12.行方不明者の行方
「俺はチェイス、こっちはアンバーだ」
「申し遅れました。僕はブラントと、レナルドです」
レナルドを名前で紹介しても良いか悩んだが、本人が頷いていたのでそのまま紹介した。
「それで、ビリーの話だったな」
「そうです。何があったんですか?」
「三日前の話だ。クロード、ウチのリーダーがある情報を持ってきた」
「情報とは、"お宝"の事ですか?」
「ああ、そうだ」
「誰から聞いた情報なんですか?」
「クロードだけが知ってる」
「……その"お宝"の出所というのは」
「さあな、金持ちの隠し財産とか、古代の遺産とかはっきりしねぇな」
怪しさ満点の話だけど、お宝の情報とやらは大体がこんな感じらしい。そのせいか、誰も拒否する事も、疑う事もなかったようだ。
「お宝の場所はどこだったんですか?」
「ここから西にある洞窟だ」
"西の洞窟"に心当たりがあったのか、レナルドが反応する。
「そこは魔物の住処になっているはずだが」
「ああ、そうだ」
事も無げに言い放つチェイス。そんな軽い話なのか?
「それで魔物にやられてしまったと?」
「いや、魔物は大した事はなかった。飢えた狼がせいぜいだしな」
魔物とは狼だったのか。狼か。……狼? 狼がせいぜい? 元の世界の知識で言えば、群れをなし統率の取れた狩りをする獣だ。それが腹を空かせて襲ってくるのは、結構大事に思えるんだけど……ちらりとレナルドを見ると、驚いたり恐怖を感じている様子はない。
「レナルドも狼だったら対処可能ですか?」
「数と場所によるが、狼程度なら造作もない」
トレジャーハンターはともかく、お貴族様が逞しすぎるだろう。そんなに慣れているの? など考えていると、レナルドは首を振りながら諭すように続けた。
「ブラント、この件の問題はそこではない。狼以上の脅威があったという事だ」
「……あ」
”その通りよ”と、アンバーが話を続ける。
「狼共を追っ払った後、手分けして探したんだ。そしたらビリーが見つけたみたいでね」
「ビリーさんが?」
「ええ、"お宝だ"って叫んでたわ……」
本当にあったんだ、お宝。でも、なんだ? アンバーの様子がおかしい。
「その直後に大きな音がしたの」
「大きな音?」
「最初は何か爆発したのかと思ったわ」
「でも違ったと」
「ええ、振り向くと……大きな、"何か"がいたの」
思い出す事を拒否するかのように、目をつむり手を握り込むアンバー。
この先を聞く事をためらう……それでも聞くしかない。
「……何かってなんです?」
「わからない……でも、クロードが踏みつぶされていて……ち、血溜まりになって……」
潰された? 大きな"何か"に? それが狼以上の脅威という事か?
「メイジーの声が、聞こえてきて……痛い、痛いって」
これで二人目。でも足りない。確かめなければいけない人物がいる。
「……ビリーさんは?」
「そこにはいなかった。でも、でも……」
アンバーは当時の鮮明な記憶がフラッシュバックしたのか、自分の体を抱えるようにし、震え、怯え、そこから先は話せなくなってしまった。
見かねたのかチェイスが続きを話した。
「多分死んでるだろうよ」
「確認はしてないんですよね?」
「あんな状況でのんきに確認なんかできるかよ! 逃げるのがやっとだ!」
テーブルを打つ拳
跳ねる食器
空のグラスが転がる
一瞬の静寂
怒鳴られてしまった。無遠慮が過ぎたな。"すみません"と、謝ると男性はバツの悪そうな顔をしながら、うなずいた。
二人の話だけで判断すれば、ビリーは亡くなっている可能性が高い気がする。キャシーにどうやって伝えたものかと考えていると、レナルドがチェイスに話しかける。
「案内はできるか?」




