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07.ウサギとヒゲ


管理室は治安所一階、受付に隣接していた。もちろん一般の人は入れないように隔離されている。


「あ、 ブラントさん、お久しぶりです。怪我はもう大丈夫なんですか?」


ウサギだ。いかにもな制服を着たウサギが人間のように歩いてしゃべっている。この世界では普通だろうけど、慣れるのには少々かかりそうだ。


「ああ、おかげさまで」

「……なんか雰囲気変わりましたね? 男子三日会わざればってやつですか?」

「ま、まあ、そんなところかな?」


笑って誤魔化す。ブラント流甘々な応対なんて俺には無理。地でいくしかない。

所長から渡された紙を見せ、関連する資料を出してもらう。


「はい! 今お持ちしますね!」


元気よく資料を探しに行くウサギの職員。ぴょんぴょん跳ねて歩くわけじゃないんだな。なんて考えている内に資料が見つかったようだ。


「はい、こちらが資料です」

「ありがとう」

「あ、そういえば、武器と装備は受け取りましたか?」

「いや、これからだけど」

「でしたら、講習もありますからね!」

「ああ、所長から聞いてるよ」

「そうですよ、所長命令ですからね! サボらずしっかりと受けてきてくださいね!」


お叱りのつもりなんだろうけど、所長の雷に比べれば雲泥の差だな。かわいい以外の感想が出てこない。心が和む。これから武器を受け取りに行くとは思えないほど、落ち着いた気持ちで武器管理室へと向かう。



武器管理室は治安所地下、中央階段を降りた先にあった。そのせいか全体的に薄暗く空気が悪い。金属と油の臭いが漂っている。ほんわかしていた気分が、自然と緊張感で満たされていく。

見渡すと作業机がいくつかあるけど、職員が見当たらない。呼びかけてみようか。


「よぉ、突っ込んでヘマした兄ちゃんじゃねぇか、なんか用か?」

「ひぃっ……!」


変な声が出てしまった。ちょっと恥ずかしいが、視線の下から男がぬっと現れたのだ、仕方ない。この人は武器管理室の職員だと思うけど、机に隠れるほど低い身長だが厚みのある筋肉質。たくましいヒゲも生えていて、ファンタジー世界でいうドワーフみたいな男だ。薄暗いシチュエーションもあいまって、迫力に圧倒される。


「えっと、武器と装備を受取りに来ました」

「おお、そうだったな。今持ってくるから、待ってな」


ゴトリと、鈍く硬い金属音が響く。……銃だ。リボルバーに近い形状をしている。映画なんかでよくみるけど、本物は初めてだ。

銃と一緒に渡されたホルスターを身に着け、銃を収める……ずしりとした感触。武器の受け取りと言われた時から覚悟はしていたけど、心の準備は充分じゃなかったみたいだ。不安や恐怖、責任を感じているせいか、見た目より重い。良くも悪くも誰かを傷つける事ができる道具。しっかりと使い方を聞かなければ。



「ようし、準備ができたなら、あとは使い方だな。今度はヘマしないように、みっちり教えてやろう」


武器管理室の奥へと案内される。映画で見る射撃場のようだ。講習というのは、ミスをした職員に対する再発防止のための特別講習だろう。めんどくさがる人もいそうだけど、俺としては正直助かる。このままだったら怖くて使えない。

ドワーフ風の職員は、気難しそうな感じだったけれど、結構丁寧に教えてくれた。銃は単純に弾丸を発射したり、”炸裂する魔力”を発射するだけでなく、”麻痺効果のある魔力”や”動きを封じる魔力”、”閃光を放つ魔力”を発射できるようだ。制圧用という感じかな。殺傷力の低い方法があってよかった。

それよりも”魔力”という、異世界を感じる存在が出てきた。物語の中でしか触れられないものが、引き金を引くと実際の形として飛び出してくる。赤や黄色の発光、複雑な発射音と反動、体からほんのりと”力”が抜けていく感じ。全てが本物と伝わってくる。講習が終わった頃には、武器や銃への恐怖や不安が和らいでいた。それどころか、少し楽しくなってきてもいた。ロマンだ。仕方ない。

よし、これでやることは全部すんだな。ようやく人探しに行けそうだ。



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