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17.南方からの来訪者


デライラが魔物――オウグルに狙われた?

そんな話を聞いてしまったら、視線は吸い寄せられるようにデライラへ向いてしまう。


遺物の正面に両膝をつき、封印を続けるデライラ。広げた両手から、溢れ出る紫の光――あれは水属性の魔法色。それは緩やかな弧を描き、集束し遺物へと注がれていく。戦闘中でも淀みなく魔力を操る技術と胆力は、本当に凄い。


そんなデライラが、なぜ魔物なんかに狙われる?


「……その話、詳しく聞かせてください」



メイナード神官がゆっくりと口を開く。


「あれは四つめの――最後の封印に取り掛かった時だ。どこぞからバラバラとオウグルがやってきたんだ」


続いてアレグロ神官が補足する。


「メイナード神官、奴らが来たのは南の方からだよ」


南の方? 確か魔族や魔物が棲んでいると、レナルドに教えられたな。ただ、未開拓地の話だから確証は無い。


「アレグラ神官は、オウグルが来る所を見たんですね?」

「わたしは鳴き声を聞いてね。何かと思って南の方を見たら、オウグルの一団が飛んできたのさ」



* * *


ブラント達が合流する少し前――アレグラ視点



奇妙な声が聞こえる――古戦場南から? まだ小さな影で、よくわからないけど、確実に近づいている。


「オウグル? なんでこんな所に……」


巨鳥の魔物――オウグル。主な生息地は森林なはず。ここは古戦場。森どころかエサになるような生き物もいない。それなのになぜ?

疑問は晴れないまま、オウグルの一団が大翼を広げ、ゆるりと飛び去るのを待った――が、古戦場上空に差し掛かった時、一羽が勢いよく飛び出した。


「……っ! こっちに突っ込んでくる!?」


いや、違う。軌道をよく見ろ。わたしの後方にいるのは……メイナード神官とデライラ――マズい、封印が終わってない!


「メイナード!」

「なんだ?! ぐっ……!!」


メイナード神官がデライラの前に踊り出る。構えた大盾に鈍い衝撃音と巨鳥の叫喚が響く。湾曲した鋭爪が盾の縁を捕らえ、表面を削る――デライラには届いていない! ……間一髪だった。



「グアアッ」

「大人しくしろ」


空気が変わった。メイナード神官の低い声。細く鋭い視線に、恐怖まで感じる。

ぎらりと光る剣筋。勢いよく振り下ろされる一撃――切り裂かれた羽が舞い、巨躯が翻る。

メイナード神官は、オウグルが再び飛び立つ姿を、無言で睨みつけていた。苛立ちが伝わってくるようだ。



一時の攻防の後、上空は十数羽のオウグルが旋回し始めていた。

嫌な目だね……まるで品定めでもされているようだね。


「警戒!」


メイナード神官の指令が轟く。従者が盾を構え、黄色い光を放つ――土属性の高まりを感じる。防御魔法だな。さすがレリクターの従者。魔法の扱いにも慣れている。徐々にデライラを守る陣形が整えられてる。


でも、守るだけじゃ足りない。


「狙え!」


わたしの従者達も負けてない。洗練された動きで、矢をつがえ狙いを定める。

魔力が高まるにつれ、矢尻が白く発光する。より鋭く、より正確に得物を貫くため。


呼吸を整え、集中――まずは一体に絞って、矢を放つ。

一直線の軌道がオウグルの巨軀を貫き、甲高い断末魔が響く。


「放て!」


わたしの合図と共に、従者達が次々と矢を放つ。上空に響き渡るオウグルの叫喚。羽ばたく力を失い、低空まで落下する。

残ったオウグルは、急き立てられるように、次々と地上へ急降下して来る。


明らかに混乱している……でも何かおかしい。身の危険が迫っているのに、一羽も逃げる様子がない。


「お前達、怯むな!」

「おおっ!」


今もオウグルの攻撃は、上空を狙えるわたし達より、メイナードの方に集中している。それに最初の一羽目は、デライラだった。


「……まさか、狙いはデライラ?」


まだ憶測の域を超えないけど――


「メイナード! 狙いはデライラだ!」

「道理で勢いが増してるわけだ!」


メイナードとその従者は、デライラ近くに陣取り、四方から飛んでくるオウグルの猛攻を防いでる――でもこのままじゃ、耐えきれない。


どうする? 援護を――いや、それじゃあ遅い!

大丈夫、デライラはメイナードが守り切る。

わたし達は、わたし達ができる事をやろう。


「……あんた達、早いところ数を減らすよ!」

「はっ!」



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