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07.二人の秘密


「るぅすぅばぁんん〜???」

眉間にシワを寄せ、思いっきり不快を示すクレディ。セイディは何も口に出さないが、冷ややかな視線でレナルドを睨みつけている。


これから神殿に向かうのだけど、ちょっとしたトラブルが発生している。それは、レナルドがクレアとセイディは留守番だと決めた事に始まる。


「今日は召集された者だけしか行けないんだ。理解しなさい」

「ぶーぶー!」

頬を膨らまし最大の抗議を見せるクレア。折れない態度に困り顔のレナルド。端から見てる分には面白い。


「神殿にこもる事になるから退屈だぞ?」

「むっ……退屈はイヤね」

「それに、皆が君たちの料理を心待ちにしている。今日も準備してくれると助かる」

「ホント?」

ぱあっと明るくなったクレアと、表情が緩んだセイディがこちらを向く。一瞬反応に迷っていると、視界の端に真剣な顔のレナルド。何度も首を縦に振り、同意を求めてくる。

あれ、巻き込まれた?


「う、うん。本当だよ! ね、デライラ?」

「えっ!? は、はい。お二人の料理はおいしかったですから」

思わず頷いてしまった。それに勢いに任せてデライラも巻き込んでしまった。後で謝っておこう。


「し、仕方ないわね!」

「食い意地の張った子たちだこと」

やれやれ感を出してるけど、まんざらでもない二人。

この妖精たち、ちょろくない?


「では、行ってくる」

そそくさと玄関へ向かうレナルド。


「早く帰ってくるのよ!」

「早く帰ってきなさいよ」

張り切り顔で見送る二人は、レナルドの思惑通り留守番となった。

デライラと顔を見合わせ、疑問を抱きつつ宿を後にする。



宿を出て少ししてから、レナルドが口を開く。


「何か言いたげだな」

「そりゃあね……今日はどうして二人に留守番を?」

デライラも気になっていたのか、頷きながらレナルドを見ている。


「二人の過去を知っている者がいなければ、よかったんだがな」

「そう言えば、ゼン神官は何か知っているようだった」

「おそらく、当時の記録が残っていたのだろう。考えが甘かったよ」

深くため息をつくレナルド。


「何があったのか、教えてくれないか?」

「そうだな、君たちには伝えておこうか……話は人魔大戦終結後まで遡る――人族が魔族を退けた後の話だ」

メインストリートの雑踏に紛れながら、レナルドは話を続ける。



「当時軍は残党狩りのため部隊を編成し、周囲を調査していた。その時偶然出くわしたのがあの二人だ」

「それで部隊が保護を?」

「いや、魔族の残党として攻撃した」

「嘘だろ……戦時とはいえ、理不尽すぎる」

デライラも言葉を失い、悲哀に満ちた表情をしている。


「だったら、保護というより捕縛なのか」

単純な俺の問いにレナルドは首を横に振った。


「二人は部隊を返り討ちにした」

「……は?」

「死者こそ出なかったものの、部隊の被害は甚大だった」

「ははは、そんな」

自分の顔が引きつっていくのがわかる。


「その後は生存者の報告により救援部隊を編成。私も加わり、どうにか鎮める事ができた」

レナルドは少し疲れた顔をしている。よほど大変だったと想像がつく。


「古い話だ。疾うの昔に風化していると思ったのだが、知っている者がいるとするならば――」

「トラブルになりかねない、か」

「その通りだ」

深く頷くレナルド。


確かに生き証人は、もういないかもしれない。でも、ゼン神官のように記録や情報として知っている人がいてもおかしくない。レナルドが慎重になるわけだな。俺としても、あの二人に傷ついてほしくない。



「しかしクレアとセイディが、そんなに強かったなんて。今朝のやり取りからは、想像つかないや」

「二人は強いぞ――あの時の魔法は、凄まじかった」

ぽそりとこぼしながら、遠い目をするレナルド。


そういえば、思い当たる節はあるな。あれは特訓し始めの頃だった――

微笑みながら宙に浮く二人の妖精。

極限までに高まる炎と水の魔力。

夕焼けに染まる空から降り注ぐ、赤と青の弾幕。

……あれは死ぬかと思った。


それを考えると、そんな二人を特訓相手にしたレナルドも、どうなんだ?




そうこうしている内に、大聖堂に着いた。


「おはようございます、皆さん。さあ、こちらへどうぞ」

男性神官に案内されつつ、ずらりと並ぶ参拝者のじと目に晒されるのは、どうも慣れない。


神殿奥に進むにつれ、じっとりと、まとわりつくような嫌な視線を感じる。あれは、顔合わせで見た神官達……観察、興味、敵意――様々感情が入り混じっているようだ。


「……クレアとセイディ、連れて来なくて正解かも」

思わずこぼれた一言に、レナルドが小さく頷いた。


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