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28 みんなどこ行った?

アウロンド装具店 ーエミル・D・アサネー


 「ただいまぁ!」

 やれやれ、ルシーナのやつ悪ノリしすぎだっつーの。あんまり心臓に悪いことするんじゃないって。


 「ん?」

 なんだ?なんで店の中がこんなにグチャグチャに荒らされてんだ?

 強盗か?

「じいちゃん!ステラぁ!ステフッ!」

 なんで誰もいない?

 奥か?台所にもいない。ここもメチャクチャだ。

 あの三人が居て、ここまでになるはずがない。

 ・・・これは、争った跡はない・・・。何かを探してる?

 ・・・多分、三人はここにはいない。どこか別の所にいるだろう。

 ここには三人がいなくなってから何者かが押し入ったみたいだ。


 ・・・落ち着け。理解が追いつかない。・・・

 物取り共は・・・何を探していたんだ?・・・何が無くなっている?

 手がかりはそこだろう。

 あの三人はむざむざとやられることはない。・・・まず・・落ち着け。俺。


 売り物は、高価なものも手付かずだ。・・・何も無くなってはいない。ただ荒らされているだけか。

 いや・・・無くなっている物はある。

 この店で飛びぬけて高価な物。

 ・・・それはステラとステフ。あの二人は人格はあるが本体が盾と剣だ。

 ・・・二人が目的か?

 いや、それなら争った跡があるはず。店の外もいつもどおりだった。


 ・・・じゃあ、何が狙いだったんだ?他に・・・他に何が?


 ・・・もしかして、目的のモノが無かった?・・・それなら考えられることは・・・


 「囲まれたか・・・。」

 目的のモノが無ければ、残る俺を狙ってくる。これは玄人(プロ)の仕事だ。店のことは全て調べているだろう。

 やはり俺が狙いか。・・・しかし俺は何も持ってないケド。


 「あ!」

 腰の袋の中にじいちゃんの皿が入ってる。昼間にクモをぶっ倒してから返すの忘れてた・・・。

 「・・・もしかして・・・コレ?」


  ん?!焦げ臭い。

 「くっそ!火ぃつけやがったな!」

  逃げ口は正面扉、各窓、そして裏口。こいつら玄人(プロ)ならすべて刺客が張り付いてるだろ。


 「ああ、どうすっかなぁ!・・・でもそれ以上に腹立つ!・・・よっし!」


アウロンド装具店の外 ー刺客の頭目ー

 秘宝の皿は店の中に無かった。おそらく最重要目標のエマル・ヌシカタ・フルエの孫、エミル・ダイアナ・アサネが所持しているのだろう。

 そのエミルとやら、これだけの火にまかれて外に飛び出て来ぬとは。死んだか?

 正面の扉は私他二人。左右四つある窓、裏口の扉にも各3人づつ手練れを配置している。

 問題は、火を放ったから直に人が寄ってこようというもの。

 余計な相手が増える前に、さっさと皿を回収したいものよ。


 ・・・動かんな。むっ、動いたか!右だ!飛び出たか?!

 (フルモ)のような音が響いた。建物の左でもだ。飛び出たのはどっちだ。誘導か?

「お頭っ!」部下が身構えている。

「各人にまかせよ。陽動の恐れもある。」

 その時正面の扉が蹴破られた。

「やはりな!行くぞっ!押さえこめっ!」

「なにっ!クモか!」

 部下ののけぞる声が聞こえた。

 出てきたのはクモだ。足が刃になっている。何匹もいる。これはアッケーノか?

「お頭っ!ここは我等が押さえますっ!目的をっ!」

 分かっているさ!頼むぞ。その男を押さえて皿を奪う!

「何ッ?」

 瞬間、二人の部下が雷の矢で射られて倒れていた。

 この闇夜で燃える室内からこれほど正確に矢を放てるのか!

「誰も殺しちゃいねーよ。歩けなくなってるかもだけど。八圏士、殺しちゃダメだぞ。」

 燃える店から、ゆっくりと男が姿を現した。この男がエミルか。皿を持っているはずだ。


 「あっ!返せよ!」

 裏口の三人が敵は正面と判断したのだろう。同時に三人でエミルを襲い腰の袋を奪いとった。

 二人はその場でクモに組み伏せられ、袋を奪った部下は辛うじて逃げ切った。

 部下は転がり、飛び下がり、袋を地面にひっくり返した。

 「無いっ!無いぞっ!」

 ・・・無いだと?ならば大事に服の袂に入れているのか?

 いや、やつは焼け焦げた上着を脱ぎ棄てたぞ。・・・持ってないわ。コイツ。

「ねぇ、返してよ。それ今月の小遣い残り少ないんだけどさ!」

 何を言っているんだコイツは!だが、皿は確実に無いようだ。


「火事だぁー」遠くで声がする。人が来るな。時間がない。


「お頭!」袋を奪った部下が目配せした。やる気か?分かった。

 私は飛び下がり一目散に走った。背中から爆音と衝撃が私を襲った。


 やったか?皿を所持してないと分かれば、エマルの血を引く者は始末せねばならない。

この身を犠牲に自爆をしても・・・それが我等の使命だ。


 だが・・・生きてやがる。


 その男は、首筋から光る糸が夜空に向けて伸びていた。いや逆だ。空から光る糸で降ろされてきたようだ。


「あぶねぇー!星霧女王(ネブロレジーノ)魂封印(シール)、貼ってなかったらヤバかったよ。これが雲の糸ね。すげー。」

 

その男、エミルの首筋には金色に光るクモの紋章が輝いていた。そして優し気な顔がゆがんだ。


「俺は、腹が立ってるよ。店と家もそうだけど、それよりなんで命を粗末にするんだ!あんたら家族はいねえのか!」


 私はその時、首筋に氷のような刃と獲物を狩る狩人の狙いが当たっていることに気がついた。


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