20.相棒
全部言ってしまった。
この世界の人間では無いこと。
元の世界で死に目にあったこと。
気がつけば、ブラント・シュリーブとして目覚めていたこと。
勢いにまかせて話してしまった。
「信じてもらえますか?」
レナルドの反応を見ずに、聞いてしまった。空気が重くなる。
「……そうだな。君に対する違和感の説明にはなるが、にわかに信じがたい話ではあるな」
レナルドは答えつつ、考え込むように視線を落とす。
「やっぱり……そう簡単には信じられないですよね」
「全く信じていないわけではない。少し情報の整理をしたい」
俺が気落ちした事に気づいたのか、レナルドは慌てたように口を開く。
「致死的状況をきっかけとした、魂の転生か。確かに突飛な話だ。だが、こちらの世界ではーーあり得ない話ではない」
「と言うと?」
「"魂の転生"だが……心当たりがある」
「……はい?」
レナルドは顎に手を当て、記憶を探るように話を続ける。
「遥か昔。神話の時代、"魂に干渉する秘術"があったとされている」
神話?魂に干渉?
思考が止まりそうになる。それでも、ゆっくりと理解が追いつく。
そんな術があるならーー
「僕はその秘術で転生したと?」
「おそらく」
レナルドは重々しく頷きながら、秘術について語る。
「ただ、秘術には神々が創ったとされる秘宝……宝玉が必要だ」
つい最近の記憶。
薄暗い洞窟。
青い渦となった魔力の奔流。
溶解するゴーレム。
赤く煌めく丸い宝石。
「……宝玉って、あの洞窟で見つけた"お宝"ですよね?」
「ああ、そうだ」
「どこにでもあるものなんですか?」
「いや、そうそう見つかるものではない。それに発見次第、封印か処分されている」
「……そうですか」
神殿でのやり取りを思い出す。半壊し魔力を失った宝玉でさえも、危険物として処理されていた。
それにしても、神様が創ったお宝に、大昔の秘術か。この世界に来た方法がわかれば、元の世界に戻れる可能性があったのに、どうも簡単にはいかないようだ。
「仮に秘術が再現できたとして、君はどうしたい?」
「えっと、それは」
凛と響くレナルドの問い。
心の内を見透かされたようで、答えに戸惑う。
でも、本心は決まっている。
「……帰りたいです。元の世界に」
「そうか」
レナルドはどこか寂しげな表情を浮かべると、一呼吸置き話を続ける。
「宝玉に関しては、手がかりがあるかもしれない。チェイス氏たちに"お宝"の情報を流した人物がいただろう」
「……あ」
チェイスが言ってたな。お宝の情報はリーダーが持ってきたと。確か名前はクロードだった。
「情報を得たというクロード氏は既に亡くなっているが、クロード氏の自宅など調べれば、何かわかるかもしれない」
可能性は高くはないけど、やってみる価値はある。でも、神話時代の秘術は……
「秘術については、大都市の図書館か神殿であれば、情報の一端くらいは見つかるだろう」
ほんのわずかの可能性かもしれないけど、帰れるかもしれない。
ただ、気になる事がある。
「……レナルド、協力してくれるんですか?」
「仕方ないだろう。私は君のお目付け役だ」
どこか照れ隠しのような物言いだった。
「ところで、いつまで他人行儀なんだ?」
「はい?」
「お互いに秘密を打ち明けた同士ではないか」
「……」
「それに君の事を相棒と評価したのは、本心だ」
寄せられる信頼。
胸が高鳴る。
照れと嬉しさが入り混じる。
この思いは信じて良い。
この思いに応えたい。
「……わかった、レナルド」
「よし、それでいい」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
このお話で一区切り。第一章が完結します。
転生の手がかりとなる《秘術》と《宝玉》
相棒となったレナルドという存在
果たして主人公は、元の世界に帰る事ができるのか?
今後始まる第二章も読んでいただけると、嬉しいです!
引き続き、よろしくお願いします!




