30 私を連れて行ってくれる?
焼け焦げたアウロンド装具店外 ールシーナ・D・カタキー
「あぁあ、お店がぁ・・・・」
許せん。ホント許せなぁい!
何の権利があって、私の将来の幸せ計画を燃やしてくれたんだ!
とっても素敵なお店だったのにぃ。
ここでだったら・・・と思ってたのに。
自爆で死人まで出しちゃって・・・もう。
ぶん殴るだけじゃ、やっぱり足りなかったかしら。
火つけは殺人と同じくらい重い罪なんだからね。
その人の大切な思い出ごと燃やしちゃう・・・。
・・・私の故郷が、戦争に巻き込まれた時もそうだった。
・・・そう。
あの時、・・私は大切な家族を失った。13だった。
そして、泣きわめく私を抱えて守ってくれたのが・・・エミル・・そう・・・あなたよ。
「おじさんが連れて行ってやるから!」
あなた、そう言ったわ。でも私が13でエミルあなた18だったでしょ。
・・・おじさんって。なんで?
でも、戦火に紛れて襲ってくるどうしようもない輩を斬り伏せながら私を抱いて逃げるあエミル。燃える炎から私を遠ざけて走るエミル。
その熱さに赤く照らされたあなたの顔は・・・美しかった。
しがみついたあなたの胸はたくましかった。
吐きそうな恐怖と悲しみを・・・私はあなたの中で忘れることができたのよ。
だから、私言ったじゃない。
遠い親戚を見つけて私と別れる時、
「私を連れて行ってくれる?」
あなたは言ったわ。確かに言った。
今と全然変わらない笑顔で。
「ああ、また会えたらな!」
・・・だから、私は剣を握った。
あなたが冒険者と知って、必死で修行してあなたを追った。
そして、会えた・・・そしてあなたのパーティに潜り込んだ。
・・・でも肩を並べて死線をくぐれるようになっても、まだ、聞けてない。・・怖くて。
あなたは、あの時の約束を覚えているのかな?
ねぇ、・・・エミル。
私、臆病だね。13歳のあの頃よりも・・・。
「形あるものはみんな、いつか壊れるよ。多少の金でなんとかなるものはいいじゃない。誰もケガしてないならさ。」
エミル?何をゴソゴソしてるの?
あ!それ。お店に飾ってあったショートソードのレプリカ。
「家の中の物は全部、燃える前に皿に吸ってもらったんだ。・・ほら、婆ちゃんの物とか焼けるの嫌だろ。」
ふふふ、なんだかんだでも大切なモノはしっかり守ってたんだね。
「だから、場所さえあれば商売もできるしね。」
うん!エミル!やっぱりあなたは私の・・・ってなんでマヤ!あんたもガッツポーズしてんのよ。
「でも、おじいさんたちは?」
私は一番気になることを聞いた。
「少なくともじいちゃんの命は無事だ。だって皿が消えてないから。」
「そっか。」
・・・なんか手がかりはないかしら。そうだこのクソ男、何か持ってたりしないかな?
「そして、ステラとステフはそう簡単に倒せない。」
「探すしかないね。」
それはそうなんだけどさ、マヤ。
・・・あれ、これなんだ?
襟首に刺繍?・・・これは斧か、金色の斧の刺繍。
「エミルこっち来て!ねえ、これ見てよ。」
エミルの目がまん丸になる。
「金の斧かぁ」
金の斧、こいつらの所属に繋がるかもしれない。
何かの統一された意志の象徴なら、他の刺客にも同じものがあるかも。
うん、今は一刻も早くおじいさん達を見つけなきゃ。
「エミルぅ!こっちのやつらにも同じ刺繍あるよ!」
ちっ!マヤ、あんたも同じこと考えてたのか?
「ルシーナ、マヤ、ここを離れよう。」
え?なんで?エミル。
「ちょっと、心当たりがあるんだ。」
え?そうなの?
「・・・わかった。」
私達は焼け崩れたアウロンド装具店を後にした。




