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01.夢と現実


俺は御剣誠司。御大層な名前のせいか、子供の頃は正義感に溢れた良い子だった。将来は困っている人を助けられる人になりたいと思っていた。


「へたれのお前には無理だって」


幼なじみというか、腐れ縁のあいつにはよく馬鹿にされてたけど、へこたれず自分なりに努力を重ねていった。


しかし、現実はそう甘くない。平凡な地頭と平凡なコミュ力。やっとのことでもらった内定。誰かを助けるどころか、自分の事だけで精一杯だったーー


ーーはずなんだが、何を考えていたのか、いや、何も考えていなかったのだろう。


俺は今、刃物を持った狂人の目の前に飛び出した。


既視感。そうそう、朝のニュースでよく見る光景だ。


俯瞰で撮影された現場

取り押さえられる犯人

惨状を物語るような血痕

暴れる狂人


今自分がいる国で発生した事件なのに他人事な感覚。いや、距離は関係無いか。たとえ近所で起きたとしても、家を出たら忘れてるだろう。


俺は今、その現場に直面している。


「あれ? 何やってんだ、俺」


男の手に握られていた刃物が、俺の腹に刺さる。上着に抵抗されるも、容赦なくたるんだ腹を裂き、刃先は内臓に達した。


どろりと赤く染まるワイシャツ。

生臭い鉄の臭い。

滴る血液。


熱い、痛い、怖い。


遮るように背後から聞こえる女性の悲鳴。


「ああ、そうか。人助けしたかったんだ」


自分の行動に納得した途端、力なく倒れた。背後にいた、よく見た顔が視界に入る。子どもの頃から見知った顔が歪んでいる。


「なんでへたれのあんたが……」


よく言われていた悪態のはずだけど、悲壮感や焦燥感を帯びている。なんて顔してんだよ。

激しい痛みを感じつつも、力は抜けていき、眠りに入るように意識が薄れていった。




ほう、これは面白い魂だ

どこから迷い込んだのか

ただ還すだけではつまらんな

ちょうど良い器がある

こちらに移すのも一興か


どれ、一仕事してみようか

異なる世界より迷いし魂を


永久の楽土から


偽りの世界へ




優しい声が聞こえた

穏やかな女性の声

内容はよく覚えてないけど

俺に語りかけていたようだった



気がつくと目の前には見たことがない天井、というより天蓋があった。


「は? どこだここ?」


体全体を包み込むかのように、まふっと柔らかなベッドに寝ていた。


「って、腹は?!」


刺されたはずの腹を確認すべく飛び起き、見覚えのないもっふもふの布団を剥ぎ取った。腹には縫合された痕が残っているが、色々飛び出していないようだ。しかし、気になる事がある。


「俺の腹、こんなに引き締まってたか?」


アラサーになれば代謝も落ち、十代の頃のように体型の維持は困難を極める。どうにかしようと、どうにもできなかった浮袋のような脂肪はなく、適度に絞られた肉体があった。


「どういう事?」


状況を確認すべく、のそりとベッドから出て部屋の中を伺う。周りを見渡すと高そうな調度品や家具。海外の金持ちが住んでそうな部屋だが、時代がかなり古い。まるで中世貴族の部屋のようだ。


「どこだよ、ここ」


俺の部屋ではない事は確実だし、病院というわけでもない。そもそもこんな歴史的価値のありそうな部屋に心当たりなどない。誰かに連れられた? 目的は? 怪我も治してくれた? さっぱりわからん。

まあ、怪我を治してくれたのであれば、お礼をしたい気持ちはある。でも、何か壊す前にさっさと帰りたい。

ベッドを降り、部屋から出ようとした時、ふと、華美な装飾に縁取られた鏡が目に入った。ベッド、天蓋、まふっとしているだろう寝具、そこに映り込む人物。


「ん……?」


鏡に映るブロンド碧眼のイケメン。自分が動くように鏡の中のイケメンも動いている。


「は? これが……俺? 腹の手術のついでに全身改造でもされたのか?」


頭も心もパニックになりながら、色々と顔をいじったり体を動かしてみる。鏡に映る人物は、やっぱり自分で間違いないようだ。


「……一体どうなってるんだ?」



読んでいただきありがとうございます!

プロローグは今日中に一気に投稿しますので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!

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