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20 カレーじゃねーだろ!

ラーナリー郊外円形ダンジョン5階 ーステラー

 

 美味しそうにみんな食べてくれるよのう。腕によりをかけた甲斐があったわ。

 こら、エミル、ステフ!取り合いをしない!

 まったく・・・同じレベルなんだから・・。


「ステラさん、この卵を焼いたやつ、美味しいわ。」

 ああ、玉子焼きか。そうじゃな。マヤぐらいの世代になるともうこの料理も受け継がれていないか。一度滅んだ文化は影が薄いの。我が勇那(いさな)の国もサーナの国、城のあった虎成(とらなり)もラーナリー・・と音だけが残ったものな。でも、スクランブルエッグにオムレツ、(わらわ)は大好きじゃぞ。


「マヤさん。昔はね、家庭によって塩を入れる家、砂糖を入れる家があってね。だし巻き卵もあるから三種類作ってみたわ。気に入ったのがあったら、今度一緒に作りましょ!」

「うん、お願いします。でもステラさんってお料理上手ですよね。若いのにいろいろ知ってるみたいだし。」

 ふふ、星の龍たる者だからな。まぁ龍としては若いがな・・。これ、ステフ、ああ、そこがいいのか。まぁ良い。妾の膝が良いなら。半分でも龍の赤子ってのは放っておけぬ。見た目は猫じゃがな。父親の血が強かったか?猫?虎?まぁ良い。・・・かわいいから。


「わしは、こっちがええのう。」

 エマル。じいさんになってもいなり寿司が好きじゃのぅ。今日は外じゃからうどんは出せぬぞ。

 エミル、うん、おいなり美味しいか。じいさんのエマルと同じ顔で頬張るの。こやつら。ほら、がっつくからじゃ。ほれ、お茶!


「ねぇ、おじいさん。魂封印(シール)の廉価版作るって言ってたけど、どういうことなの?」

「うん、爆炎使徒(エクスプランジェ)はちょいと強力すぎるからの。一般魔法レベルで作りたいのじゃ。」

 マヤは手を止めて考え込んでおるな。

「強ければ強いほどいいんじゃないの?」

「あまりに、強力なものだと国に目をつけられかねんからな。一定の上限は設けておいて、少しづつ長く商売をしたいのう。競合はおらんし。それと、武具の耐用年数の問題がある。まぁこっちが本当の問題じゃな。」

 強力な魂封印(シール)ほど武具は壊れ易くなるのは当然じゃな。


「そうだ、私の魂封印(シール)も効果は三年って言ってたわね。」

 あら、ステフは眠ってしまった。お腹はふくれたみたいじゃの。

「おお、そなたの(アルコ)をみさせてもらっての。感心したんじゃ。普通の市販の(アルコ)は、言うて消耗品じゃて、保って三年じゃ。冒険者の使うものとしたらまだ早い。そのRA-17(デクセップ)は名工 ロイワーの作品じゃ。普通の手入れでも七、八年は保つ。」

「それを、マヤは十二年も保たせてたしな。しかも状態は最高レベルさ。」

 エミル、ご飯粒がアゴについてるぞ。かっこつけても。


「ワシはの、その(アルコ)の寿命は後五年と見ておる。翠嵐(ベル―シュ)爆炎使徒(エクスプランジェ)を冒険者として使っても、そなたなら最低そのぐらいの期間は保たせよう。」

「でも、おじいさん。爆炎使徒(エクスプランジェ)は三年って。」

「ああ、それはの、その(アルコ)は親父殿からの宝物じゃろ。魔法で酷使して使い潰さなくてもええじゃろう?三年の後は魔力を取り去って、その(アルコ)は余生を過ごさせればよい・・・と思ったんじゃ。」

「魔力を取り去る?余生?」

 そう、それがこのエマルじいさんがラーナリーで一番と言われる理由のひとつよ。


「まぁワシのスキルはな、ハリガミ・・という。魂封印(シール)を貼り付ける方の貼神(はりがみ)と抽出して取り去る波離神(ハリガミ)じゃ。つまりは、貼ることと、引っぺがすことができるのよ。」

 マヤ、驚きすぎて口元が緩んでおるぞ。まぁ仕方ない。

 しかし、この男の一番恐ろしいのは、それがスキルだけでなく、魂にまで手を出すことができる点じゃな。

 さすがに、そこまでは言えないか。


「三年の間に魔法弓(マギナアルコ)に慣れなさい。そして、そなたの腕前に耐えられる(アルコ)を探すと良い。もし、その時までに爆炎使徒(エクスプランジェ)に認めれておれば、ワシが新しい(アルコ)に張り替えてやろう。・・・それで、その古い(アルコ)は少女の頃のように狩猟に使うのがええじゃろ。元より狩猟は命がけの仕事。(アルコ)も誇りを失うことはない。大事に役目を果たさせてやっておくれ。」

「おじいさん・・。」

 そうじゃな。(アルコ)もお父上も喜ばれることじゃろう。


「それで、私の(アルコ)の練習はいいけど、五階(ここ)で他にすることはあるの?」

「ああ、五階は草原のエリアの最後だろ。障害物は少ないし、何よりアレが出る。」

 エミル、その笑顔は気持ち悪い。

「アレ?」

 そう、アレ。

「ここは天気が崩れ易いし、居るのは雷溶獣(フルモスライム)ぐらいじゃん。初心者が倒すヤツ。」

「そう、ソレ!」

「はぁ?」

 エマルじいさんが立ち上がった。ランチの後片づけをしようか。いやステフが寝ておるな。


溶獣(スライム)はのこのダンジョンの魔力の圧力で階層で体の大きさが一定なんじゃよ。」

「うん、この低階層では、合体なんてしてないもんね。」

「そう、そして雷溶獣(フルモスライム)は大きさが同じだと蓄えることできる雷の量も一定じゃ。」

「ん?どういうこと?エミル。」

「規格が揃えやすいのさ、商品の性能の均一化は大事なことだろ。」

「ああ、そういうこと!」

 マヤも納得したようだ。

「調整もできるじゃん。雷×2倍、雷×5倍、雷×30倍ってさ!」


「カレーじゃねーだろ!」


 いやはや、どうなることやら。ステフの寝息が聞こえるの。まぁこやつらが雷溶獣(フルモスライム)を捕まえ始めたらうるさくなるし、その時まで寝かせてあげよう。


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