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18 限定サービスの秘密

アウロンド装具店 ーステフー


 お腹減ったぁ。お姉ちゃん、ただいまー。

 とりあえず、こんねんど第56回ラーナリー、夜のシハイシャの集いってヤツは終わったヨ。

 みんなが言うんだけど、この街の猫の王(シハイシャ)はボクなんだって!

 ヨクわかんないケド。

「リュウとトラの御子。お住ミャいは星のリュウの姫さミャのお家なんですネー。」だって。

 ボクはみんなと楽しくすごせればイイんだケド。


 アレ?どしたのエミル。赤い顔しておじぎしたりして。

 あーこのあいだの(アルコ)のお姉さんだ!こんにちわー。


「ところでおじいさん!」

「ん?なんだね?」

大ムカデ(スコーペンド)をやっつけた時のアレ!おまけでくれたあの貼るやつ。あれは何なの?」

 お姉さんがじいちゃんに詰め寄ってる。どうしたノ?

「ああ、魂封印(シール)のことかい?」

「そう!それっ!」

「お気に召さなかったかの?」

 アレ?お姉ちゃん頭を抱えてカウンターに座っちゃった。

「エミルのおじいちゃんってことを忘れてたわ。やっぱりズレてる・・・。」


 ステラお姉ちゃん、お客の(アルコ)のお姉さんにお茶を出してくれたんだネ。

「マヤさん、落ち着いて。」

 マヤと呼ばれた(アルコ)のお姉さんが、ごめんとお茶を口にした。


「あれはの、ウチの限定サービス品じゃ。」

「限定サービス?」

「うん。長いことウチの商品を大事にしてくれたからの。」

 じいちゃんは向かいに座ってケラケラ笑ってる。楽しそう!ボクも混ざル!

「サービスってレベルのもんじゃないわ!」

「外した方がええかの?」

「あっ!いや、そ、そういうことじゃなくて、サービスにしちゃ高価すぎるよ。とんでもレベルの魔法弓(マギオアルコ)を一張貰ったのと同じだわ!」


 あっアレ?ステラお姉ちゃん、なんで抱っこしてくれるノ?そっちに行ったラいけないノ?

「お主の特性をよく考えてみたんじゃが。」

「ああ、ごめんなさい。感謝してるの。でも・・あまりに凄すぎてもらっていいものか・・。翠嵐だけでもとんでもないパワーアップなのに。」


「じいちゃんがくれるってんだから、いいんじゃないのか?」

「エミル、そうは言っても・・・。」

 あーエミル、ちゃっかり自分のお茶淹れてル。

「あーじゃぁ、こういうのはどう?ウチの商品のモニターをしてくれるっていうのじゃダメかい?」

「モニター?!」

 エミルが、お茶を一口飲んでひと息ついた。ナー。ボクのなんだか喉が渇いたゾ。

「そもそも、じいちゃんの魂封印(シール)は強力でね。変なヤツには渡せないんだ。それで廉価版の開発も考えてるんだけど、テスターが俺だけじゃさ。向き不向きもあるし、ほら違う視点というか。そういうのも欲しいんだ。」

 あー、ありがとー。ステラお姉ちゃん、ミルクくれるノ?なんで分かったノ?


「そこで、手を打ってくれんかの?」

「・・・分かったわ。おじいさん。でもちゃんと説明してくれる?」


 アレ?じーちゃんがめずらしく悩んでるゾ。エミルに表を閉めてくるように言ってル。


「・・・分かった。そもそもな。これはワシのスキルなんじゃよ。付与魔術の上位互換的なものじゃ。普通の付与魔術なら、術式やエレメントを武具に仕込んで、魔力(マギア)の注入で発動できるようにする。これは一般的だな。」

「それは、私にも分かる。」

 みんな、むずかしイ顔してルー。


「そして、結構弱点もあるんじゃ。術式やエレメントが傷つけば、性能劣化もしくは喪失が起こる。また、付与できる魔法の種類も限られている。エレメントの特性でな。しかし、一番の問題は付与の重ね掛けがあまりできないこと。まぁ面積の問題なんじゃがな。」

「そうね。特にエレメントなんて、大きければ大きいほど、たくさんつければつけるほど傷つく可能性は高いわね。そして出力が落ちる。」


「だから、後衛職の魔法使いが杖に仕込むのが一般的だろ。近接武器には向かない。術式だけだとかなり高度な術式でないとエレメント有りの出力には及ばないからな。」

 フン、フン、わからン。

「エレメントとして陽長石やら、三つもついとる近接武器など、伝説の流星の剣レベルじゃわ。」

 ん?なんで じーちゃんボクを見るノ?はぁーイ。ボクも本体は剣ですケド。


「そして、魂封印(シール)にはその弱点は・・・ない。」


「ないってなんで?」


「魂レベルで武器全体に能力を浸透させるからじゃよ。術式の書き込みは不要。むき出しのエレメントはない。重ね掛けは制限なし。」


 アレレ、マヤお姉ちゃんがカウンターに頭ゴーンってしたゾ。

「そんなん、チートにも程があるじゃないかぁ!」


「だから、変なやつに渡せないんだ。」

 エミルが繰り返した。


「いくつか疑問がある。」

 マヤお姉ちゃん、怖イ・・・。


「まず、どうやってその魂封印(シール)を作ってるんだ?」


「詳しいところは企業秘密じゃがの。ワシのスキルは血を分けた孫が一部引き継いでおる。」

 じいちゃんは湯呑をゆっくり傾ける。


「孫・・・エミル・・・スキル・・・核心(ウヌルマンタ)?・・・まさか?」

「そうじゃ、そう思ってくれてええ。」

「つまりは、相手から奪っていると・・・。」

 マヤお姉ちゃん、顔色が悪いヨ。

「こやつは、自分のものにするだけじゃがな。」

「おじいさん、あなたはそれを抽出して、付与することができると・・・?」


 じーちゃんがゆっくりうなづく。


「世界が変わるよ!なんでそんなもの作ろうとしてるの?」

「備えなければならないからじゃ。」

「備える?」

「うむ、手に負えない事態が近づいとる。アッケーノが増えてきたのもその前触れじゃ。」


「・・・じゃぁ、なんで私に話してくれたの?オマケをつけた時にこうなることは分かってたでしょ?」

 マヤお姉ちゃんは、半分ふてくされているように見える。頬杖をついてそっぽを向いているかラ。

「ふたりで話しておったんだが、真っ直ぐで、信用できる仲間が欲しかったんじゃ。な?」

「俺は役には立てないよ。じいちゃん。」

「ワシよりマシじゃろう?」

 今度はエミルが頭ゴーンだ。


 ステラお姉ちゃん、ミルクおかわりー。アレ?居ない?

 ン?いい匂いがするぅー。


 今夜は焼き魚だな?ヤター!

「マヤさんも食べてってくれるぅ?」

 奥の台所から声がする。


 うん、お嫁さんにするなら、絶対ステラお姉ちゃんダ!



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