05.繋がる記憶
騒然とする治安所。慌てる職員。戸惑う市民。群がる野次馬。
デーヴィッドの視線が、狂人からベラドンナへゆっくりと移る。
「……ベラドンナ姉さん、やりすぎですって」
「あら、あたしったら! つい昔のクセがでちゃったわ!」
「まあ、おかげで助かりましたけどね。さすが”金色の飛節”」
「いやだもう!」
「ぶへっ!」
ベラドンナの張り手でふっ飛ばされるデーヴィッド。一体何者なんだ、ベラドンナって。
「ありがとうございます、おかげで助かりました」
「ホント無事でよかったわ〜」
ベラドンナの表情が緩みほころぶ。
ところで“金色の飛節”というのは二つ名か? すごく気になるけど、聞かない方が身のためか。
「ったく、手間かけさせんじゃねぇよ」
顔を腫らしたデーヴィッド。文句を言いながらも狂人を引っ掴み、軽々と持ち上げた。
狂人は完全に伸びているけど、無傷のようだ。どんだけタフなんだよ。
不安と恐怖と興奮に塗れる人々
声かけ、案内、誘導する職員
連行される狂人
見たことある光景ーーこれはブラントの記憶
ぼんやりと浮かぶ記憶。住宅と人々。
剣を持った男が一人。突如狂ったように暴れ始め、恐怖に塗られた叫び声が響く。混乱の中、飛び出す“ブラント”。狂人の横腹に蹴りを入れる。が、“ブラント”の腹に深々と剣が突き刺さっていた。
「これは……ブラントの記憶」
今の出来事とまるで同じだ。狂った男が暴れ、蹴られて倒される。
でも、さっき蹴られたのはたまたまだ。ベラドンナが近くにいなければ、俺は負傷していた。同じなのは……暴れる狂人?
ふと、ベラドンナの言葉を思い出すーー
『暴行事件みたいなの。最近多いのよね』
『お話ができないくらい、叫んで暴れてるようなの』
今起きた事と似ている……でも、もうちょっと詳しい情報が欲しい。
「ベラドンナさん、朝言ってた暴行事件の犯人は、あの男のような感じですか?」
「ええ、そうなの! 見たでしょ? お話なんて、できやしない」
「……もしかして、僕が刺された事件の犯人も、同じような感じですか?」
言葉に詰まるベラドンナ。少しするとため息を一つ吐き、口を開いた。
「……そうね、同じ様な感じがするわね」
なるほど。暴れる狂人による事件は、少し前から続いているのか。
人を狂わせる何かがあるとして、誰が、何のために……
待てよ、そういえばチェイスも似たような事をーー
「ブラントちゃん、どうしたの? やっぱりケガしちゃった?」
「え? ああ、考え事をしてました」
「んも〜! 黙っちゃうから心配しちゃったじゃない!」
「すみません、ありがとうございます」
気がつけば狂った男はいなくなり、治安所には落ち着きが少しずつ戻っているようだ。しかし、不穏さは拭えきれずにいた。
どうでも良いけどベラドンナ、モーって言った?




