13.遇の音も出ない
「案内? ……まさか、西の洞窟にか?」
「近くまでで良い。御者はこちらで手配する」
「冗談じゃねぇぜ!」
「礼はするぞ。これから物入りなんじゃないか?」
「!…… ちっ ……まあ、近くまでなら、なんとか」
チェイスは迷いながら、確認するかのようにアンバーに目を合わせた。アンバーも合意したのか頷き合い、案内してくれるようだ。
いや、ちょっと待て。これから西の洞窟に行く事になってないか? 狼よりヤバい”何か”がいるんじゃないか?
「案内って、まさか行く気ですか?」
「ああ、西の洞窟はこの街からそう遠くない。近場に未確認の脅威があるのは危険だ」
「二人だけで行く方が危険ですよ!」
「狼はもういないぞ?」
「そっちじゃないですよ!」
「……なにも討伐するわけではない。状況を確認するだけだ」
ため息をつくレナルド。”しょうがない奴だ”とでも言いたげだな。ため息をつきたいのはこっちだよ。
「未確認の脅威は噂程度の情報でしかないが、放置はできない。かといって治安所の人員を割いた大規模な調査ができる情報量ではない。”事件”にするためには、確かな情報が必要だ」
治安所のやり方や裁量があるのだろう。そこら辺はレナルドは詳しいはずだから、任せていい。
「それにビリー氏の生死は今のところ不明だ。もしかしたら生きているかもしれない。であるならば、早い方が良い」
確かにそうだ。トレジャーハンターの二人は状況から判断し、ビリーを死んだと認識しているが、死んだ所を見たわけじゃない。
「仮に亡くなっていたとしても、遺留品などあれば、キャシー氏もある程度納得できるのではないだろうか」
最悪の事態だった場合、キャシーにどうやって伝えようか悩んでいた。遺品があれば、多少は説明しやすくなるか……
「何も無い状態で結果だけを伝えたら、彼女だったら一人で西の洞窟に出向く事もあり得るのではないか」
「うっ……」
言葉に詰まる。それはありそう。なんたって前例がある。しかもついさっきの事だ。
「以上、”近隣の脅威”と”行方不明者の捜索”の二点から、これから西の洞窟へと向かう」
反論したいけどできずにいると、レナルドがニヤリと笑った気がした。
「よし、決まりだな」
どこか機嫌の良いレナルドは、”案内を頼むぞ”とチェイスに言い、満腹亭を後にした。
今日は夜にもう1話更新予定です!




