03.郷愁の高楼
幕間.交渉(レナルド視点)について
8/30に投稿しましたが、8/31に修正してます。
今後のストーリーをより深く楽しめるよう修正しましたので、再読頂ければ嬉しいです。
スカーレリアから馬車で二日目。ようやく王都に到着した。ぐるりと都を囲む塀は高く厚く、堅牢さを見せつけているようだ。それに門番も兵士だけでなく、重装兵もいる……大分厳重だな。
「そこの馬車止まれ。要件を伺う」
「王都神殿へ招待された、スカーレリア治安所の者だ」
レナルドが代表して、王都神殿――ゼン神官からの招待状を見せると、門番の顔色が変わった。
「……これは失礼致しました。少々お待ち下さい」
横柄な感じだったけど、切り替えたな。教育が行き届いているのか、保身が強いのかわからないけど。
「皆様、お待ちしておりました。まずはご滞在先にご案内致します」
少しすると、男性神官に声をかけられた。高位神官ではないけど、どことなくマテオ神官のような感じ。ちょっと落ち着く。
男性神官に案内された場所は、王都滞在中の宿泊場所。格式高そうな造りと豪奢な装飾。普通の宿とは比べ物にはならないとわかる。さすが貴族対応――と、思ってたけど、ここにいるのは貴族とその使用人達。みんなしれっと入っていった。
今回招待されたメンバー以外にも使用人も同行している。デライラはもちろん、俺も二人付いている。最初はいらないと言ったんだけど、アルバートからの説教もあり、最終的には折れた。
「ブラント様……スカ―レリア貴族としての矜持というものがあります。どうかご理解くださいませ」
冷ややかなアルバートの視線。未だにぞくりとする。
「難しい顔をしてるけど、どうかしたの? ブラント」
「ああ、セイディ……いや、気を引き締めなきゃなと」
よくわからないと言いたげに、首をかしげるセイディ。
「元気が出るように、遊んであげてもいいわよ!」
「それは遠慮しておくよ」
「なんでよ!」
ぷりぷり怒るクレアと、やれやれと呆れるセイディ。
二人も同行すると知ったのは出発日だった。使用人枠と聞いて納得はしたけど、レナルドの顔を見ればわかる――留守番の説得は、できなかったようだ。
「お疲れの所申し訳ありませんが、本日は王都神殿へご同行お願いします」
荷物を運び終えた頃、男性神官に促され、王都神殿へと向かう事になった。
宿からメインストリートに出ると、王都の景観が視界に広がる。第一印象は、西洋風の大都市。歴史を感じる建築物と石畳の道。どことなくテレビで観た海外の街並みに似ている。
「高い建物が多いですね……」
感嘆の声を上げるデライラ。俺は少し圧迫感がある。
「スカーレリアより空が狭く感じるよ」
「ブラントさんの言う通り、青空が窮屈です」
むむっと眉を寄せるデライラ。さっきまで楽しそうだったのに、都会の良し悪しを感じているのかな。
その一方で二人の妖精は、イイ顔をしながら王都を見渡している。
「クレア、あれは何かしら?」
「おもしろそうね、セイディ。行くわよ、ブラント!」
二人が指さす先には、スカーレリアとは趣の違う屋台。
それどころじゃないだろうに、なぜか抗えない。
きらきらと嬉しそうな顔。
ぐいぐいと引っ張られる手。
何気ない日常のワンシーン。
ふと昔の記憶が蘇る――
狭い空にひしめく高層ビル。
ポップな装飾のキッチンカー。
クレープやタピオカ。唐揚げなんかもあったな。
瞬きの流行りを乗せた、現代の屋台。
“あいつ”にもよく連れ回されたな。
笑顔で俺の手を引く、幼馴染の顔。
随分久しぶりに思い出したような気がする。
いつも見ていたはずなんだけどな――
「遊んでる隙はないぞ」
抑揚のない冷たい声。
思考が引き戻される。
――ああ、そうだったな。
声のする方を見ると、無表情のレナルドが俺達を睨んでいた。
「ごめん、ぼーっとしてた」
馬車移動からの解放感。
海外旅行のような気分。
いつになく気持ちが緩んでいたみたいだ。
「はーい」
気のない返事のセイディと、ぶーたれるクレア。この二人は気を抜きすぎだけど。
キリの良い所と思ったら、神殿に行けなかった……
次回こそ本題――王都神殿でのシーンになります。
また、四章の本筋がちらほらと出てきますので
乞うご期待!




