10.集結
翌日――
柔らかな陽光が降り注ぎ、澄んだ空気に包まれた早朝。スカーレリア神殿の周りは、人々でごった返している。
「朝早くから、お祭り騒ぎだね」
「王都からの神官が訪れるなど、珍しいからな」
俺とレナルドは、来訪する神官達を出迎えるために神殿に呼ばれていた。人混みを通り抜け、神殿前広場に向かう。
「お二人とも、おはようございます」
「おはようございます、マテオ神官。街中の人が集まっているみたいですね」
「ええ、このような交流はめったにないですからね」
本当はレリクターの調査隊なんだけど、公にされていない。表向きには研修や他都市交流と伝わっている。これは珍しい事で、一目見ようと人だかりができている。
さらに、人が集まる所には金が集まる。目ざとい商人達は目の色を変えて商売に精を出している。
様々な思いで集まる人々を尻目に、大通りを挟んだ神殿広場は、緊張に包まれていた。
神殿を背に並び待つスカーレリアの神官達。マテオ神官を先頭に参列している自分。なんとも場違いなのではと感じてしまう。
「到着されたようですな」
ぞろりと揃う神官の団体が、神殿広場に足を踏み入れる。数人の肩には、高位神官を表す色付きの帯がある。おそらく彼らがレリクターなのだろう。その後ろには従者、いや護衛かな。総勢で十二人ほどいる。この大人数で調査に向かうのか……
「先頭は、王都ヴァイエルの神官だな」
「ええ、ゼン・パーソン様です」
レナルドの問いにすかさず答えるマテオ神官。他都市のレリクターの名前も教えてくれたけど、正直覚えきれない。
レナルド並の大男に、猫の亜人? ……あと一人はフードをかぶってて、よく見えない。
その中でも目立つのは、王都のレリクター――ゼン神官。
太陽に煌めく白銀の長髪と透き通るような白い肌。堂々とした歩みと鋭い眼光は、威厳と畏怖さえも感じる。
「ようこそ、おいでくださいました」
「これはマテオ神官、ご丁寧にありがとうございます」
マテオ神官がスカーレリア神殿の代表なんだな。姉上も高位神官だけど、やっぱり年齢だったり、性別で決まるのだろうか。
ゼン神官が挨拶を終えると、視線を巡らせ、俺の方を見て止まる。こっちに歩いてくる?……違う、レナルドの前で止まった。
「お初にお目にかかります。英雄チェンバレン様。此度はご同行いただけるようで、大変光栄です」
「あ、ああ……よろしく頼む」
ゼン神官はレナルドの前に跪き、ことさら丁寧に挨拶する。その所作は、敬意で溢れている。一方レナルドは、大分困った様子。こういうの苦手だろうからな。
「今は同行者でもある。普通に接して欲しい」
「はっ、かしこまりました」
ゼン神官がレナルドに会釈した後、俺と視線が合う。端正な顔立ちが冷ややかに見え、背筋が寒い。
さっきまでと違う表情――睨まれている?
「君がチェンバレン様のパートナーか?」
「え? あ、はい」
思わず反射的に答えてしまった。
「多少はできると伝え聞いている。だが、足手まといにだけはならんようにな」
「……気をつけます」
ゼン神官は軽く頷き、神官団の列へと戻って行った。
びっくりした。まさか声をかけられるとは思ってなかった。
確かにレナルドに比べれば、俺はまだまだ足りない――が、頭ごなしの否定とは、なかなか良い性格しているよ。
……まあ今回は、“油断するな”という忠告として受け取っておくか。




