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18.逃走


「グアアッ」


上空を旋回し交差する三羽のオウグル。


「……高い――射程の範囲外です」


アレグラの従者が弓を引き狙いを定める。


「無駄打ちしない方が良い。警戒だけは怠るな」

「はっ」


メイナード神官指揮の下、従者たちは構えを解いた。統率の取れた動きだ。その一方で、俺達はアレグラ神官からの説明を聞いていた。



「――それから、わたし達はオウグルの数を減らす事に専念したのさ。それが功を奏してね。あとは上にいる奴らだけ。メイナードもよく耐えてくれたよ」


なんとも間が悪い。もう少し早く動いていれば、加勢できたかもしれない。

でも、悔いるよりも、レリクター達を称えよう。


「みなさん、デライラをかばってくれて、ありがとうございます」

「感謝する」


レナルドの言葉に、場の空気がふと緩む。アレグラ神官達の笑みが見える。胸にじんわりと温かいものを感じる。


けれど、晴れない疑問がある。


「でもなぜデライラが?」

「……それがわからないんだ」


腕を組み、首をかしげるアレグラ。

次いでレナルドが考えながら口を開く。


「……もしかするとオウグルの狙いは、魔力かもしれない」


レナルドは昔の記憶を思い出しているようだ。


「経験則だが、魔物――特に獣型や鳥型は強大な魔力に惹かれやすい傾向にある」

「じゃあ、デライラを狙ったわけではない?」

「ああ、強力な魔力を放つ “遺物の封印” が奴らをおびき寄せたのではないかと思われる」


自然とデライラの方へ視線が動く。未だ淀みなく注がれる強大な魔力を感じる。それに封印が不完全とはいえ、遺物そのものにも強大な魔力が内包されている。狙いはやはり魔力なのだろうか。



レナルドの説を実感した時、デライラの魔力に揺らぎを感じた。放たれていた紫の光は薄れ、弱まり、圧倒されるような力も徐々に鎮まっていった。



「……終わりました」


デライラは、封印を終えた遺物をそっと抱え、ゆっくりと立ちがる。


「メイナード神官、みなさん。ありがとうございました」

「なあに、怪我なくて良かったな」


メイナード神官は軽く笑みを浮かべ、デライラの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。封印が終わった事もあり、緊張していた空気が少し和らぐのを感じる。



「ガアッガアァ」


三羽のオウグルが突然鳴き出し、ぐるりと回り翼を大きく羽ばたかせた。身体は南方に向け、徐々に遠ざかって行く――逃げる気か?


魔銃を構え狙いを定める。銃声と共に放たれた弾道が、一羽のオウグルを貫通する。

同時にレナルドが指をならす。瞬く閃光。遅れて轟く雷鳴。二羽目のオウグルが煙を吹きながら力なく落下する。


あと一羽――アレグラ神官が放った矢が巨躯を捉える。肉を削ぎ、血しぶきが空に舞う。


「浅い! 射程が足りなかった……」


アレグラ神官の声に焦りが滲み出る。最後の一羽は古戦場から南方へ、よろつきながら飛び去って行った。



「逃したか」


レナルドから漏れ出る呟き。低く小さかったが、嫌に響いて聞こえた。


「すまない……仕留めきれなかった」

「いや、アレグラ神官のせいではない。ただ――」


レナルドは険しい表情のまま、南方を見つめている。同じ方を見てみたけど、オウグルの姿はもう無い。


「レナルド?」

「……何、少し気になってな。おそらく考え過ぎだろう」


何か気がかりでもあるのかな。でも、確信がないのだろう。あまり追求しない方がいいか。いたずらに不安を煽る事になるしな。



オウグルが去って少しした後、ゼン神官とカミール神官が、それぞれの従者を伴い合流した。


「……この有り様はなんだ?」


困惑しているようなゼン神官の声。それもそのはず。所々に横たわるオウグルの死骸と風に舞う羽。周囲には血と脂の臭いが漂っている。


「誰か説明を」


ゼン神官指示の下、アレグラ神官とメイナード神官を中心に、今までの流れを説明した。遺物の封印から始まり、オウグルの襲撃と討伐――そして、一羽逃した事も。


「……なるほど。やはりカミール神官の感知が正しかったという事か」


聞き取りの後、何か気付いた様子だったけど、この事を感知していたのだろうか。

カミール神官を見ると、どこか得意げなのがフード越しでもわかる。

ゼン神官もそれを見たのか、“ふん”と鼻を鳴らし、口を開いた。


「念のため用意した物だが、無駄にならずに済みそうだ。今は回復に努めなさい」


全員が集合できた事で一心地ついたのか、空気が和らいでいく。でも、気を抜いている人は誰もいない。準備していたアイテムで回復する者、武器や矢の残数を確認する者、様々だ。


「不足した者は補充しておくように」


ゼン神官指示の下、彼の従者が物資を配布していく。もしかして、キャンプから運んできたのか? それで俺達より遅れて到着したのか。


休憩という名の準備が終わると、これからの事について、話し合いとなった。


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