かくれんぼ
テトとトテはいつもいっしょ。
ふたりはいっしょに生まれたから、手をつなぐ。
テトはいつも明るい子。
突拍子のないことを言って、気まぐれ。
トテはのほほんとしているのんびり屋さん。
ゆっくり話す、マイペース。
ある日テトはトテに言った。
「遠く遠くまで行こう、太陽だって僕たちを見つけられないぐらい遠くへ!」
トテはまあるく頷いた。
「だったら、あったかくしていこう。太陽が届かないところはきっと、ひどく寒いだろうから」
ふたりはおそろいの赤いマフラーをして、白い手ぶくろをつけて、手をつないだ。
そうして、歩く、歩く、歩く。
太陽からにげるように、
町に追いかけられないように。
ついにはこんもり雪のつもった、ながいながい道がふたりの前にあらわれた。
どんどん、どんどん進む。
聞きたくないことばがたくさんあったから、
町ではふたりはよく耳をふさいだ。
ざく、ざく、ざく。
いまはそんなことはしなくて良くて、
ただふたりが雪を踏みしめる音と、
お互いの呼吸が聞こえるだけ。
すこしの寂しさはしあわせ。
ふたりは歩く。
太陽はもう少しで、いなくなる。
暗さは不安なのに、ふたりは安心する。
「太陽はぼくらがいないと、かなしいかな?」
トテはちょっとだけ、期待をこめたように言う。
「どうだろう。いなくなったことにさえ、気がつかないかも」
テトはわらっていうから、トテはすこし寂しくなる。そんなトテをなぐさめるように、テトはつづけた。
「でもそれって、不幸ってことじゃないよ」
ついにまっくらやみがやってきて、太陽はすっかりいなくなってしまった。
月はなにもいわず、かすかにふたりを照らす。
ゆきが、ふっている。
静かに、ハラハラと。
「ねぇ、あそこの雪のじゅうたんって、柔らかそうじゃない?」
トテがゆびをさす。テトはうなずいて、ふたりは顔を見合わせる。
横になってみよう。
ふたりとも思った。
声に出さなくても、お互いが、同じことを思ったことを、なぜだかふたりは知っていた。
ほほえみあうふたりは、これまでずっと、ふたりっきりだった。
そして、ふたりは寝っ転がって空をみあげる。
「きれいだねぇ」
トテはゆっくりと、ぽつり。
見上げた夜空に輝くのはたくさんの星。
決して手に取ることはできない、たくさんの願いたち。
むすうの、きらきら。
テトはなんだか、胸がぎゅうっとして目をとじる。
「しあわせになりたいな」
テトがこの旅ではじめて、悲しげな声でいう。
そうして、トテはなんだか安心したのだ。
トテは、離れていたテトの手を、もういちどやわらかくにぎった。
「ねえ、テト。ぼくら、ずいぶん遠いところまできちゃったね」
「うん」
テトは、かくれんぼがしたかったんだと気がついた。いつだって、ふたりは見つけてほしかった。
かなわない願いは、どうなってしまうんだろう。かがやきは失われて、もうもどることはないんだろうか。
「ぼくたち、きっとしあわせになれるよ」
トテの目はまだ、星をうつしている。
テトとトテはいつもいっしょ。
ふたりは痛みをわけあったから、手をつなぐ。
ふたりは遠く遠くにいる。
太陽が見つけられない真っ暗の中で、
お互いの呼吸の音を聞く。
不幸じゃない子どもたちは、しあわせになりたくてかくれんぼをしている。
そんなふたりを、星々は知っている。
(終わり)




