表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/88

20.ケタが違う


キャンプ地南方――まばらにも轟音を上げながら、こちらに迫る複数の存在。ここにいる全員が、その姿を捉え始めている。


「……感知できなかった?」


カミール神官の声に焦りが混じる。振り払うかのように腕を広げ、両手から青い光を放った。次の瞬間、強く輝き発散されるように、南方へと一気に広がっていった。

薄く引き伸ばされた魔力――攻撃系ではない?


「カミール神官、今のは?」

「ちょっと調べ物」


カミール神官はそれ以上答えず、魔力の強弱をつけながら、数回魔法を放った。その様子は探知機のようにも見える――もしかして感知系の魔法なのだろうか。


そういえば、トラップとオウグルの襲撃は、彼が事前に察知していた。でも今回は……気づけなかったのか?



そう時間が経たない内に、大まかな姿が見えてきた。

躍動感あふれる四肢の走り。風に波打つ毛並み。むき出しの牙から、荒い息づかいが聞こえるようだ。


「まだ遠いけど……あれは、狼?」

「“ベルファ”――見た目は狼のようだが、体躯も大きく凶暴な魔物だ」


険しい表情をするレナルドに続いて、カミール神官が南方を向いたまま口を開く。


「それだけじゃない。“強い個体”がいる」


やっぱりあの魔法は感知系。だからこそわかった情報なのだろう。


「カミール神官、なぜ接近するまで気づけなかった」


ゼン神官の問いに、やや時間を置いてカミール神官が答える。


「……魔力を秘匿する技法を使っている」

「なんだと?」


カミール神官の見立てに、さすがのゼン神官も驚きを隠せない様子。

魔物といえば獣のようなもの。そんな技術が使えるなんて……にわかには信じられない。俺も思わず声が出る。


「魔物に……そんな事が?」


ぐるりとこちらを向くカミール神官。フード隠れた顔が、より一層暗く見える。


「“強い個体”がいると言ったが――あれは“魔族”だ」


一帯に緊張が走る。

魔族――古の大戦で人族と争った存在。まさかその生き残りが?


「各自――戦闘準備だ」


ゼン神官の低い声が、重く冷たく響き渡る。神官達は静かに頷き移動し、態勢を整えていく。



迫りくる脅威。押し寄せる駆け足。伝わる振動。


空気が張り詰める。


「――警戒!」


メイナード神官の号令が響く中、前衛の従者達――5名が盾を構える。淀みなく漂う白色の光――硬化魔法が施され、守りの陣形が強化されていく。

その中にデライラもいる。眉間に深いシワを刻みながら、メイスを握りしめている。


「デライラ、緊張してる?」

「ブラントさん……そうみたいです」


声をかけてみたけど、デライラの顔からこわばりが取れない。


「メイナード神官もいるし、後ろには僕とレナルドもいる。もう少し力抜いた方がいいと思うよ」

「わかってはいますけど……ブラントさんは、なんでそんなに落ち着いているんですか?」

「僕も緊張しているけど――クレアとセイディほどは強くないだろうな、と」

「それは……確かに」


デライラから笑みが溢れる。後ろの方からレナルドの笑い声も聞こえる。


「でも油断せずに行こう」

「はい」


デライラの緊張がほぐれたようで何よりだ。

なんだかんだ言って、俺は実戦経験済み。慣れはしないけど、適度な緊張感がある。

それに今回は優秀な仲間がたくさんいる。中衛は俺とレナルド。そしてアレグラ神官と従者達の計5名の編成だ。


「あっつい!」


位置についた時、思わず叫んでしまうほど、背中で感じる高温と真っ赤な光。なんだ……この熱は?


「火を受け入れ灰となれ――」


振り向くと、ゼン神官が両手を広げ、祝詞を唱えていた。圧倒される強大な魔力。紅蓮に燃えたぎる光球――まるで太陽のよう……まさか、初っ端から“コレ”を打ち込むのか?


「土を肥やす礎となれ――世の理へ、還れ」


上空に放たれる煌々と燃え盛る巨大な魔力。


「ぐアアぁッ?!!」


軌道上にいたオウグルを巻き込み、放物線を描きながら、魔物の集団へと向かっていく。


「獣風情に、行儀よく待ってやる必要もないだろう」


淡々としたゼン神官の言葉に、恐怖を覚える。


「豪快だな!」


レナルドは嬉しそうな声を上げながら右腕を振る。複数の土塊が空中に展開され、上空に打ち上げられた。土塊は巨大な光球を貫き、燃え上がる塊となって魔物達に降り注がれた――まるで火山弾のようだ。


「……ケタが違い過ぎる」


思わず漏れた言葉は、着弾した爆発音と、魔物達の叫喚にかき消されていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ