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21.氷の盾、炎の掌

断続的に響く轟音。空気を伝う重い衝撃。粉々に飛び散る氷片。

ゴーレム化したモーガンが、分厚い氷の大盾を殴り続けている。

その向こうにはデライラとセイディ。戦闘不能のセス神官とミラ神官を守り、動けずにいる。


氷の大盾はデライラとセイディの合作だ。そう簡単に壊れないだろう。でも、今のうちに何か打開策を考えないと……クレアの姿も見えないし――


「はははっ、かたいな」

くぐもったモーガンの声。振りかぶった太い腕が、ぶおんと風を打ち、氷盾に衝突する。

ばきりと高く硬質な音が響く。一塊の破片が散らばり、氷盾を縦断する亀裂が入る――マジかよ!?

その裂け目から、二人の顔が覗く。焦りを隠せないセイディと、苦悶の表情を浮かべるデライラ。


「ブラント、レナルド! なんとかしなさいよ!」

セイディの絶叫――これは悠長にしてられない。


反射的に銃口を向け引き金を引く。

真っ赤な軌跡を描く三つの火弾が、ゴーレム外郭で炸裂する。


「ダメか……?」

白煙が薄らと消えた外郭は、焦げ付いただけだった。



「ブラント、奴は土属性優位だ! 木属性で縛れ!」

風の光をまとったレナルドの指示が飛ぶ。

火が効かず、氷に強い……そうか!


「了解!」

魔銃のモードを変え、ゴーレムの足元を狙う。

銃声と共に放たれる緑色の閃光。

地面に着弾すると同時に、ずるりと幾本も伸びる魔力の塊。

それは、木の根のようにゴーレムの外郭に巻き付く。


ぎしりと軋む巨体。鈍る動き。

構わず振り被るゴーレム――足りないのか?

巨大な右拳が、容赦なく氷盾を狙う。


「デライラ! セイディ!」



響き渡る破砕音。四散する破片。

押し戻されるようによろめくゴーレム。

だらりと垂れた右腕は、拳が砕けていた。


氷盾は? ……突破されてない!


たじろぐゴーレムを見ると、木の魔力が強く絡みつき、外郭表面にはクモの巣状にヒビが入っている。


「よし、“吸魔”が効いて――」


「じゃまをするな」


頭の中に聞こえるモーガンの声。

いや、そんなはずは……


一瞬、目の前に陰が落ちる。なんだ?

ふと見上げた先、ずわりと伸びた野太い四指。視界を遮る分厚い掌。


これは、ゴーレムの手?

そうだ、右は壊れたけど、左がある。

でも距離は? ……いや、相手は巨大。

二、三歩あれば、ここまで届くか。


そんな事より防御を

でも、デライラみたいな盾は作れない


――ああ、これは、間に合わないな。


陰が濃くなる。

圧力が迫る。

重さを感じる。



「クレア!」

「まっかせなさい!」


ゴーレムの手を隔て、微かに聞こえる声。

――これは、レナルドとクレア?


次の瞬間、真っ赤な光が視界に満ちる。

遅れて響き渡る爆音。

間髪入れず、破片混じりの衝撃波と熱風に巻き込まれる。


「痛っ…… あっつい!!!」

思わず腕を交差するけど、勢いが強く、踏ん張りがきかない。

覚束ない足取り、浮遊感――あれ、地面がない?


「……ぶっ!」

じんわり伝わる痛み、硬い地面――どうやら転んだようだ。

目の前がぐらりごろりと回る。

抗えず身を委ね、地を転がり天を仰ぐ。



風に煽られた欠片が、ぱらぱらと跳ね返り、ちりちりと飛び散っている。

あちこち痛いし熱い。頭はくらくらする。


何がどうなったんだ?

俺は、生きているのか?


塵芥舞う視界の中、感じる人の気配。

こっちに近づいてくる? ……ヤバい、立たなきゃ――



「いつまでそうしているんだ、ブラント」

「……レナルド?」

呆れたようなレナルドの声。

差し伸べられた手を取り、なんとか立ち上がる。


「……ゴーレムは?」

「終わったぞ」

レナルドが促すように視線を向ける。その表情は、どこか悲しげに見えた。



ゆるりと見やる市場中央。

ヒビに沿って崩れた左手。どろりと融けた巨体が横たわっている。

その中心部から黒煙が立ち上り、決して動く事はなかった。


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