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妄想ロボ ギジオレ  作者: みつつきつきまる


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 俺たちの心配をよそに、源治おじさんとクリオナは翌日の昼には帰って来た。


 俺たちの方はと言うとテストのため今日は半日授業だったのだが、クリオナと源治おじさんの事を考えると、とてもそんな気分にはなれなかった。おそらく結果は壊滅的だろう。


 いつの間にか欠席届を提出済みだったクリオナを秘密基地で迎えると、早速晴人が駆け寄った。 


「クリオナ!」


 二人を送り届けた宇宙船がどこかへ去って行く中、人目もはばからずクリオナを抱きしめる晴人。今いちばん揺れ動いているのは晴人だろう。だが、そんな風に素直に愛情表現できる晴人を羨ましく思う事もある。


「はい。やっぱりまだ役割は終わっていませんでした」


 昨日のままのワンピース姿のクリオナは、晴人を安心させるように言う。


「もう帰って来ないと思ったじゃない・・・」


 可奈子も駆け寄ってクリオナの頭を撫でる。


「すみません。本当はどうなるか分からなかったものですから」


 にこにこしているクリオナ。その顔を見ているとアンドロイドである事を忘れさせる。


 二人が戻ってくる前に三人で色々話し合ったのだが、結局は難しい事は考えずにクリオナと接しようとの結論に達した。アンドロイドだとか、人間だとかそんなものよりもクリオナとして。ひとりの友達として。


 地球に攻撃して来ようとしているトー・レ・ヴィオの関係者と言う事は気にはなるが、そこはとりあえず置いておこう。


「いい交渉が出来たぞ」


 盛り上がっている三人を横目に見ながら、源治おじさんは俺に言った。


「彼女は中々の交渉上手じゃないか。向こうの条件を飲むように見せかけて、こちらの条件を上乗せして飲ませるんだからな。いつからこっちの交渉担当になったんだか知らないが、おかげでうまくいった」


「え?クリオナがトー・レ・ヴィオと交渉してたの?」


「ああ、クリオナ君の方がそれぞれの状況をよく知っているからな。だからか、だいぶこちらに有利な条件が引き出せた」


 クリオナが俺達に有利な交渉を?普通ならトー・レ・ヴィオに有利になるよう交渉しそうだが。


「今回の条件は、一先ずギジオレの引き渡しはなし。無差別攻撃も一時停止。その代わり、新しいギジオレを作ってそれを引き渡せってさ。もちろん向こうの資金でこっちの言い値でな。形としては仕事を請け負ったような感じだな。これで目一杯高性能なギジオレを作れるぞ」


 なんかただのギジオレの製造要請みたい。ギジオレを作ってトー・レ・ヴィオに買ってもらう。最初と随分話が変わったもんだ。


「しかも、手伝いロボットまで寄越したからな。見た目はアレだが、中々優秀なロボットらしい」


 そう言って指し示したのは、郵便ポストに手足が生えたような、ロボットとも言えないような形をした赤い物体。ロボットとアンドロイドとの違いはあるが、クリオナとは大違いだな。


「外見にこだわらないのは俺好みだな。彼女を作れるくらい技術力のある連中が作ったロボットだ。性能は間違い無いだろう」


「BNK303はトー・レ・ヴィオでは一般的な作業用ロボットの最上位版です。軍の製造工場でも働いているので、博士の助けになると思います」


 晴人から解放されたクリオナが付け加える。よく見ると薄汚れたボディの中心にBNK303と刻印されている。と言うか、いつの間にか源治おじさんは博士と呼ばれているのか。


「博士ってガラでもないでしょうよ」


 可奈子も呆れたように言う。そんな言葉は無視して、


「ちなみに俺から出した条件は一つだ」


 源治おじさんはそう言って人差し指を立てて、


「彼女をこっちで預かる」


 その指をクリオナに向けた。


「本当はもう必要ないから戻るって話だったんだが、こっちの監視と言うか、お互い交信手段は持っておいた方がいいと思ってな。彼女は向こうと通信出来るみたいだし、彼女にその役割はぴったりだろう。向こうの情報も持っているだろうし、こっちにとっても有用だ。それに、娘の友達だしな」


「だから帰ってきたんだ・・・パパ、ありがとう」


「たまには父親らしい事もしたいもんだ」


 珍しく源治おじさんに感謝を伝える可奈子。未だにクリオナを撫でている。


「それが、私の役割です」


 輝くような笑顔で、クリオナは言った。が、その笑顔は一瞬で曇り、


「今通信が入りました。海岸に三体の無人人形兵器を設置したそうです。時間と共に進行してくるので、これを止めなければ町に被害が及びそうです。どうやら、トー・レ・ヴィオの言う様に事をすすめなければ攻撃する意識はある、との意思表示だと思います」


「なるほどね。資金の持ち逃げは出来なさそうだな」


 そのつもりあったのかよ。まあ、クリオナなら笑って見逃してくれそうな雰囲気はあるけどさ。


「まあ、いつでもこっちを見張ってるって言いたいのかもな。こっちが出した条件とは違う気もするが、まあいい」


 源治おじさんは言うと、俺の方を向いた。


「ちょっと行って、ちゃっちゃとやっつけて来てくれ」


 簡単に言いすぎやしないか。


「今の洸平君なら多少の敵ならなんて事ないだろう」


「いや、まあ、動かす事は出来るようになったけどさ」


「念の為可奈子もついていけ。そうすりゃ妄想力が足りなくなる事もない」


 そういう言い方されるとなぁ。


「はいはい。わかったわよ。危険な戦いに娘を向かわせる父親ってどうなのよ」


 少し前に感謝と共に父親の威厳を取り戻しかけたのに、可奈子の中ではそれは忘れられてしまったのかもしれない。


「俺達も一緒に行っていい?」


「私もですか?」


 晴人が言って、クリオナが聞き返す。


「どんな感じで戦うのか近くで見てみたいし、二人がどんなイチャイチャするのかも見てみたい」


「私も見たいです」


 やめろ。


「それに、クリオナがいた方が向こうは攻撃しにくいんじゃない?」


「分かりませんが、自分と同じ所属の反応を感知したら混乱するかもしれません」


「じゃあ四人で行っておいで。四人位なら余裕で乗れるはずだ。シートは無いから、そこだけは気をつけてな」


 そうして俺達は海岸に向かった。


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