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「はっ!?」

 僕の絶望に反して慌てた様子の松にぃさん。どうやら消える魔球が使えるわけではないらしい。

「とった!」

 いつの間にそこにいたのか、松にぃさんの後ろで小助がサッカーボールを抱えて立っていた。

「マッジか! ナイスだ小助!」

「嘘だろ……完全に死角から奪われた!? ……この俺が!?」

 兄さんが小助を抱えてグルグル回る。松にぃさんはその場でうなだれている。小助の気配を消して物を取る能力に関しては他の追随を許さない。僕も何度隣から菓子を奪われたことか。

「小助、良くやりましたね」

 僕は褒めて欲しそうに目をキラキラと輝かせる小助の頭を撫でると、サッカーボールに張り付いたポチ袋を剥がす。中にはやはり一文字だけ『き』と書かれていた。


「これで全部揃ったか?」

「うん」

 僕らはそれぞれ持っていた紙を取り出す。『あ』『ち』『き』の三文字。

「あちき? 昔の一人称みてぇだな」

「いや、何かしらの法則とかが……あ!」

 僕は急いで暗号の紙を取り出す。

「そっか……そっか!」

 声から喜びが漏れる。

「分かったのか?」

「二人の暗号の紙も出して!」

 暗号文が書かれた三枚の紙には、暗号の他にも書かれたものがある。飴玉に、本、野球ボール。物自体は重要ではない。その描かれた個数が重要なのだ。

「飴玉は一つ、本は三冊、ボールは二つ。この個数の順番に並べ替えれば」

「あ、き、ち……空き地!」

 僕らにとって空き地と言われれば一つしか思い付かない。いつも外で遊ぶ第一候補、家の前にある空き地だ。


 僕らはうなだれたままの松にぃさんを置いて空き地に向かった。時間は夕方に差し掛かっている。夕方のチャイムがそろそろ鳴る時間だ。

「お、来た来た」

 夕陽に照らされた空き地でおじさんが僕らを手招く。

「暗号解読おめでとう、この宝箱を開けてみな」

 おじさんが横にズレると宝物が現れた。抱えられるほど大きく、人ひとりくらいなら入れそうだ。僕らは三人一緒に宝箱に手をかけた。

「せーので、開けるぞ」

「せーの!」

 サッカーボールに、新作漫画、菓子の詰め合わせ。中に入っていたのは、僕たちの欲しかったものだった。

「これ! 欲しかったやつです!」

「おかし!」

「っしゃ! サッカーボール!」

「おう! 良かったな」

 おじさんは笑顔で僕ロの頭を三人順番に撫でた。

「おい! 早速遊ぼうぜ!」

 兄さんは早速、サッカーボールを取り出して僕を呼ぶ、すでに小助は兄さんとパス回しをして遊んでいる。

「おじさん」

「なんだ?」

「兄弟は仲が悪いって言ったこと、訂正します。――少なくとも、僕たちは例外みたいです」

「早く来いよ!」

「今行きます!」

 夕方のチャイムが鳴る。僕は手を振って待つ兄さんたちの元へ走った。

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