17.発見
「あれは人でしょうか」
「……」
レナルドは唖然としている。これは普通の事ではないらしい。それもそのはず、ゴーレムだった土くれから、人間の男性が出てきた。
「……息はあるようですが、意識は無いですね」
「回復薬は持ってるか?」
「え、回復薬ですか?」
そんなゲームみたいな便利アイテムなんてあるの? もっと早く教えて欲しかった。
俺が回復薬を持って無い事を察したのか、レナルドは多少呆れた顔をしながら、"仕方ない"と呟いた。腰に下げていた小さなバッグから何か取り出し、握りつぶした。淡い光がレナルドを包み込む。
「なんですか、それ」
「魔力の回復薬だ。先ほどの戦闘で、それなりに消費したからな」
そういえば、もの凄いものを見た気がする。
視界を明るくしたり、土をぽこっと出す魔法とは規模が違う青い魔法。宙に浮いてたけど、あれも魔法かな?
「とりあえず、応急処置程度でいいだろう」
レナルドはそう言うと、手のひらを男性に向けた。ゆっくりと白い光が放たれ、男性を包み込んだ。
これは回復魔法? 攻撃から補助まで、レナルド凄すぎない?
「レナルドは回復までできるんですか?」
「ああ」
「すごいですね」
「それなりに経験は積んでいるからな」
これ以上は聞かない方がいいかな? なんと言っても今日が初対面だし。
それよりも確認しておく事がある。
「この人ってもしかすると」
「"彼"で間違いないだろう」
確証はない。でも状況的にビリー・ウォーカーではないかと思う。無事でいてくれてよかったよ。ただ、もう一つ気になる事がある。
「なんでゴーレムから出てきたんでしょうか」
「推測だが、"宝玉"のせいだろう」
「宝玉……あの赤い宝石の事ですか?」
「そうだ」
「どういった物なんです?」
「簡単に言えばとてつもない程の魔力を有した、"器"だ」
「器……余計わからなくなってきたんですけど」
「色々と謂れがある代物だ。まあ、"お宝"には間違いない」
「なるほど?」
「詳しくは"街に戻ってから"だ」
レナルドはそう言うと、ゴーレムだった残骸から宝玉の欠片を取り出し回収しすると、仕事は終わったと言わんばかりに、来た道を戻ろうとする
「この人はどうします?」
レナルドは首を振るだけで拒否の意を示した。そういえば肉体労働は苦手とか言ってたな。仕方ない、俺が運ぶしかないか。
「おお、あんたら、無事だったか!」
洞窟の入口付近にチェイスがいた。てっきり洞窟の外にいるかと思った。
チェイスは背負っている男性に気づいたのか、覗き込んでくる。
「おいおい、そいつ、ビリーじゃねぇか!」
「やっぱりそうなんですね」
「生きてるんだよな?」
「ええ、レナルドが応急処置をしてくれました。まあ、憔悴しているようですけど」
「そうか、そうか……よかった」
安心したのかチェイスの顔が緩んだけど、すぐに眉間にシワが寄った。
「でも、どこにいたんだ?」
どう答えたものか。状況だけで考えると、ゴーレム=ビリーになってしまう。多分あの宝玉が原因だけど、どうであれ、結果的にビリーが仲間二人を殺した事になるんじゃないか。悩んでいるとレナルドが一歩踏み出し答えた。
「ゴーレム討伐後、洞窟の奥に倒れていた所を発見し保護した」
「そうか、それなら良い…… 俺はてっきり」
「そろそろ良いか? 応急処置程度だと言ったはずだ。早急に街に戻った方が良い」
「そ、そうだな。アンバーも待ってるしな」
チェイスは納得したのか、洞窟の出口へと体を向ける。レナルドはちらりと俺に視線を合わせ、頷いた。余計な事は言わない方がいいって事かな。
その後森を抜け、馬車で待機していたアンバーと合流。
「あんた達! それに、ビリーかい? ……良かった、生きてたんだね」
アンバーの顔がほのかに赤みを帯び、涙で濡れる。チェイスがアンバーの肩に手を置き、何か伝えているようだったけど、よく聞こえなかった。安堵に濡れる声だけが、月夜に響いていた。




