表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/88

13.大穴


――古戦場 キャンプ地


古戦場に着いた頃、もうすっかり日は暮れていた。沈みかけの夕焼けを光源に、火を起こしキャンプ地を設営する。二十人近い部隊のため、小一時間かかり、本日は移動と拠点設営で終わってしまった。

夜間はレリクターの従者か護衛が、交代で見張りをすることになっている。まあ、周りには生き物の気配はないけど、念の為というやつだろう。



「――真っ暗だ」


初めての見張り。経験もないということで、俺は最初に順番が回ってきた。眠くならない内にという事だろう。


キャンプ地からさらに南方に、調査地である古戦場がある。

今はもうすっかり夜になってしまった。キャンプ地の焚き火と星の光で、かろうじて見える窪地。おそらくあの辺りが古戦場なのだろう。


「あまり覗き込まない方が良い」

「うわっ!」


少し視線を下ろした先に、いきなり現れた神官……いや、肩にかかる紫の帯――レリクターだ。フードを深く被っていて、表情どころか顔すら見えない。


「驚かせてしまってすまない。でもあの地は――見すぎない方が良い」


レリクターの語気が強くなる。不思議と説得力を感じる。何か知ってるのかな?


「……来たことがあるんですか?」

「いや、初めてだよ――ただ、嫌な魔力を感じるんだ」


フードがぐるりと動く。おそらく視線の先には、夜に染まった古戦場が見えているのだろう。釣られて見たけど、特に何も感じない。


「だから見るなと言ってる」

「いてっ」


頭に刺さる神官チョップ。理不尽である。



「カミール様! カミール様!」


キャンプ地の方から聞こえる焦りを含んだ声。レリクターも気づいたみたいだ。カミールって、この人の名前か?


「ここだよ」


カミール神官が声をあげると、神官が二人かけよってきた。おそろいのようにかぶっているフード。都市の習わしなのかな?


「カミール様! まだこんな所に……さあ、お戻りください」

「わかった、わかったよ」


心配され慕われているようだ。ん? カミール神官がこっちを向いた。


「じゃあ、また明日――ブラント」

「……っ!」


教えていないはずの俺の名前。やっぱり知っていたのか。

でも、なんだったんだろう? ふらっと来て注意しただけ。顔もよく見えなかったし、不思議なレリクターだな。



*  *  *



――翌日



「うわぁ……すごいな」


キャンプ地より南方の調査地――古戦場は、緩やかな坂を降りた先にある。そして、その中央にある真っ黒な大穴。昨日は夜だったせいもあって、大穴がある事すらわからなかったが――明るい日差しの下でも、その深淵はわからない。


「レナルド、あれは自然にできたものじゃないよな?」

「ああ、当時の戦いが、どれだけ激しかったか、わかるだろう」


大穴を中心に広がる緩やかな傾斜。所々にクレーターのようなくぼみもある。地形が変わるほどの痕跡。何をどうすればこうなるんだ?


「そういえばレナルドも嫌な魔力を感じるのか?」

「ふむ、例のカミール神官が言ってた事だな――残念ながら私にはわからない」


レナルドは古戦場の方を見ながら、肩をすくめる。


「レリクターは特化した能力があるとも聞く。カミール神官は探知能力に長けているのだろう」

「なるほど。じゃあ、レナルドが言ってた“隠蔽魔法”も感知できるのかな?」

「この距離から異変を感じる探知能力だとすれば、可能性はあるな」


良いことを聞いた。予測が当たっていれば、調査の安全性が一気に高まる。いっそのこと聞きに行こうか? いや、さすがに失礼か。



「ブラント、集合だ。行くぞ」

「あ、ああ、わかった」


考え事をしてる間に、時間が来たようだ。いよいよ調査が始まる。


「ん……」


身体がぶるりと震える。武者震いというやつかな。それとも恐れているのか……どちらにせよ、落ち着いていこう。



*  *  *



古戦場前――傾斜より手前に、5mほどの等間隔に並ぶレリクター達。その後方に従者や護衛がついている。もちろん、俺とレナルドもデライラの後ろに控えている。



「――では、始めるぞ」


ゼン神官の合図で、レリクター達が魔力を高めていく。それぞれのレリクターを中心に、白い光が半球を描く。


「これが金属性の探知魔法……」


右隣りにいるレナルドが頷く。


「そうだ。視覚的には半球だが、地中にも広がっている。これを維持するのは、容易ではない」

「さすがレリクターに選ばれるだけの魔力量ってことか……あれ、範囲がだんだん広がっていく?」


少しすると、それぞれの探知魔法は連なり、巨大な白い帯のようになる。安定した魔法発動と、それを維持する膨大な魔力量。特訓したからこそわかる、レリクターの凄さを実感する。


レリクター達はこのまま緩い傾斜を進み、古戦場――大穴の方へと向かっていく。

なかなか地味というかアナログというか。非効率のような気もするけど、一番魔力消費が少なく、取りこぼしがないそうだ。まあ、新人の俺からすると口は出せない。特に対案もないし。


キャンプ地から南進し、大穴に近づくとレリクター達は二手に分かれ、周囲を探索・調査する。

遠目からだと見えなかった大穴の全貌が見えてくる。井戸のようにぽっかりと空いているわけではなかった。大地がえぐれ、削られ、風化し、急な傾斜が底へと続いている。そう、まるで――


「……アリジゴクの巣のようだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ