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08.勧誘 再び



「本日の巡回、お疲れ様でした」


ここは治安所二階所長室。巡回の後、俺はレナルドと一緒に所長に呼び出されていた。


「所長、ご用はなんでしょうか」

「神殿からレリクター――調査同行のお誘いですよ」


危険な古代遺物を回収し封印する神官――レリクター。三カ月前にも誘われたけど、俺自身の実力不足を感じて断っていた。でも、あれから特訓して少しは自信がついた。今度は行ってみたい。自分を試してみたい。

レナルドの顔を見ると、軽く頷く。よし、お目付け役の了承も得た!


「ぜひ、参加させてください」


笑みを浮かべる所長。


「わかりました。再びの勧誘とは、努力した甲斐がありましたね、ブラント」

「ありがとうございます」


確かに特訓だけでなく、治安所の勤務もしっかりとやっていた。ゴーレムや狂人事件――宝玉関連の事件はなかったけど、ご近所トラブルやちょっとした事件も、レナルドと共に解決していた。

改めて言われると照れるけど、評価されるのは嬉しいな。


「では、調査場所についてお伝えしますね」

「え、なんで所長が知っているんですか?」


所長が俺の顔を見てため息をつく。なんか呆れられている気がする。


「あなたが断るとは思わなかったからですよ」

「うっ……」


相変わらず鋭いというか、俺がわかりやすいのか?


「目的地はここ南都市スカーレリアより南方にある古戦場のようです」

「……ほう?」


怪訝な顔をするレナルド。それもそのはず。古戦場とは、かの大戦――人族と魔族が争った地で、彼はその前線に立っていた。

レナルドのひやりとする視線。気にもとめず、所長は話を続ける。


「こういった戦場跡地では、未だ危険な遺物があるとされています」

「今回はその調査と遺物回収ですか?」

「そう考えた方が妥当ですね……私はここまでしか聞けませんでした。詳しくは明日、神殿で聞いてください」


レリクターは一般的には秘匿されている役職。所長といえど、詳細は知らされてなかったみたいだ。どうにか聞き出したのが調査場所、という事かな。


「ああ、そうそう。ご家族には長期出張という事で伝えておいてくださいね」

「……わかりました」



ふと神妙な表情に変わる所長。


「ブラント、レナルド。気をつけてくださいね」

「所長?」

「古戦場までは馬車で半日はかかります」

「結構かかりますね」


所長の視線が外れ、暗い表情を見せる。


「……ええ、街から遠い場所にあるというのは、それだけ危険な場所だと言えます。どうか、無理をしないように」


いつもより低い声。そして真剣な眼差しに言葉が出ない。ただ頷く事しかできず、重苦しい空気と沈黙が漂っていた。



*  *  *



翌日、神殿にて――


「……レナルド様、ブラント様。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


今日案内してくれるのは、初めて見る黒髪ロングの女神官。目にかかる前髪と、抑揚のない静かな声で、どことなく暗い印象。マテオ神官のような穏やさはない。



「ようこそ、おいでくださいました」

「お久しぶりです」

「随分と活躍されているようですね」

「あ、ありがとうございます」


にこりと柔らかな表情を見せるマテオ神官。そして、案内してくれた女神官が側に控える。今日はキャロラインはいないようだ。


「本日はレリクターの件で伺いました。ぜひとも同行させてください」

「おお! では早速詳細をお話しましょう」


マテオ神官はソファーに座るよう促しながら、詳細を話し始めた。


「今回の調査地ですが――」

「ああ、所長から聞いてます。この街の南方にある古戦場ですよね?」

「……ええ、その通りです」


なんか少し間があったな。ちょっと怖い顔のマテオ神官。所長もしかして、伝言に来た神官から、無理やり聞き出したのか? 冷や汗が止まらない。


「まったく、困った人ですね」


マテオ神官の呟きがハッキリ聞こえてしまった。所長の事かな? やぶヘビにならないよう、大人しく話を聞くことにしよう。


目的は跡地調査と戦争遺物の回収。当日朝、馬車で出発し昼頃に到着。数日ほど調査して帰還するという日程だ。


「調査への出発日ですが、一ヶ月後になります」

「結構先なんですね」

「ええ、実は参加するレリクターは、この街の者だけではありません――各地方都市と王都ヴァイエルからも、レリクターが集結します」

「相当な人数になりそうですけど」

「護衛を付けている者もいますので、ざっと15人ほどになるかと。皆が揃うまでの準備期間という所です」


俺達を入れると20人近くなるな。想像以上に大所帯で大規模。どうりで時間がかかるわけだな。


「そういえば、スカーレリアからのレリクターは、どなたでしょうか?」

「おや、まだ聞いてなかったですか?」


聞いていなかった? もしかして俺の知っている人?


「姉上ではないですよね?」

「とんでもありません……デライラ、挨拶をなさい」


苦笑いのマテオ神官が、名前を呼ぶと、側に控えていた女神官が口を開く。


「改めまして……デライラ・クラークです……よろしくお願いします」


小さめの弱々しい声に、マテオ神官がため息をつく。人見知りなのか、視線が合わない。大丈夫かな?


「クラーク?」


心底驚いた様子のレナルド。


「どうした?」

「なに、古い知り合いにもクラークがいてな……」


ハッとするデライラ。


「――多分、父です」

「なんと! 世間は狭いものだな……」


レナルドは再び驚くも、その表情にはゆっくりと影が落ちていく。

古い知り合いか……レナルドはあまり過去を語ろうとしないから、追求しない方が良いだろう。でも、過去に関連する人が同行者とは、触れる事は避けられないのか? ……まだ始まってもいないのに、不安すぎる。



いつも読んでいただきありがとうございます!

次のお話ですが、幕間を一本挟みます。

視点はブラントではありません。


レリクター同行を決めたブラント達。

周囲の人たちはどう感じているのか……

楽しんでいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします!

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