31 ねえ、どこに連れて行くつもり?
ラーナリー郊外 ーエミル・D・アサネー
なんてこった。家族がいなくなった上に宿無しかよぉ。まいったなぁ。あぁ・・でもまずはじいちゃん達の行方だよな・・・。まぁじいちゃん達のことだ。大丈夫とは思うけれど・・・。
俺達はとりあえず、ラーナリーの中心部の方へ歩きだしていた。
「ねぇエミル。あんなにたくさんの刺客に囲まれて火をつけられてどうやって突破したの?」
マヤがクリクリの大きな目近づけてくる。
「うん。昼間に狩った雷溶獣で作った魂封印が結構あったろ?」
「ちょっと、マヤくっつきすぎ!」
マヤとルシーナがじゃれてんな。さっきまであんなに怒ってたのに。
「あぁ、でもそれをどうしたの?・・とと・・ちょっとルシーナ引っ張ると痛い!」
「うん。それをな、矢に貼って刺客が張っている窓に向けて撃ったんだ。」
「でも、正確に狙えないじゃん。窓越しに・・外は暗いのに。」
「それな!」
今度は二人で顔近づけるんかよ。近いって。
「そこはほら、俺のスキルの出番だよ。」
「核心?!」
「うん、俺の目には大体の人間は心臓が弱点に光って見えるワケ。」
「うん、うん・・・すると?」
「だから、その位置を基準に、死ななそうなとこ狙って撃った。」
「でも、人が何人もいたら全員には当たらないでしょ?」
マヤ、狩人の君じゃないんだ。連射でさすがに当てきれないよ。
「そこでさ、雷溶獣の魂封印の出番さ。夕電泡雷ってヤツ。」
「ん?あぁ雷出したんだ!」
「そうそう、ちょっとタイミングずらしてね。ヤツ等は予想外の方向から雷に襲われるってワケ。」
「わぁ・・痺れるぅ。」「ビリビリだね。」
二人の女の子は、背中がゾワゾワしたらしい。
・・ふふ。こうやってると小さい女の子みたいに見えるな。
・・・前世の俺の娘。大きくなったらこんな風に笑ってくれたのかな?・・
考えても仕方ないか・・・永遠に失ったものだ。転生ってヤツの代償だな。
「でも、大きな爆発があったじゃん。よく無事だったね。」
「ああ、あれね。これのおかげでケガしなかった。」
俺はくるっと回転して、うなじにあるクモの紋章を二人に見せた。
「あっ!タトゥーいれたの?しかもクモぉ?」
「ルシーナ。タトゥーじゃないよ。必要に応じて光るだけ。」
「え?どゆこと?まさか魂封印を体に貼ったワケ?」
マヤ、興味シンシンだね。
「そういうこと。体に魂封印を貼るとそのスキルを使えるようになる。その時に紋章が光るみたいだけど。」
「・・・それで?」
「あの自爆攻撃を受けた時に、クモの魂封印・・・星霧女王の魂封印って言うのか。そのスキルの雲の糸ってやつを発動させたんだ。」
「雲の糸?」
「あれ?星霧女王の魂封印を手に入れた時、裏の説明を読まなかった?ほら、もし、あなたが命に係わる傷を負ったとしても、天からの助けにより、万全な状態で回復しますってヤツ。一日一回しか使えないらしいケド。」
「一日、一回で充分だよぉ。死にかけるなんて。」
「そうだよな。」
ホント・・・自分の身を犠牲にして相手も・・・なんて。・・・このスキルが範囲魔法みたいだったら良かったのにな。そしたらあの男も・・・。でも、仕方ないか。自分で選んだんだしな。命の使い方を。
「で、どこに向かってんの?」
マヤがまたクリクリの目を近づけてくる。
これぐらいでいいか・・・充分、家から離れたしな。
俺は心の中で星霧女王を呼び出した。首筋が熱い。光っているのが分かる。
「羂索光冠!」
「うっうわっ足元に星がっ!」
マヤが足をあげて飛び跳ねている。
「これはクモの巣?」
ルシーナは立ち尽くして呆然としている。
・・そう、今俺の足元には星霧女王の作り出す宇宙に光のクモの巣が映し出されている。
「八圏士と呼ばれる子グモをできるだけ小さくして、生きている刺客の服に忍びこませた。あの頭目にもね。」
そう、子グモは信号を送ってくる。いわば発信器だ。
八つそれぞれに色分けされている。
「頭目が赤だ。」
そして、このスキルは使い手の魔力によって感知範囲が変わる。
「動いてる。」
「そう、生かしていたのは・・・泳がせることもあってのことなんだ。」
俺達があの場を去れば、生き残った連中はそれぞれアジトに帰ろうとするだろう。
しかしヤツ等も玄人だし真っすぐには帰るまい。
俺達は数時間、光の点の行方を見守っていた。
警戒してバラバラに動いたり止まったりしていた光の点が少しづつある方向に動きはじめた。
・・・そして赤い点も。
そして・・・一点に集まる。
「ここは・・・」




