03.成長
明日も更新予定です。
よろしくお願いします!
「もう一つ、よろしいですか?」
「え? あ、はい」
キャロラインの声掛けに、びくりとする。少しぼーっとして、反射的に返事してしまった。
「お二人の実力を見込んで、神殿からのお願いです。【レリクター】に同行してもらえませんか?」
「【レリクター】?」
また知らない用語が出てきた。
“ほぉ”とだけ呟くレナルドの声。驚いている様子だけど、どことなく嬉しそう?
「【レリクター】とは、各地にある【遺物】の調査、回収する神官の事です」
【遺物】――強大な魔力を内包する魔法具の総称。宝玉もその一つだとか。神殿はそんなものを探しているの? 大丈夫なのか?
「……遺物を回収する目的はなんですか?」
キャロラインは一呼吸置き、俺を真っ直ぐ見つめる。そして、ゆっくりと口を開いた。
「封印・破壊します」
凛とした声が、重く響いた。それは姉ではない、高位神官としての覚悟を感じさせるようだ。
「遺物には恵みを与えてくれるものもあります。しかし、存在するだけで危険なものもあります。悪用されないため、封印・破壊するのが、神殿の――私の使命なのです」
キャロラインの揺るがない意思に気圧されそうになる。強い人だと思う。それに遺物回収の理由も妥当だと思う。扱いに慣れている専門家に託した方がいいだろう。
でも、今の俺にはできないな。
「なるほど。遺物回収の必要性がわかりました」
「では?」
「いえ折角ですが、お断りさせてください」
「……理由を聞いても?」
「昨日の事件で実力不足を痛感しました」
「何かあったのですか?」
「負傷しました。レナルドに助けてもらいながら命拾いしたというのが、僕の率直な感想です」
「……」
「それに遺物回収先は国外の場合もありますよね? 今の僕には荷が重すぎます」
ため息をつき、残念そうな表情のキャロライン……胸が痛む。
「……残念ですが、あなたの意思を尊重しましょう」
「ありがとうございます」
一呼吸置き、キャロラインの視線が外れる。
「チェンバレン様は、どうでしょう」
「私は彼のお目付け役だ。彼に従う」
「……わかりました」
ふわりと柔らかな笑顔を見せるキャロライン。思わずドキッとしてしまった。
「成長しましたね、ブラント。少し前までのあなたなら、二つ返事で受けていたでしょうね」
「姉上……」
“ブラント”の性格を考えると、否定できない。というか、ジェイムズといい、からかわれっぱなしな気がするのは、気のせいだろうか。
これで報告は全てのようなので、レナルドと共に神殿を後にする。その後一旦治安所に戻り、神殿であった事を所長に報告する。
* * *
「――そうですか。何にせよ、宝玉が無事処理された事は安心しました」
ため息を一つつく所長。多少顔のこわばりがとれているように見える。
「しかしあなた達がレリクターに誘われるとは」
「自分でも驚いています」
「断ったというのも驚きですが、あなたの実力が伴った時はどうします?」
「それは……」
正直参加したい。遺物に分類される宝玉。それは、俺が元の世界に戻るためにも、必要になるはずなんだ。まだ謎が多いけど、知るためにも探さなきゃならない。
ふと所長の表情が和らいだ。
「同行すれば良いではないですか」
「え?」
「“行きたい”と、顔に書いてますよ」
軽い笑い声が所長室に響く。
「でも治安所の仕事が……」
「調整するので構いませんよ。ただ、報告はお願いしますね」
「わかりました。ありがとうございます」
所長がゆっくりと頷く。彼の優しさがじんわりと胸に伝わる。
報告も終わりと今後の方針も決まった所で、今日の仕事の話になった。
「今日は巡回をお願いします。特に事件もないので、そのまま直帰して構いません」
「それは、例の狂人――傷害事件も無いという事ですか?」
「ええ、今の所ありません」
“ふむ”と、レナルドが声を漏らす。彼も事件について気になっていたようだ。
「……わかりました、それでは巡回に向かいます」
所長室を出てから、レナルドに声をかける。
「レナルド、やっぱ宝玉が狂人化の原因だったのかな」
「その可能性は高い。ただ、昨日の今日だ。結論づけるのは早いだろう」
「それもそうか」
「ちょうどこれから巡回だ。街の者達から話は聞けるだろう」
「確かに」
逸る気持ちを抑えつつも、足早に街へと向かう。




