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妄想ロボ ギジオレ  作者: みつつきつきまる


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 トー・レ・ヴィオの脅威が無くなって数日。地球連合軍と源治おじさんの間ではいろいろあったようだが、俺たちは日常に戻っていた。


 いつものように四人で学校から帰っているところだ。


「洸平は再テストはどうだったんだ?」


「ああ、どうにか受かったよ。勉強を頑張った甲斐があったな」


「可奈ちゃんとか?」


 にやにやするな。


「二人は本当に仲良しですね」


 天使のような笑顔もやめて。


 ちなみにクリオナは今まで通り積星高校に通う事が出来るようになった。源治おじさんが地球連合軍を通して手続きし直した事により、改めて留学が許される事となった。


「今度の日曜日、どこに行こうか」


「以前の映画の約束が果たされていませんよ」


「じゃあ、そうしよう」


 晴人とクリオナが日曜日の予定を決めている。


「洸平は私を誘ってくれないの?」


 可奈子が俺の顔を覗き込んで来る。


「あ、ああ、そうだな。考えておこう」


 にやにやする晴人と、ニコニコするクリオナ。


 もはや溜まり場となった秘密基地に到着すると、見慣れない自動車が停まっていた。黒塗りの、いかにもVIPが乗っていそうな、高級そうな自動車。運転席には若い青年がのっていて、軽く会釈された。


「あれ、地球連合軍の制服だな」


 晴人が言う。カーキ色の作業着のような装いは、訓練場で見かけた地球連合軍のそれと同じだった。だとすると、地球連合軍からのお客さんか?


 そう思いつつ中に入ると、秘密基地の一角にある応接スペース——椅子とテーブルがいくつか並べてあるだけの小部屋。俺たちがよくいる——で源治おじさんが、知らない人と向いあって座っていた。あまりいい雰囲気ではない。


「おう、お前らか」


 と言って手を上げる。もう一人は振り向いて、目礼だけをしてきた。


「私たちはいない方がいい?取り込み中なんでしょ?」


 可奈子が言う。何か重要な話なら、邪魔するつもりもない。


「まあ、お前らもいた方がいいかもな。そもそも、こいつと二人きりなんて耐えらえるもんではないからな」


「こっちの台詞だ。竹浦」


 源治おじさんに相対している人は、源治おじさんと同年代なのだろうか。が、禿げ上がった頭のせいで少し年上に見える。地球連合軍の制服にの襟元に付けられたバッジは、四つの星を模したシンボルが描かれている。地球連合軍の階級は星の数で表現されると聞いた事があるので、結構上の人だ。


「彼女が例の娘さんか?美沙子さんに似て美人じゃないか」


「ママを知ってるんですか?」


 可奈子の問いに、禿げたおじさんは少し言いにくそうに、


「もしかしたら、私の妻になるかもしれなかった人だからな」


 おっと。


 そんな禿げたおじさんを源治おじさんは睨んでいる。この二人に、何かあったに違いない。それでちょっと険悪なのか。


「他の三人は誰だい?子供は一人だったと聞いているが」


 源治おじさんは晴人とクリオナを指差し、


「娘の友達と——」


 次に俺を指差す。


「まぁ、息子みたいなもんだ」


 そんな台詞に晴人が笑いを堪えている。


「一応紹介してやる。こいつは漆原章一郎。地球連合軍極東支部の副司令官をしている」


「副司令官ってつまり——」


 俺が声を漏らす。先を源治おじさんは続けた。


「そう、つまりは地球連合軍極東支部のナンバーツーだ。そんなヤツがのこのここんな所に来やがった。何の用だが知らないが」


 源治おじさんが吐き捨てる。こんな態度を取るおじさんも珍しい。


 禿げたおじさん——漆原副司令官は苦い顔をする。


「俺だってお前の顔なんぞ好き好んで見たくはないさ。ただ、たまたま俺が昔馴染みだから借り出されただけでね。それに、うちの若い連中だと対応出来ないだろうしな。要点だけ伝えてすぐに帰る事にする」


「じゃあさっさと言ってさっさと帰れ。副司令官様は大層忙しいだろうからな」


「上司の仕事ってのは上手く部下に仕事をふる事だよ。それはいい。単刀直入に言う。お前のロボットに関する技術協力の要請だ」


「断る」


 一瞬も考える事なくきっぱり言う。


「お前が嫌いだからだ」


「はっきり言うな」


 くっくっく、と笑う漆原副司令官。


「俺も嫌いだが、これは地球連合軍からの要請でね。俺を嫌いだろうが何だろうが、それは考慮に入れずに考えてもらいたい。お前にお願いするのは不本意だが、俺としても連合軍には逆らえん。お前としても、連合軍に技術を買ってもらうために、訓練場を利用したんだろう?」


 そう言って肩をすくめる。


「連合軍にギジオレをアピールしたかったのは事実だ。だが、前をここに寄越したのは判断ミスだな。俺は何を言われようと、お前の口から出てくる要請など、聞く価値もない」


 頑なな源治おじさん。随分と強情だ。


「源治おじさん、何があったのかな」


 俺は隣の可奈子に小声で尋ねる。

 

「わかんないけど。こんなパパ見た事ないから、よっぽどなんだと思うけど」


 可奈子もわからないらしい。地球連合軍に所属していたのもそうだが、源治おじさんについてはよく知らない事も多いな。


「価値があるかどうか、お前がそう判断するかは勝手だが」


 漆原副司令官は懐から何やらが書かれた紙を取り出すと、


「これはあのロボットが起こした被害一覧だ。被害額も一緒に書いてある。全て地球連合軍が処理したものだ。これをお前が払えるか?それに、刑事事件に発展しかねないものもある。お前と、この子達にそれの対応は出来るか?それをよく考えてから、答えを出すんだな」


 と言って持っていた紙をテーブルに乱暴に置いた。箇条書きにされた事象が、数ページに渡って書き続けられている。・・・ほぼ俺の仕業か。


 源治おじさんは大きく息を吐いた。


「さんざんギジオレを泳がしていたのはそう言う事か。弱味を握るためだったんだな。ならば仕方ない。その要請は受ける事としよう。ただ、お前の言葉を受け入れた訳ではない事は覚えておけ」


「俺の説得で竹浦が折れたと報告書には書いておくよ。それが、出世する秘訣だよ」


「お前は昔から変わらん。俺の成果を横取りした若い頃から何も変わっていない」


「科学者は自分が成果を上げる事に心血注ぐわりに、成果をあげたと主張するのは苦手だからな。俺が代わりに成果を発表してやっただけだよ」


「やっぱりお前が嫌いだ。ギジオレをくれてやるから、二度と来るな」


 テーブルにあった灰皿を投げつけそうな雰囲気で、源治おじさんは立ち上がった。


「まあ、落ちつけよ。俺たちが欲しいのはロボットそのものじゃない」


 余裕たっぷりの顔。なんかムカつ。


「地球連合軍が欲しいのは、お前が言う、妄想変換機構だ」


「ふうん。人の精神衝動をエネルギーに変換する装置か。それだけでいいなら、さっさとくれてやる」


「落ち着けって。地球連合軍では、お前のロボットはもちろんずっとモニターしていた。お前のロボットが、妄想とか言う不確定なエネルギーを利用している事も分かっている。ただ、そんな物よりも取り出しやすくて、大きなエネルギーをお前もよく知っているだろう?」


「答えたくないね」


 漆原副司令官は源治おじさんの言葉を無視した。


「人の邪念は妄想以上に無限だよ」


 源治おじさんは答えなかった


「人の邪念をエネルギーとして利用する理論を発表したのはお前だったな。竹浦。それを断念した理由は知らんが、地球連合軍内では研究は続いていてな。それを取り出す事には成功したんだが、エネルギーに変換するのに手こずっててね。お前のロボットに積まれた変換機構があれば、それも問題なく出来ると結論づけられた」


「そんな事を俺に言ってどうするつもりだ」


「いや、結局お前の成果を横取りする形になるからな」


 言って漆原副司令官はにやりと笑った。


「だったらギジオレをさっさと持って行け。二度と俺の前に現れるな」


 源治おじさんが言うと、漆原副司令官は立ち上がった。大きなお腹を揺らしつつ、


「では失礼するとしよう。後日、うちの若いモンがロボットを引き取りに来るだろうよ。俺じゃないんだから優しく頼むよ」


 そう言うと帰って行って出口に向かう。扉を開ける直前、ふいに源治おじさんの方を向くと、


「美沙子さんは出て行ったんだって?やっぱり、お前には人一人すら幸せには出来ないんだな」


 高笑いをあげて、出て行った。


「あの野郎・・・」


 源治おじさんと同時に、可奈子の目が扉の向こうを睨んでいるのが見えた。


「えーと」


 最初に口を開いたのは俺。


「聞いていいのかな」


 源治おじさんは俺を見る。あまり見た事が無いような、怖い顔。大きく息を吐くと、


「あいつは俺の同期で、同じ技術部門に配属された。ただ、出世意欲の強いヤツだったから、出世のためなら手段を選ばなかった」


「そう言う感じの人よね」


「ああ、他人の成果は横取りする、謂れのない言いがかりをつけてライバルを排除する、ある事ない事言って上司に取り入るような、誰にでも嫌われるようなヤツだった」


「いるんだね。そういう人」


「トー・レ・ヴィオのアンドロイドはそんな事は考えません」


 晴人とクリオナが言い合っている。


「その上、同期だった美沙子にしつこく言い寄ってな。困り果てた彼女が頼ったのが俺だった」


「それが馴れ初め——って言うか、ママも地球連合軍にいたんだ」


「お前が生まれる前の話だ。俺が美沙子に相談された頃、戦術兵器の失敗の原因を押し付けられて、結局俺は地球連合軍を辞めざるを得なかった」


「それって、嵌められたって事?」


 俺が聞くと、


「そうだろうな。まるで準備してたみたいに俺の責任だって証拠が揃ってたからな。俺には身に覚えのない話だったがな。それを準備したのはヤツのはずだ」


「じゃあ、パパはあの人のせいで連合軍を辞めたって事?」


 源治おじさんと同じく厳しい顔をした可奈子が言う。自分の両親に関する事だ。


「そうだ。美沙子も一緒に辞めると言ったのは想定外だったようだが——それからヤツは出世の階段を登り始めた」


 汚い物でも口にするように吐き捨てる。


「とにかく、もうヤツの話はしたくない。俺の人生に関わって欲しくないし、お前らにも関わって欲しくない。洸平君、ギジオレをいつでも迎えにこられてもいいように準備してもらえるかな。もちろん、旧ギジオレだ」



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