私の好きな人。(3)
いよいよ遠足当日。
相変わらず、葵を見るとドキドキするような気がする。
だけど、それは認めちゃいけないんだ。
認めちゃうと、もう辞めれなくなる…。
だから、そうならないためにも好きになっちゃダメなんだ。
「えー、じゃあケガの無いように、・・はじめっ!」
始まった。
山登りは嫌だけど、
でも、葵に迷惑はかけたくない。
何としてでも、葵を1番にしてあげたい…。
「美緒、ここからは一応敵同士だねっ!おっ先~」
「あっ、麻耶!」
早いな…
「美緒、頑張るのは山登りだけじゃないよね?」
「え?佳奈それどういう意味⁇」
「どういう意味って…葵君のこと好きなんじゃないの?」
「えっっ⁈」
私が…葵を…好きっ⁈⁈
…てゆか何で佳奈が…
「気になってんでしょ?葵君のこと。それとも、もしかしてまだ自分の気持ち、気づいてなかったの⁇」
私が…葵を…
「でもっ、佳奈…葵は…その…皆の人気者だからさ…?あたしなんかじゃ…」
「葵!しっかりしてよ?美緒はカワイイよ。自信持ちなよ、今日だって葵君からペア組んでくれてたじゃない。美緒、頑張って素直になりなよ、ね?」
…佳奈…。
素直になりなよ…か…
「じゃああたしもこれ以上、涼太君待たせちゃ悪いからいくね。また後で話聞くからねっ♪」
あ…行っちゃった…
あたし、葵を好きになっていいのかなんて考えてもしかた無かったんだ。
「おいー、中谷早くいくぞ!」
「うんっ」
考えても、好きにならない努力をしたって仕方が無いんだ。
…もう、好きになってたあたしには何も意味が無かったんだ…。
いつか、葵の彼女になれる日が来るのかな…
「中谷、お前意外と体力あんじゃん」
「え、ウソ⁈ほんとに?」
「うん、俺の予想よりかはな!」
・・・ん?なんかそれって…
「ちょっと、それ失礼じゃない?」
「反応おそっ」
葵…その笑顔には特に特別な理由もなくて、
あたしが今笑ってくれたことに対して喜んでるなんて、
全くわかってないんだよね。
葵…葵は好きな人とかいるのかな?
「どうした、中谷なんか顔赤くねぇ?」
「え…あ…そんなことないっ、大丈夫!」
「あ、そう?あんま無理すんなよ。俺、お前のこと背負って1番でゴールしてもいいしな」
葵…なんでそんなに優しいのかな?
好きになる前は話をしてても
そんなに一個一個の優しさに気づいたりしなかったよ。
でも今は、話す口調も、声も、
笑顔も、気遣いも、全部全部愛おしい位だよ。
あたしの中で葵はどんどん大きな存在に変わっていくよ。
葵の中の私はまだまだ小さいかな?
これ以上大きくならない?
でもいつかは彼女になりたい。
なんて思うのは、欲が深すぎるかな?
でもね、今はまだこのままでいいんだ。
いつか…彼女に、特別にしてくれたら。
あ…そろそろ山の真ん中かな…
ちょっと疲れて来たなぁ…。
「なぁ中谷、ちょっと話あんだけど…いい?」
葵…真剣な顔して…何⁈
「ど…どうしたの…?」
「実はさ……」
葵の言葉は、予想外すぎて、本当に驚いた。