19 無自覚は遺伝でした
ラーナリー郊外 円形ダンジョン ーエミル・D・アサネー
ここは、ラーナリーの街の外にあるダンジョン。直径1㎞程の円形のフィールドが地下に向かって階層になっている。レベル毎の階層になっていて、天井の高さは50メートルくらいかな。次の階層に進むには、入口から最奥の扉前にいるエリアボスを倒して階段を降るって感じ。その繰り返し。
ラーナリーの冒険者ギルドが管理していて、ある程度の階層までは安全が保障されてる。
おっ、エリアボス倒されてるな。先に来た人が倒したんだろ。
ちなみに、エリアボスは倒されたら、日をまたぐまで復活しない。
ドロップアイテムも経験値もエリアで一番だから、ちょっと欲しいところだけど、これは早いもの勝ちなんだ。今日は強いパーティがいるのかな?5階まで潜ってもエリアボスはいないや。
よし、5階でいいか。ねぇ、じいちゃん。
ここはまだ草原の区域だから。
「この階層で試すの?」
RAー17、マヤ自慢の弓。この間、じいちゃんと俺で機能を拡張して魔法弓「翠嵐」が目覚めた。今日は翠嵐とマヤの自体の魔力循環の経過を見ることもあるが、おまけでつけた魂封印の開発テストが本当の目的だ。
ちなみに店は定休日。だからみんなでお弁当持って低階層のダンジョンに来てるってワケ。
ステフまでついてきちまった。こいつ、弁当目当てだな!このっこのっ!くすぐりの刑だ!
「爆炎使徒って言ったわよね。」
マヤが弓のいたるところを見回している。
「そもそもそれは何?」
「うん、炎の精霊兵の親玉じゃ!いわゆるネームドというやつかの。」
じいちゃん、事もなげに言うけど、その精霊兵って50階以降にしか出て来ないレベルのやつじゃないの?その親玉って・・・。
「はぁっ、炎の精霊兵ってA級の冒険者でも一体倒すに苦労するのよ。その親玉って・・・。」
ちなみにマヤはA級らしい。奇襲艇に乗れるから相当にレベルは高い。
「それをどうやって手にいれたの?おじいさん?」
「うん、結構前にパッとやっつけて、ホイッと捕まえた!薬草集めのついでじゃ。」
「からかわないでくれる?おじぃいちゃん!」
「ホントじゃもん!」
「無自覚なのは、遺伝なのね!」
あーじいちゃんならありえるよな。フラリといなくなる時はこういう仕入れなんだよね。
でも俺、知ってんだ。じいちゃんの魂封印のコレクションのラインナップはこんなもんじゃないことを。
「まぁ、ちょっと使ってみよう。」
じいちゃんが杖をクイッってあげたら、200mくらい先に大きな岩が地面からせり出した。アレを的にしろってこと?
マヤは矢をつがえる。
「翠嵐!」マヤのRAー17は風をまとい瞬きしたら、岩は跡形も無かった。
「次、炎に替えよ!」 岩が再構成されてる。マヤもじいちゃんも凄いな!
「爆炎使徒!」 あー跡形もなく溶けてら!
「次は的をの、アッケーノの硬さにするゾ!」
「翠嵐!」 あれ?ヒビ入ったか?微妙だな。
「炎に切り替え!」
「爆炎使徒!」 あっ、焦げてる?焦げてるよね?
「それなら次はの、爆炎使徒に翠嵐をまとわせてみよ。」
え?的を3つも縦に並べるの?ひとつでも、さっき両方ともダメだったじゃん!
マヤの周りに炎が集い、風が舞い立つ。
結果は・・・そこには粉塵と焼けた臭いしか残らなかった。
「うむ、合わせるとこんなもんじゃ!」
「あっきれた!」
そんなこと言っても、マヤ、嬉しそうだね。
「よし、飯にしよう!」
あれ?ス―テーフゥゥゥ!何一番先にスタンバイしてるんだい?
ステラの弁当何かなぁ?
ー魂封印コレクションー
爆炎使徒
その昔、花の女王たる内花姫を焼き尽くした呪われし炎のひとつ。異国の王の船から放たれた世界を滅する炎の矢の眷属。その姿は美しくも猛々しい炎の翼と鎧をまとった女性の姿で顕現し、なびく髪は触れる者を心身共に焼け焦がす。飛び散る炎の粉は精霊兵と呼ばれ恐れられ、彼女はその将軍として厳格に軍を統制します。一度忠誠を誓えば、主君のため炎の軍団が行進することでしょう。
獲得権利及び効果(使用者の魔力量により制限あり)
・正位炎将軍位
炎の将軍の位につくことにより、振動系正位魔法の上級魔法が使用できます。
・将軍直轄地の所有権(3年の試用期間後、契約継続ならば解放)
亜空間に存在する将軍の所領および建造物、財産の所有権。
・炎天の門 使用可能
当該武具に炎熱による加護を与え、逆に害を成す者を焼き尽くさんとします。
・炎精統帥権
炎の精霊兵の使役が可能になり、彼らを率いての範囲攻撃及び防御が可能です。
魂封印からのメッセージ
「汝が王たる者ならば我が一族、この身が燃え尽きるまで汝の魂と共にあらん。」