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妄想ロボ ギジオレ  作者: みつつきつきまる


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「洸平君が変だと言う話だが」


 源治おじさんが言う。俺は頭にヘッドギアをつけられ、皆んなに囲まれていた。なんか尋問されているみたいだ。今は秘密基地の応接室に皆が集まっている。


「外傷は無さそうだが」


「外傷は無いのはわかってるのよ。でも、変なのよ」


 可奈子が言う。


「変って、どんな?」


 晴人が言うと、可奈子はなぜか顔を赤くして黙り込んでしまった。


「精神的なものでしょうか」


 クリオナが呟く。クリオナに精神的な問題が分かるのだろうか。


「せんぱい。私の事分かりますか?」


「桧山さんだよね」


 まん丸な目に笑いかける。ツインテールは似合ってると思う。


「でも変なのよ」


 可奈子が繰り返す。


「変ねぇ・・・確かに妄想力が空っぽになってはいるが、それがどう影響するのかはまだ分かっていないからな」


 源治おじさんがタブレットを眺めながら言う。


「妄想力が空になったら、変な事が考えられなくなるとか?」


「いや、わからない。多かれ少なかれ、誰もが少しは妄想力を持っているはずだからな。ゼロという事は無いはずだ」


「じゃあ、せんぱいはずっと妄想出来ないんですか?」


「まあ、若いんだから一晩寝れば復活するとは思うが・・・何とも言えん」


「妄想力なんていつものでイケるんじゃない?なあ洸平」


「何だ?」


「可奈ちゃんだぞ」


「そうだよ」


 何言ってるんだよ。


「可奈ちゃんで変な事考えてるんだろ?」


「考える訳ないだろ」


 何言ってるんだ晴人は。


「反応は無い?」


「全くない」


 さっきから何してるんだよ。


「やっぱり変でしょ?」


 言う可奈子。そんな可奈子を眺めていた俺は、


「なっ!!」


「おおっ」


 可奈子の胸に触れる。


「何するのよっ!」


 顔を真っ赤にして抗議する可奈子。あれ?怒らせる事だった?


「触ってみたくて。怒らせたらごめん」


 見ていたら触りたくなった。ただそれだけの事。柔らかな感触を確認したかった。


「この場合、俺は席を外していた方がいいのか?」


 バツの悪そうな源治おじさん。


「でも、こんな事平気でする男じゃないぞ」


「そうなんですか?」


「ああ、洸平のエロ指数は激低だからな。中学生レベルであわあわしてるんだ」


「そう言えばいつも可奈子さんにあたふたしてますね」


「だから普通じゃない」


 と言う晴人。俺は普通のはずだけど。


「せんぱい」


 桧山さんが俺の顔を覗き込んできた。


「私のおっぱい触りたいですか?」


「それはストレートな」


「うーん。別にいいかな」


「な、何でですかっ」


「桧山さんの方が大きそうだけど」


「はっきり言うのね」


「可奈子の方を触りたい」


 言うと可奈子が下を向いて黙り込んだ。


「桧山さんのは一回触ったし」


「詳しく聞かせてもらおうか」


 晴人が迫って来る。え?何?変な事言った?


 そんな晴人は呆れたようにため息をついて、


「やっぱり重症だな」


 晴人の結論。


「どうやら、精神衝動を抑える事が出来なくなっているようだな。行動の結果はともかく、興味のある事を素直に実行してしまう精神状況に陥ってしまっているようだ。妄想力が抑止力になっていたもかもな」


 と言う源治おじさんの分析。確かに、自分でも頭で思いついた衝動をそのまま行動に移していると自覚がある。


 晴人が腕を組んで言う。


「これを克服するためには、可奈ちゃんが一晩中抱きしめてもふもふするしかない」


「いいの?」


「いい訳ないでしょ!」


「じゃあ、せめて」


 晴人が俺の方を見た。


「今してみたい事とかあるか?おっぱいは触ったが」


「何聞いてるのよ」


「私でもいいですよ」


「私には何が出来ますか?」


 何だかよくわからないが、皆んなが協力してくれるらしい。でも、今してみたい事か・・・。


「キスしたい」


 その場の空気が止まる。


「可奈子とキスしたい」


 素直な気持ち。


「そういう事だから可奈ちゃん」


「うへへへ、せんぱいと先輩が・・・」


「キスとは、唇を合わせる事ですか?」


「せめて俺がいないところでやってくれるかな」


「する訳ないでしょ!」


 可奈子が声を上げる。真っ赤な顔をして怒っているよう。でもすぐに顔を伏せて、


「そんな事したら、今まで通りじゃいられないじゃない・・・」


 少し悲しげに言った。


「そっか。ごめん」


 俺は誤ったのだが、可奈子はぷいと向こうを向いてしまった。


「なんで二人して今まで通りにいたいって思うかは知らないが」


 晴人が少し呆れたように言う。


「何にせよ、間違いなく洸平は変だな。このままじゃ使い物にならないから、元に戻す努力をしてみようか」




「俺は黒い奴を調べてるから、その辺は皆にまかせるよ」


 源治おじさんはそう言って応接室を出て行った。


「さてさて」


 晴人が俺の正面に座る。


「どうすれば洸平が元に戻るか。意見を聞きたいんだが」


 他の三人に問うように見回す。


「そもそも元に戻るって何だよ。俺は別に普通だけど」


 抗議の声をあげるが、誰も聞き入れてくれなかった。


「妄想力を復活させるって、えっちな事考えさせる事ですか?」


 桧山さんが口を開く。違うと思う。


「それが一番手っ取り早いな」


 だから違うと思う。


「パンツ見たらそんな気持ちになりますか?」


「少なくとも俺はなるよ」


「パンツはただの下着ですよ」


 そう言えば桧山さんのパンツを見たな。白かった。


「でもあんまり効果はなさそうだな。今までだったら、そう言っただけで反応があったからな」


 晴人はタブレットを眺めながら言う。


「そう言えば」


 晴人が思い出したように言う。


「この前学校でギジオレを操縦中に暴走したと言っていたけど」


 言うと可奈子はなぜか顔を向こうに向けて、桧山さんは顔を押さえてにやにやしている。


「その時ってどんな感じだったの?」 


 そう言えばその時晴人はいなかったな。


「あの時はですね」


 にやけながら桧山さんが答える。桧山さんはギジオレに同乗していたんだっけ。


「可奈子先輩はチアガールの格好で」


「それだ」


 晴人がすぐさま反応。


「可奈ちゃん、今すぐチアガールの格好を」


「昨日洗濯したところよ」


「じゃあ、今すぐ取りに行って着替えて来て。ほら、洸平のためだから」


 晴人に言われ、少し不本意そうに可奈子秘密基地を出ると、しばらくしてチアガールの衣装を着て戻って来た。


「わぁ。やっぱり先輩可愛い」


「よく似合ってますよ」


「何か随分やらしいな」


「あんまり見ないで」


 可奈子は手で自分の体を隠す。はっきり言って全然隠れていないが。


 でも、可奈子のチアガール姿はいい。体のラインがはっきり出ているし、腕だったり脚だったり肩だったり脇だったりを露出している。女の子の魅力的な部分が全て出ている。


「可愛いと思うよ。可奈子」


 素直な気持ち。可奈子がまた顔を赤くして俯いた。


「でも反応は無いんだよな」


 晴人はタブレットを見ている。


「いくら何でも少しくらい反応してもいいところだが、全く反応ナシだ。どちらかと言うと俺が反応してしまいそうだ」


「長月先輩いやらしい」


「自覚してるよ」


「しないでよ」


 可奈子が抗議の声をあげる。と、晴人が可奈子の耳元で何かを囁く。


「えー!それはちょっと・・・」


「洸平のためだと思って」


 晴人が両手を合わせて可奈子にお願いすると、口の中で文句を言いながら、渋々と言った様子で俺の後ろまでやって来た。そして、俺に後ろから抱きついた。


 背中に感じる柔らかさと、耳にかかる吐息に俺は身をよじる。


「可奈子、くすぐったい」


「おぉお、せんぱいと先輩がくっついて・・・」


「くそっ。羨ましい。クリオナ、俺にも同じようにしてよ」


「こうですか?」


「そうそう・・・洸平ありがとう」


 満足げな晴人を横目に、俺は可奈子を近くに感じる。心地よくて、ずっとこうしていたい。


 結局俺は元には戻らなかったと皆は思っているまま、時間が解決する事を期待して帰宅する事になった。




「はぁー」


 俺は大きく息を吐いて、ベッドに横になった。今までに無い位疲れた気がする。疲れてはいるのだが、頭の中はクリアですっきりしている。なぜかはよく分からないが。


 俺は天井を眺める。皆が俺を変だと言うが、あまり自覚が無い。いつも通りだとは思うのだが、可奈子すらもそう言うって事は、やはり変なのかもしれない。だがどう変なのかが分からない。


 目を閉じて見る。ああ、可奈子の膝枕は心地よかったな。やっぱり可奈子と一緒だと安心する。子供の頃からこうやって過ごしてきたからかもしれない。可奈子との様々な思い出が蘇る。


 すると、


「洸平、いる?」


 突然部屋の扉が開き、可奈子が顔を出した。


「急に開けるなっていつも言ってるだろう。俺が変な事してたらどうするんだよ」


 天井を眺めながら言う。そうは言っても、可奈子が急に扉を開ける事は常に想定している。


「こんばんわ。せんぱい」


「おじゃまします」


 それぞれパジャマ姿の、桧山さんとクリオナ。


「どうしたの?皆んな揃って」


 俺は体を起こす。


「ちょっと様子を見に来たのよ」


 いつものルームウェア姿の可奈子が言う。相変わらずTシャツは大きめ。


「こうして寝巻き姿で寝込みを襲えば、せんぱいが元に戻るかもって思って」


 ウサギの模様が描かれたレモンイエローのパジャマを着た桧山さん。サイズが少し大きめ。髪を下ろしている。


「妄想力を発揮させるには、女性の力が必要だと晴人さんに伺いまして」


 シンプルな白にワンポイントに水色が入ったパジャマを着たクリオナ。髪の毛や肌の色にマッチして似合っている。


「そんな訳だから感謝しなさい」


 可奈子は言うと、俺の隣に腰掛けた。


「やっぱり可奈子先輩はせんぱいの隣なんですね」


 すると可奈子は急に慌て出す。


「いや、いつもの事だからつい・・・」


 言って、俺から視線を外す。


「とにかく、どうせなら女の子と一緒の方が妄想力が発揮されやすいと思ったから」


「そっか。俺の為にありがとう」


 何か随分俺のために動いてくれているみたいだ。


「じゃあ、お願いしていい?」


 俺が可奈子の目を見て言うと、可奈子の目に緊張が走った。


「聞ける事と聞けない事があるわよ」


 少し身を引いた可奈子。


「もう一回膝枕してほしい」


「・・・そんな事?」


 ほっとしたような顔をする。


「まあ、いいけど・・・」


 そう言われると俺は、可奈子の太ももに頭を乗せる。さっきと違って、素足の太もも。殊更に心地いい。


「おおっ。クリオナ先輩。私も膝枕して下さい!」


「いいですよ」


 桧山さんがクリオナの太ももに頭を乗せてご満悦。そんな桧山さんを見てクリオナはニコニコしている。


 俺は可奈子を見上げる。目の前の膨らみに触れたいが——可奈子が嫌がるのでやめておこう。困ったような可奈子の顔を眺める。


「これがそんなにいいの?」


「うん」


 可奈子の肌が熱い。俺はその心地よさに目を閉じる。深い眠りに連れて行かれそうだ。




 ふと、目を覚ます。


 俺の部屋。電気が消してあって暗いが、窓の外は明るくなりつつあった。


 あれ?俺どうしたんだっけ?


 昨日、バッタロボと試作ロボと戦って——それからどうしたんだっけ?よく覚えてない。


 まあいいか。まだ起きる時間には早いから、もう少し寝ていようかな。と、体を横に向けた時だった。


 すー。


 何か風のようなものが顔にかかる。なんだ?何かが目の前にある。手を伸ばしてみると、柔らかく温かい。何だろうと手で探ってみる。


「んん・・・」


 声がする。すぐ目の前。そのうち目が暗闇に慣れてきて——


 !!


 目の前に可奈子の寝顔があった。唇が触れそうなくらい近い。思わず顔を離す。と同時に、体を触れ合わせている事にも気づき、体を離す。


 なんだよこれ・・・。


 身体中から汗が噴き出る。可奈子を起こさないように体を起こすと、クリオナがこちらを見ていた。クリオナの太ももでは桧山さんが眠っている。


 まるでいかがわしいパーティがあったような様子に、俺は動けなくなる。


 見ると、クリオナが人差し指を唇にあてて静かにするようジェスチャーをする。


 俺はゆっくりベッドから降りる。


 あられもない格好をしている桧山さんを跨いで、扉から出る。落ちつているフリをしているが、心臓が爆発しそうなほど鼓動が早い。


 扉が閉まったと途端、俺は転げ落ちるように階段を下り、リビングのソファに頭から突っ込んでクッションで頭を覆う。


 いい、とにかく寝てしまおう。寝て忘れてしまおう。


 ただ、眠れるかどうかは自信がない。



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