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14.魔物棲まう森


満腹亭を出て、西の洞窟に向かうべく移動手段を準備する事になった。レナルドが手配してくれているようだ。それまでに西の洞窟について情報収集できないだろうか。

トレジャーハンターの二人を見ると、アンバーは青ざめた顔をしている。案内だけで精一杯なんだろう。一方、チェイスは比較的大丈夫そうな顔をしている。仕事と割り切っているようだ。チェイスに話しかけてみようか。


「西の洞窟なんですが、危険な場所なんですか?」

「……いや、昔はそこらの奴でも採取に出てたりしてた」

「採取?」

「西の洞窟の周りには森があってな。キノコやら、木の実やらな」

「では、魔物が出るようになったのは最近ですか?」

「ああ、それからは狩場になってる」

「狩場……魔物素材という事ですか?」

「そうだ。毛皮、骨、牙、肉。なかなかの稼ぎになる」


うっ……肉? 毛皮とか骨とかは、元の世界でも衣類や装飾品で使われてるから、あまり違和感はないけど、肉って食用か? これ以上聞かない方が良さそうだ。ちょうどレナルドが戻ってきた。


馬車に乗るとあっという間だった。人工的な街並みから平野へ。人の声は遠ざかり、馬の蹴り足と車輪の振動が大きく聞こえる。

馬車にゆられること一時間は過ぎただろう頃、幌から外を見ると、日はすっかり落ちていた。月明かりだけが辺りを照らしている。その一方、遠目に見える黒黒とした森が、徐々に近づいてくる。



「……止めてくれ。この辺りだ」


チェイスとアンバーが馬車を降り、小ぶりのランタンに火を灯す。余計な所を照らさないためのサイズなんだろうけど、やけに明るく見えた。


「この先だな」


チェイスが指差す方には、うっそうとした森。月夜に照らされるシチュエーションも相まって、より一層不気味に感じる。


「ご苦労。約束通り、ここまでだな」

「……俺も行って良いか?」

「ほう?」


覚悟を決めた顔つきのチェイス。

”あんた!”と、悲鳴にも似たアンバーの声。


「無茶だよ!」

「なに、ちょっと見てくるだけだ」

「でも!……」

「てめぇの命欲しさに、仲間、見捨てちまったんだ。せめて弔いくらいはしないとな」

「そうだけど……あたしは……」

「お前の分も弔って来てやる。だから、ここで待ってろ」

「……わかった、待ってる」

「ああ!」


おい待てやめろ。フラグでしかないだろう。嫌な予感しかしない。いっそのこと、二人を魔法の弾で拘束してやろうか?

レナルドは感心しているような顔してるけど、この展開はまずい。そんな事を考えていると、レナルドに呼ばれた。


「ブラント、こっちだ」

「なんですか?」

「このままでは視界が悪いからな」


レナルドはおもむろに人差し指を立て、くるくると回した。指の周りが徐々に淡く光ると、白い光の塊が飛び出し、俺とレナルド、チェイスの周りを照らしていく。急な出来事に呆けていると視界が明るくなっていく。


「おお…… 精霊魔法ですか?」

「そうだ。ランタンでもいいが、できるだけ両手はあけておきたいからな」


これは便利だ。ただ、夜の街灯程度の明るさだ。数メートル先は見えにくい。気をつけて進むしかないな。

森の中に歩を進めると、葉や雑草の青臭さに混じる腐敗臭が漂ってきた。同時に目についたのは、放置されている狼の死骸。刃物で切られたような傷と、赤黒く染まった毛皮。自然死ではない事は一目瞭然だった。生気を失った白目は、こちらを睨んでいるようにも見える。


「……随分と殺したんだな」

「向かってくるコイツらが悪い」


事も無げに言い放つチェイスに違和感しかなかった。というのも、俺から見ると狼の死骸は大型犬にしか見えない。人類最古の友やペットという認識の方が強い。こういう所からしても、この世界の価値観は違うんだろうなと、再認識させられる。そんな事を考えていると、森の終わりが見えてきた。


明日も2話更新予定です!

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