜ。」


「は、はい。」


「ふむ。特に怪しい物は持っていないな。と言うより、何も持っていないなじゃないか。怪しいな、お前。」


「...」


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!どうすんだよ?!夢!


『♪』


「ひぃっ、な、ななな何だ、このスライムは!」


おおー、この世界だと、スライムはかなり恐れられてるんだなぁ。うんうん、兵士さん、貴方の気持ちよぉーーく分かりますよ。もぉ、ドラゴンより怖いっすもん。


『♪』


「おお!やけに懐いてると思ったら、貴様″ビースト・テイマー″か?そうならそうと早く言ってくれ。死ぬかとおもったぜ!」


そこまでかよ!てか、ビースト・テイマー?そんな職業も有るのかぁ。勉強になった。


「見世物で稼ごうってクチだな!最近飽きられて来てるが、うむ、スライムとは面白い!休みの時、俺も見に行くからな!いつやるんだ?」


いつと言われても...


「あ、あの...ゲリラ的にやるのが好きなので、開催日を教える事は出来ません。」


「む、そうか。ならば仕方ないな。せめて、長い間この街にいて欲しいものだな!ガッハッハッハッハ!」


「あっはははぁ」


「ようこそ、ユルコ王国へ!知ってると思うが、この国は中立地帯だからな。ゆっくりして行くと良い。狙ってくるのはせいぜいモンスターくらいだが、この壁を越えて来る奴なんていないさ!ハッハッハ!」


へぇ〜、中立地帯かぁ。


『さあ兄さん、入りましょう。』


「お、おう。」


へぇ〜〜〜。中に入って二度ビックリ。石作りの床に、石と木を組み合わせて作られた家。その家一件一件に、細かい装飾が施されている。道には街灯が立ち並び、遠くを見れば大きな時計塔?の様な物が建っている。街は人々で賑わい、とても小国とは思えないほど華やかだ。


楽しそうに走り回る子供。鎧を着ている人。正装を着ている人。お魚を咥えた猫を、裸足で追いかける人。様々な人々が目に入る。


「うおぉ、凄いなぁ...これ。」


『そうですか?私はだいぶ見慣れてしまいました。』


「で、これからどうすんですか?夢先生!ここはやっぱり、冒険家ギルドに行ってライセンスを手に入れたりですかね?それとも、まずは寝所ですか?」


『まずは、昨日倒したヤドカリの甲羅を売って、冒険の資金を手に入れましょう。お金が無くては、宿屋にも泊まれませんから。お金はいらないよ、何て、言っちゃダメですよ!』


「ん?甲羅?何処に有んの?」


『スキルを使って体内に。』


スキルって...便利だねぇー


──10分後


『余程良い素材だっのでしょう。かなりまとまったお金が手に入りました。』


「金貨がこんなにも...」


『さあ、次はギルドに行きますよ、兄さん。』


「おっし!」


『まぁ、時間が有るので探検気分で、自力で向かってみてください。』


「お、おう!任せろ!」


とは言ったものの......


──10分後


「アッチだ!」


──30分後


「コッチだ!」


──1時間後


「ソッチだ!」


──2時間後


「アレ?ここさっきも通った気がする。」


『三回目ですよ、兄さん。』


マジか!よぉーし、誰かに聞くか!お、あのたくましい男の人に聞いて見よう。


「あのー、スミマセン!冒険家ギルドって何処ですか?」


「ん?何だあんちゃん、知らねーのか?ま、ここら辺は同じ様な所ばっかだからな。地図描いてやんよ。」


おー、なんと親切な!


「その代わり、芸やる時は教えてくれよ!いやー付いてるなぁ。さっき門番の人が話してるの、偶然聞いちまってな!」


あぁ、ハイハイ


「そ、そうですね。この街でやる事になった時は、そうしますよ。あはは...」


「よろしくな!」


──2分後


「えー、何なに。ここを右に行って...ここは左。この道の二つ目の角を右。」


『兄さん!』


思った以上に入り組んでるな。ん?こんな薄暗い道、通んなきゃダメなのかよ。えぇっとここを....


『あぁ兄さん!』


ドスンッ


「イッテテ」


地図を見るのに夢中になってたせいで、誰かが来ているのに気が付かなかった。あぁあと少し暗いせいもあるかな。


「す、スミマセン。地図を見るのに夢中になってて。大丈夫ですか?」


「大丈夫だ!問題ない!」


何とも可愛らしい女の子の声が耳に入る。


フッ、ついに来たか。異世界のお約束イベント。″街を歩いてたら美少女とぶつかって運命的な出会い!そこから一緒に旅をすることになり、数々の危機を乗り越える内にいつしか二人は恋に落ちる!″てやつですかぁぁぁぁ!!!!


「大丈夫ですか?お嬢さん!キリッ」


ん?そう言えば、前からぶつかったのに後ろから声がしたな?


「先程も言ったが、なんの問題も無い!むしろ、我にぶつかった貴様の方が心配だな!おい、コチラを向け!」


前を見ると、西洋鎧を着た女の子が倒れている。角度的に頭が見えないが、きっととっても可愛らしい顔をしているんだろうなぁ〜。


ふむ、だとすれば先程から俺と話しているのは誰だ?


くるりと後ろを振り向いてみる。


「フンッ、やっとコチラを向いたか!」


「...........」


「ん?何だ?我の顔に何か付いているのか。ならば取ることを許そう!」


「え?ええ!!」


「だからなんだと言うのだ!ぶつかっておいて失礼な奴だ!」


「あ、あああ、あたあた...頭が」


「頭に何か付いているのか?」


「いや...頭が着いてないよ、...........身体に!」


「はぁ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ