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06.お叱り


「おーい、どうした? 大丈夫か?」

「あ、ああ。大丈夫だ。ありがとう」


心配そうにデーヴィットが声をかけてくれた。厳密には人間ではないようだけど、人間味があって安心する。いい奴だ。



「ブラント!」

「は、はい! 」


雷一閃。デーヴィッドに話かけようとした直前、冷ややかな怒りに呼ばれ、条件反射で返事をした。声の方を見ると、所長が晶精――チェンバレンを伴い降りてきた。

眉間にシワを寄せる所長。無表情のチェンバレン。その場から去るデーヴィッド。置いてくなよ、この人でなし!


「先程の応対はなんですか?」

「すみませんでした……」

「謝る方が違うでしょう。人の顔を見て逃げ出すなんて、失礼にも程がありますよ」


まったくもっておっしゃる通り。俺も顔を見られただけで逃げられたらショックだ。でも、その相手が人間だったらの話。いきなり見た目人外とか普通驚くよ。別にへたれだからというわけじゃない。


「申し訳ありませんでした」

「……ああ」


よく見ると表情はなんとなくわかる。でも、どこから声出てるのこの人。その存在が不思議でいっぱい。でもこれがこの世界では普通なんだろう。慣れなければ。


「まったく、普段からそう素直であれば怪我なんてませんし、こちらとしても助かるのですけどね」

「……気をつけます」

「まあ、先の事件に関しても、その素直さが行動に出たのでしょう」

「そ、そうでしょうか?」

「早期に事件を解決しなければ、と思ったのではないですか?」

「えっと、そうだと思います……もう夢中で」

「その思い切りの良さには期待していますからね」


煌めく美麗な顔にニコリとされると、同姓であってもドキリとしてしまう。いやいや、そっちの気はない。

どうやら”ブラントの行動”はそれなりに評価されているようだ。大怪我をした事に違いないけれど、身を挺してまで事件を解決させた事が、評価ポイントなんだろう。俺はブラントではないけど、似たような経験をした者として正直うれしい。そういえば、”あいつ”はどうしているかな。


「という事で、本日のあなたの担当ですが――」


イケメンに褒められたと思ったら、いきなり仕事を振られそうになる。そうだ、この人は上司だった。でも、右も左もわからない今の状態で、複雑な事は勘弁願いたい。


「できれば簡単な作業からお願いしたのですが……」

「何を言っているんですか? 受け答えはできていますし、なによりも走れるようですから、しっかり働いてもらいますよ」

「は、はぁ」


そうだった。今さっき元気いっぱい走った後だ。それ以上は何も言えない。


「わかったのであれば、これを持って管理室に向かってください。あなたの担当です」


所長から一枚の紙を渡される。これは捜索願い? 人探しなんてやった事ないぞ。俺にできるのか、という不安は強いけど、”人助けができる” と思うと、やる気に満ちてくる。子供の頃から憧れていた、誰かを助ける人になれる。違う世界に来て叶うなんてな。


「それとあなたの武器と装備も預かっています。武器保管室にありますので、忘れず受け取ってください」

「武器、ですか」


今までの日常で、使った事がない物騒な単語が出た。どうしても戸惑ってしまう。平和ボケとよくいわれるけど、安心安全な暮らしは幸せなんだと再確認させられてしまう。


「改めて使い方をしっかりと学んでください。先の事件も本来なら怪我する事なく処理できたはずですよ」

「う、わかりました……」


思わず腹の傷口をさすってしまう。そう、ここは武器や装備が必要な世界だった。元の世界とは全く違う事を自覚しないと。


“では、頼みますね“と、所長はチェンバレンに会釈し二階に戻った。俺への応対と大分違うと思うけど、使い分けているんだろうな。

そういえば結構放置気味だったと、改めて挨拶をする。


「それでは改めてまして、よろしくお願いします。チェンバレン卿」

「……ああ」


同じ返事しか聞いてない気がする。結構放置気味だったし、怒らせてしまったか? ……ん? 表情が変わった?


「敬称は不要だ」

「はい?」

「レナルドでいい」

「……では、レナルドさん」

「レナルドだ」

「……わかりました。レナルド」

「ああ」


いきなり距離を詰めてきたよ。所長にまで卿と呼ばれてたから、かなり貴い人なんじゃない? 大丈夫? でも、レナルドの表情が幾分か優しくなった気がする。おかげで多少なごみつつ、管理室へと向かう。



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