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妄想ロボ ギジオレ  作者: みつつきつきまる


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 再びバッタロボが跳躍した。その全てが自らを囲んでいる試作機ロボ一台に狙いを絞る。


 狙われた一台はマシンガンを放ちながら後ろに下がる。しかし、弾丸を掻い潜ったバッタロボにのしかかられ、後ろに倒れる。そのスキをついて、他のバッタロボも次々に群がって、あっと言うまにバッタロボの山が出来る。。


 他の試作機ロボはマシンガンを発射しながら、バッタロボの山を崩しにかかる。両サイドからマシンガンを連射しているため、試作機ロボそれぞれがそれぞれの弾丸を浴びている。


「素人みたいな戦闘だなぁ」


「洸平はプロみたいな事いうんだな」


「プロではないけど」


 どうも試作機側の連携がうまくいっていないように見える。それぞれが勝手に動いて、勝手に攻撃している感じ。整列する時や、フォーメーションを組む時だけ整然としている。


「そもそも接近戦に銃って」


「この戦闘がアンドロイドと邪念の適合を見るためなら、戦略はさほど関係無いのかもしれません。博士の言っていたように、世間にアピールするためなら違うかもしれませんが」


 クリオナが言う。そう、どのような目的があるにせよ、テレビで世間様にアピールしている以上、あまり無様な様子は見せる訳にはいかないだろう。現状のようなもたもたした様子では何のアピールになるのやら。


「でも、いくらアンドロイドでも実験台にするなんてね」


 可奈子が苦い顔をする。アンドロイドにさらわれたりと被害に遭ってはいるのだが、それとこれとは別らしい。


「今はまだ分かりませんが——アンドロイドたちと地球連合軍との利害が一致したのかもしれません」


「利害?」


「いえ、何でもありません」


 クリオナがそう言う。アンドロイドと地球連合軍の利害とは何だろう。


 そう言っている間に、山になったバッタロボを一台一台引き剥がしていく試作ロボ。やはり邪魔なのか、マシンガンを捨てる機もいる。引き剥がし,拳を打ちつけると、バッタロボの一機は煙を上げた。


「さすがに制圧できるか」


「ちょっと慣れてきたのかしら」 


 ぎこちない動きだが、バッタロボの動きはさほど機敏ではない。一つ一つ片付けて行けば制圧できるだろう。


 その時、俺は一機の試作ロボの動きがおかしい事に気づいた。両手をだらりと下げ、まっすぐ正面を見ている。その視線の先にはバッタロボはなく、別の試作ロボ。


 そのロボがマシンガンを構えた。


「え?」


 俺が思わず声を漏らした。そのロボがマシンガンから発射した弾頭は、別の試作ロボに直撃した。そのダメージは無さそうだが、撃たれたロボは打ったロボの方を見る。そして、同じようにマシンガンを発射した。


 最初に撃ったロボは反撃を受け、それまでと全く違う滑るような動きで前進。マシンガンを向けるロボに飛びつき、腕を掴んだ。そのまま引きちぎる。


 腕を引きちぎられたロボットは反対側の腕で掴んできたロボットの首を掴み返し持ち上げると、投げ飛ばした。投げ飛ばした先には、違う試作ロボ。飛んできた試作ロボを叩き落とし、頭を踏みつける。


「何?何があったの?」


 うって変わって肉弾戦で同志撃ちを始める試作ロボに戸惑う可奈子。俺も戸惑っている。


『やっぱりな』


 源治おじさんの声がする。


『あいつらは邪念に乗っ取られた。正確に言うと、アンドロイドが邪念に乗っ取られたんだ』


「どういう事?」


「記憶領域が邪念で埋め尽くされた、とでも言えるでしょうか。ウイルス感染と同じ意味かもしれません」


 そう言っている間にも同志撃ちの輪は広がっている。全ての試作ロボが試作ロボと戦っている。殴り合っている者もいれば、マシンガンを乱射している者もいる。近くのビルの窓ガラスに当たり、木っ端微塵に砕け散る。


 その間バッタロボは周囲の施設に攻撃し始めていた。街路樹に噛みつく者、建物の屋根に登る者、噴水を破壊する者、等々。


「これじゃ街がめちゃくちゃになるぞ!」


「洸平、行きましょう。止めなきゃ!」


「そうだな」


 言ってギジオレを前進させようとした時、


『クリオナ君は置いていってもらえるか?こっちにいた方が話が聞きやすい』


「わかりました」


「じゃあ、俺も」


 クリオナと晴人をギジオレから下ろすと、ギジオレはビルの影から飛び出した。


 まずは取っ組み合いになっている試作ロボを両手で引き離す。並んでみるとギジオレの半分ほどの大きさしかない。それぞれの標的がギジオレになるが、それぞれの足を破壊して行動不能。


 マシンガンを構えている試作ロボからマシンガンを取り上げ、マシンガンのグリップで後頭部を殴ると、試作ロボはアスファルトにめり込んで動かなくなった。


「調子いいわね」


 可奈子が笑う。可奈子はセーラー服も似合うと思う。ポニーテールも似合っている。


「油断はできないけどね」


 いつの間にか他の試作ロボの標的もギジオレになった模様。突進して来る。数えてみるとあと五機。順番に手で払って行く。


「こっちからも来てるわよ」


 可奈子が右を向く。可奈子が動くたびに香りが漂う。シャンプーでもない石鹸でもない、制汗スプレーかもしれない。


「おう」


 俺は答えて、右から来た試作ロボの頭を掴んで振り回し、別の試作ロボにぶつけると十メートル位吹き飛ばす。


 そうやって試作ロボ全てを行動不能にするのに、さほど時間はかからなかった。


 それと同様に、バッタロボも制圧して行く。バッタロボはもっと時間がかからなかったかもしれない。


「全部終わった?」


 俺は言って周囲を見回す。行動不能になったロボが十数機。 


「動いているのはいなさそうね」


 可奈子は言う。俺も注意深く確認したが、動いているロボは無さそうだった。


『侵略側ロボが十二機、連合軍側ロボが十機。数は間違いないから、おそらく全滅だろう』


『アンドロイドは全て無事なようです。邪念のウイルスから解放されていればいいんですが』


『じゃあ、もう帰れるの?』


『私まだロボットに乗ってません』


 気楽な声も聞こえて来る。まあ、何も無さそうなら帰ってもいいか。もうすぐ夕方だし。


 と、


『洸平さん!後ろです!』


 珍しく切羽詰まったクリオナの声。俺はゆっくりと振り向く——ギジオレのカメラを後方に向けると、


「何だ・・・こいつ」


「黒い・・・ギジオレ?」


 可奈子の言うように、黒いギジオレがいつの間にかギジオレの背後に立っていた。同じように胸に嵌め込まれたコックピットには、誰も乗っていない?


 黒いギジオレは手を伸ばしてギジオレの頭を鷲掴みにした。


 俺は手を掴みに行ったのだが、その瞬間


「あああぁぁぁぁっぁ!」


 頭から何かが吸い出される感覚。動画を逆戻しにしたような不快感。視界がぐるぐる回って、吐き気がする。


『これは・・・妄想力が吸い取られている!』


 源治おじさんの声。だがそんなものは耳に入らない。


「あああ・・ぁぁぁ・・・」


 耳鳴りがする。頭が痛い。気持ち悪い。


「ちょっと洸平!しっかりしなさい!」


 可奈子が俺をゆする。それでなくても視界は揺れ続けているので、あまり感じない。


 黒いギジオレが頭から手を離したのが見えた。


『おい、洸平!どうした!妄想力がなくなってるぞ!』


 晴人の声も聞こえる。妄想力?妄想力って何だけ?


『せんぱい!どうしたんですか!』


 桧山さんの声。何で心配されているんだろう。


『あいつは妄想力を溜めてやがるな・・・洸平君、逃げるんだ!』


 逃げる?どうやって?ああ、ギジオレを操縦するのか。


 しかし手に力が入らない。えーと、どうすればいいんだっけ?


「洸平!逃げるわよ!」


 可奈子の声。そんなに顔を近づけなくてもいいのに。


「ああっ。もう!」


 可奈子がシートベルトを外す音。


「後で文句言わないでよねっ!」


 言うと可奈子は俺の膝の上に座って、操縦桿を握った。ああ、柔らかくていい匂い。


「あとちょっと、妄想力を出して!」


 妄想力って何だっけ?ギジオレはどうにか動いているようだけど、これでいいんだっけ?


 可奈子を後ろから抱きしめるような形で、俺の意識は途切れた。




 うーん。


 ここはどこだろう。なんだか目を開けるのも億劫だなぁ。


 でも何だか心地いい。頭に柔らかいものを感じる。


 目を開ける。目の前に可奈子の顔があった。可奈子の顔を真下から見るなんて初めてかもしれない。でも手前に膨らみがあるから、あまりよく見えないな。


「気づいた?」


 可奈子の声。いつもは怒っているのに、なんだか優しい声。


「うん」


 俺は返事をする。ちょっと子供みたいな返事だったかなと思う。


「あれからずっと眠ってたのよ」


「あれから?」


 何があったっけ。よく覚えてないや。


「だから足がしびれちゃって」


 可奈子が目を細める。どこか恥ずかしそうな顔。


「そうなんだ」


 俺は可奈子の顔を見上げながら言う。可奈子はおそらくここからどいてほしいんだろうな。


「でも気持ちよくて」


「え?」


「可奈子の太ももがやわらかくて気持ちいい」


 可奈子の顔が赤くなった。


「なっ、何言ってるのよ!」


 あれ?変な事言ったかな?


「ずっとこうしていたい」


 言って、スカート越しに頬を太ももに擦り付ける。


「ちょっと・・・」


 可奈子は戸惑っているみたい。でも、怒る事も無理やりどかす事もなく、俺の頭を撫でた。子供みたいに。


「でも皆んなを待たせてるのよ。洸平の意識が戻らないから、待ってたの。意識が戻ったのなら、皆んなに知らせてあげないと。皆んな心配してるし」


 ああ、そうか。心配されてるんだ。


「ごめんね可奈子」


「え?」


「わがまま言ってごめん」


「どうしたの?」


 可奈子が顔を曇らせる。あれ?可奈子が悲しんでる。可奈子を悲しませないって決めたのに。


「洸平・・・やっぱり変だわ。パパに調べてもらわないと」


 俺は可奈子の太ももを名残惜しく思いながら体を起こした。


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