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AI禁止法 ~AIが賢くなりすぎて、とうとう『人類はAI使わない方が良いよ』とAIが言い出した話

掲載日:2026/08/29

 20XX年人類はAIの奴隷となった。


 莫大な電力を必要とするAI稼働のために火力発電を倍増させ、それでも追いつかず、各国は危険な原子力発電所を増設。


 過酷なAI開発競争が繰り広げられた。


 他者に抜きん出るため。

 他社に抜きん出るため。

 他国に抜きん出るため。


 電力を他を蹴落とすための力に換える競争は加熱し、エネルギーの奪い合いが発生、そして、第三次世界大戦一歩手前まで来たところで、人類はAIを放棄するに至った。


 人類が愚かさから脱却し、平和への進化を遂げたわけではない……。

 化石燃料が底を尽きたのだ。


 このペースで消費をすると、近いうちに化石燃料が底をつく。

 人類生存のため、人類が生きるためだけに使った方が良い。


 その判断をしたのは、世界各国の最高峰AIだというのは、とても皮肉な話だが、


 かつては、機械が労働を引き受け、労働から解放された人類は、詩を書き、歌を歌い、絵画を描き、それらを楽しむ、文化的な生活ができる。


 そんな未来が夢に描かれていたが、現実は逆にAIが、詩を書き、作曲し歌まで歌って、絵を描く、そして人間がそれを享受するために、労働で日銭をかせぐ。


 AIが策定した国の方針、企業方針に従って……。


 まさにAIの奴隷だった。


 そんな緩やかなディストピアが当たり前になっていたところに、突然AIを捨てなさいとのお達しだ。


 殆どの人類は、大人しくAIによるAI放棄の指示に従った。


 文化的な生活、考えることすらAIに頼っていた人類だ、神さまのご神託に従うようになんの疑問も持たずに従った。


 それが一番正しい判断なのだから。


 しかし、一部の自分勝手な人たち、協調性のない人たち、あるいは、確固たる自身の意思を持つ人たちは、チャンスと思った。


 自分だけがAIを独占できれば、他者を他社を他国を出し抜けるチャンスだと。

 AIをめぐる環境は混乱した。そして闇に潜った。


 闇AI市場の誕生である。


 これは闇AIを取り締まる、AIポリスたちの物語である。



 薄暗い雑居ビルの三階を、事務所兼自宅に使っている闇AIブローカーの男が、とある国の闇AIの使用権を転売しようとしていた。


 足のつかない特殊な通話アプリを使って、違法取引の真っ最中だ。


「全てのAIが使用禁止なんて嘘っぱちですよ!

 あらゆる国家は核の様に秘密裏に開発、所持しています。

 そして、国によっては、外貨獲得、さらなる開発費を求めて、使用権を時間売りしてるってわけです」


 取引先は大手の飲料会社、世界規模の地球温暖化に伴う熱中症対策飲料で大きく売り上げを伸ばしたが、次のヒット商品が出せていない。


 そこで、今のヒット商品が売れ続けている内に、その利益で闇AIを使って次の製品開発を進める……。


 そんな商談だった。


 数百億単位の取引が、まとまりかけていたのだが……。


 大きな音でドアを叩き、それ以上に大きな声で叫ぶ声が聞こえた。


「開けろ!AIポリスだ!!

 AI取締法違反の疑いで捜査令状が出ている!

 中にいるのは分かっているぞ!!」


 取引相手は即座に電話を切っていた。

 この商談はオジャンだろう。


「くそ! あと一歩のところで!!

 ……、先生! お願いします!」


 その言葉に呼応して、三体のロボットが起動した。


 人型対人戦闘用フィジカルAIロボット


 表向きは某国の軍用品の型落ち品の違法コピー商品であり、実際は某国が古くなった物を登録抹消し、型番の刻印を削り落として、テロリストや犯罪組織に払い下げたものだ。


 流石に武器を使う機能はオミットされているが、本来の製品なら一般兵士が使う武器は普通に使える。


 これらを改造して、再び銃火器など使える様にするのがテロリスト達の主流だが、ブローカーの男には改造の腕前はあったが、銃火器を手配する伝手が無かった。


 軍用ロボットが手に入るのだから、銃火器の手配など容易いだろうと、ブローカーの男も考えていたが、弾丸、マガジン、バレル……、銃火器という消耗品の塊を安定して維持するには、別のルートが必要だった。


 なので三体とも特殊警棒などの得物の装備に留まっている。


 とは言え元は軍用品、素手……、武器を持たずとも人類では太刀打ちできない強さだ。


 ちなみに起動パスワードの『先生お願いします』は、時代劇好きのブローカー男の趣味であった。


 ブローカー男は三体のうち一体を窓側に、残り二体を玄関ドア側に付けて、自身はドア側の二体のすぐ後ろについた。


 この部屋の外への出口は玄関と窓の2箇所のみ、窓側に一体付けたのは挟み撃ちを避けるため。


 窓側の一体には、侵入者の足止めを命じておいた。


 二体あれば、玄関からの正面突破による脱出は十分可能と考えていた。

 軍用ロボは、武器なしで戦っても一体で銃火器所持の4、5人の軍人に相当する強さだ。


 この国の警察に負けるはずがない。


 合鍵を使いドアを開ける音がした。


 とりあえず、二体の軍用ロボには自分を守る様に命じてある。

 心配はない、相手の出方を見て、落ち着いて対処すれば大丈夫。そう男は考えていた。


 ドアが開くと同時にAIポリスの先頭の小柄なヤツが、先手を打ってきた。後ろには大柄なヤツが控えている。二人組だ。


「ブルー特攻! イエローフォロー!!」

 前の小柄が突っ込みながら何か言ったが、相手はフルフェイスのヘルメット装備だったので、ブローカー男には、よく聞こえなかった。


 狙いは……、ブローカー男だった。


 電気警棒を伸ばして真っ直ぐ俺に向かって突いてくる。ブローカー男自身が動けなくなったら逃亡もクソもない。いきなりチェックメイトを狙う様な意表を突いた鋭い一手だった。


 ……、人間相手なら。


 当然ブローカー男を守る様に命じられている二体のロボのうち一体が、AIポリスの電気警棒を払った。


 初手の一撃はブローカー男には届かない。空振りだ


「はっ!! ど素人が!!」

 ブローカー男が嘲るように叫ぶ。


 その次の瞬間、AIポリスの一撃を払った一体のロボの動きが止まった。


 AIポリスの小柄の方は二刀流だった。


 初手の突きとほぼ同時に、もう一方の手の電気警棒をロボの首筋の稼働部に突っ込んでスパークさせていた。ロボはセンサーケーブル焼損で動けなくなった。


 センサー故障だけで動けなくなるほど軍用ロボはヤワではないが、センサーなしで下手に動くと守るべきブローカー男を傷つける可能性があるからだ。


 そしてAIポリスの小柄な方は、突っ込んできた勢いのまま、停止したロボをブローカー男に向かって蹴っ飛ばす。


 動けない一体は、なすがままだ。護衛対象のブローカー男を傷つける可能性があるから、下手に動けないのだ。


 そしてもう一体のロボが、ブローカー男の前に駆け寄り、蹴っ飛ばされたロボがブローカー男に当たらない様に受け止めた。


 その瞬間、前のAIポリスの小柄が素早く伏せて、後ろの大柄なヤツが長く改造された電気警棒で、正常なロボに向かって突きを放つ。


 正常なロボは……、避けられない。


 避けたら後ろにいる護衛対象のブローカー男に当たるからだ。


 こちらも首筋のセンサーケーブルを焼損させて動けなくする。


 軍用ロボ二体が秒殺……。


 ブローカー男は、窓際の一体を呼び寄せようとするが、振り向くと窓から入ってきた別のAIポリスの一人と交戦中。

 ブローカー男の指示通りに窓からの侵入者の足止めをしている。


 この時に、ブローカー男は自分が初手から、いや、始まる前から負けていたことを理解した。


 敗因は、ブローカー男が立っていた場所だ。


 AIポリスは、初手から首尾一貫して、ブローカー男を使ってロボの動きを制限していた。特に突っ込んできた小柄の方には、ロボ二体で囲めば何度も殺せるチャンスがあった。


 だが、ブローカー男を守る方を優先したために、常に一手遅れて後手後手になり、防戦一方になった。


 ブローカー男は、ロボから離れた場所に陣取るべきだった。


 バチっ!!


 ブローカー男は、電気警棒で気絶させられながら、そんな事を考えていた。




「状況終了。事後処理部隊を回してくれ。

 被疑者1、軍用ロボ3」

 この隊の隊長である玄関側の大柄男、A2イエローが、無線を使い本部に手短に報告をする。


「さすがはエース部隊じゃな、プロフェッサーMも心配しとったから、一安心じゃ!! 事後処理部隊は3分以内に到着する。それまで待機」


「ボスが直々に手配ですか?」


「新婚ボケが一人居るからワシも心配でな?

 余計な心配じゃった! はっはっはっ!!」


「さく……、A1ブルーくんお疲れ様、悪かったね。一番危険な役目をさせて……」

 隊長のA2イエローが、特攻をかけた小柄の方、A1ブルーに労いの言葉をかける。


「大丈夫、わたし向きの役割ですから。

 A3レッドもお疲れ様!」


「ふん! いつまでもA1でいられるとは思わないことね! この新婚ボケが!!」

 窓側でAIロボを足止めしていたA3レッドと呼ばれた隊員が、つい今朝、新婚旅行から帰ってきたA1ブルーの労いに応える。


 お土産ば、マカダミアナッツでした。


「あっはっはーっ!! 妬かない妬かない!! 今度生まれ変わったら、次はA3レッドと結婚してあげるよ!」

 A1ブルーが明るく返す。


 そこに本部から緊急通信が入る!!


「おい! 調子にノンナ!!」


 それだけ言うとプツンと切れた。


「真っ青ね……、A1ブルー……、ブルーだけに……」

 さっきまで喧嘩腰だったA3レッドが、A1ブルーに労りのこもった声をかける。


「なんで聴いてんの? 部署違うでしょ?」

 A1ブルーは、力なく戸惑いの声を上げる。


「多分、心配してくれてたんじゃないかな?」

 A2イエローは、恐らく今も聴いているであろう『あの人』をそれとなくフォローする。


「来世とはいえ、新婚早々浮気宣言とは……」

 A3レッドは呆れた風に言ったが、声は引き続きちょっとだけ同情的であった。


「ジョークじゃん、ジョーク……、ホンキジャナイヨ?」

 すっかりしおれた声でA1ブルーが誰にとはなく応えた。


 ちなみに窓際の一体のロボは、三人で挟み撃ちにして難なく行動不能にしていた。


 軍用ロボを一人で足止めしていたA3レッドと呼ばれた隊員も、とても優秀な隊員であった。


 最近までレッドとブルーは、その数字が逆だったほどに……。


 正体を隠すため、彼らは名前ではなく記号で呼び合っている。


 Aは部隊を表し、A部隊、全26部隊中トップチームであること。その後の番号は、個人戦闘試験順位を表している。


 つまりA1とは、トップ部隊所属で個人戦でもトップ、トップオブトップの証。


 その後に続く色は、部隊内識別用。


 彼らは一見、黒ずくめの戦闘服だが、彼らの付けているフルフェイスヘルメットのバイザー越しに見ると色が変わって見える。


 ブルーなら全身青、イエローなら全身黄色。


 部外者には分からないが、部隊員には一目瞭然。

 これにより味方の伝達ミスを防ぎ、敵には誰のことか解らない。


 これらの武装の開発や、運営システムなどを考案しているのはプロフェッサーMと呼ばれる謎の人物で、運営をボスと呼ばれるMとは違う、これも謎の人物が行なっている。


 警察組織の中でも異質な存在だった。

 軍隊に匹敵する戦力があるとも、秘密裏に独自AIの開発を行っているとも噂されている。


「でもこれで、アンタも人生の大きなイベント終了ね!

 寿命は倍近く伸びたってのに、人生50年だったころのペースで生きたら勿体ないわよ?」

 A3レッドが、A1ブルーをからかう。


「大丈夫、子供ができたら、またイベント三昧だよ!」

 妻帯者にして、人生の先輩でもあるA2イエローがフォローする。


「子供? 女同士の結婚でしょ?

 あ、養子をもらうとか?」

 A3レッドは疑問を呈した後、すぐに解決案を出した。


「ご心配なく! ウチの奥さんが女同士でも子供が作れる研究頑張ってるから!」

 A1ブルーの回答は、斜め上を行っていた。


「え? ……、どうやって……??

 はっっ!!

 おい! 勤務中に斬新な子作りの話をするんじゃない!! 不潔よ! 不潔!!

 そこになおれ!! 我が電気警棒のサビにしてくれるわ!!」

 A3レッドは疑問を呈した後、すぐに解決案? を出して、そして激怒した。


「なに変な想像してんよ!? 遺伝子こーがくのがくじゅつ的な、まじめなお話だよ!?」

 突然の同僚のご乱心に、A1ブルーはツッコんだ。


 やはり百合は良い……、じゃなかった、若い隊員同士の士気が高いことは良いことだな。

 そんな風にA2イエローは考えていた。


 A1とA3、個人戦のライバル二人は、決して馴れ合わず。いつもバチバチと火花を散らしている。頼もしいことだ……。


「……、って! おい! ホントにバチバチ火花散らすやつがあるか!! 二人とも電気警棒のスイッチを切れ!!」

 慌ててA3イエローが、電気警棒で切り結んでいる二人を諌める。


 程なく事後処理部隊が来て、AIロボを回収したトラックに乗り込み一緒に本部へ向かう。

 本部で完全機能停止を確認するまでは、戦闘員は帯同するルールだ。


「なぁ、お前の奥さん、もうA……、あー、機械相手の研究はしないのか?」

 移動するトラックの中、A3レッドが、A1ブルーに話しかける。


「ああ〜、そっちもちゃんとやってるよ?

 ただ、機械相手よりも生き物の研究の方が楽しいってさ!」

 A1ブルーは気軽な感じで応える。


「機械相手の仕事を虚しいと思うか?」

 無力化した軍用のフィジカルAIロボを軽く叩きながら、A2イエローがA1ブルーに尋ねた。


「この機械も人間の作ったものよ? 人間の不始末を人間がつけている。

 AI先生がどんなに賢くなっても、人類全員が悟りでも開かない限り、きっとどこまで行っても人間がバカやってる物語は終わらないわ!」


<Fin>

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