幕間:まどろみの中で
ああ、眠い。
夢と現実が溶け合う。
半分寝ている状態、起きかけの感覚。
昨夜はレナルドとお互いの事を話した。結構遅くまで喋ってたから、そのまま泊めてもらった。というか、泊めさせられたというか。強引なところがある。
そろそろ起きようか。会社……じゃない、治安所に……いや、その前に家に帰った方がいいだろう。アルバートに何を言われる事やら。
でもまだ眠い。もう少し眠れそうだ……ん? 声が聞こえる。
「お寝坊さんね」
「ええ、お寝坊さんだわ」
軽妙な笑い。声を抑えてるのか、何を話しているのかは、はっきり聞こえない。
眠気がだんだん晴れ、まぶたが開く。
「あら、起きたのね」
「ええ、目が覚めたようね」
眼の前に子供の女の子が二人いる。なぜかメイドさんのような格好をしている。
「おはよう、お寝坊さん」
「朝ごはんの時間よ、お寝坊さん」
女の子たちは、俺の前を飛び回っている。比喩ではない。本当に宙に浮き、気ままに移動している。背中には半透明の大小の羽が二対。まるで妖精のような……
種族ーー妖精
そのままだった……でも、妖精のメイドさん? 家事できるの?
「こっちよ、お寝坊さん」
「そうよ、はやくしなさい」
妖精二人に連れられるように、階段を降り食堂に入っていく。
「ようやく起きたか。いつまでも起きてこないから、呼びに行かせたのだが」
「でも、ぜんぜん起きないの」
「ええ、ぐっすりだったわ」
「そうか、よほど疲れていたんだな」
レナルドは既に起き、テーブルについていたようだ。
「……昨夜は色々あったからな」
「そうだな。だが、よく眠れたようで、何よりだ」
確かにぐっすりだった。まだ眠れたはずだけどーー
「それより、この子達はなんなんだ?」
「見ての通りメイドだが?」
確かにメイド服は着ているけど、違和感しかない。
「この子じゃないわ、わたしはクレアよ」
「そうよ、わたしはセイディよ」
「あ、俺はブラントです」
自己紹介をされたので、反射的に名前を言ってしまった。
きょとんとする妖精の二人。ひそひそ喋り合い、くすくす笑い合い、俺の周りを飛び回っている。すっごい自由。
もしかして、昨日の夜、レナルドが”今の時間は寝ている”と言ってた家の者って、この子達の事か?
「随分と懐かれたようだな」
「そうなんですか?」
“こっちよ”と、クレアとセイディに促されるまま席につく。既に朝食が用意されていた。
朝から肉だ。もうちょっと軽めのものがよかったなと思う。お茶漬けとかさ……無理か。
「遠慮せず食べてくれ」
まあ、今日も思いつくだけでも予定はいっぱいだ。朝もちゃんと食べないとな。ナイフとフォークをしっかりと掴む。
ローストビーフのような薄切りの肉から口に入れる。ほどよい硬さ。心地よい噛み応えを感じながら、肉の旨味とソースの香りが鼻腔を抜ける。うまい。付け合せの野菜と、ハーブのきいたイモともよく合う。あとはバターロールのようなパン。香ばしい小麦の香りに誘われて、気がつけば口に入れていた。
「気に入ってくれたようで、なによりだ」
ふと、レナルドの食事風景が目に入った。
肉を切り分け口元に運ぶ。晶精は人間のような口がない。どうやって食べるのだろうと思っていたら、口元が淡く光り、肉が徐々に消えていった。
「それは、どうなっているんだ?」
「それ、とは?」
「いや、レナルドが肉を食べる時、淡く光ったと思ったら、消えたから……」
「……ああ、そういうことか」
聞きづらい事を聞いた気がする。まだ寝ぼけているようだ。
レナルドは少し考えるように口を開いた。
「詳しくはわからないな」
「わからないのか」
「では聞くが、君は肉を食べた後、どうなるのか詳細を説明できるか?」
「う……」
「つまり、そういう事だ」
レナルドは軽く顎を上げながら、やや見下ろすように俺を見ている。いわゆる”ドヤ顔”だな。
ふん、おいしい朝食で気分転換だ。




