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えぴそーど・ふぉー:妖刀と泥棒。

 正月明けの忙しい、四国某所の大師堂横喫茶店「六波羅探題(ろくはらたんだい)」。

 今日も店内は、冬休みの子供達や近くの老人たちで賑やかだ。


「マオお姉ちゃん、これで答え合ってる?」


「えっと、ええ正解ですよ」


「マオお姉ちゃん、こっちも教えてぇ!」


 子供たち、まもなく冬休みが終わるので、いつものようにTCGで遊ぶのでは無く、宿題を持ってきてマオ達に見てもらっている。

 一応、駄菓子を買っているのでお客様なのだが、他のお客様の迷惑にならない限りという条件付き。


 端っこでコーヒーを楽しみながら将棋・囲碁を楽しむ老人たちも毎年恒例の風景と気にしてはいない。

 それどころか、時々子供たちの宿題を見てくれてもいる。


「去年まではチヨお姉ちゃんってアテにしてくれてたのに、今年はマオお姉さんの方が人気なの、ぐすん」


「だって、チヨお姉ちゃんは理数系怪しいもん。文系はチヨお姉ちゃんに聞くよ」


「えっへん! 歴史ならアタシに任せてね!」


 子供たちもちゃっかりしているもので、2人のウエイトレスの機嫌を取りつつ、宿題を見てもらっている。


「……小学生の宿題に歴史ってほぼ無いと思うのじゃが……」


「何、言っているのかなぁ、カガリちゃぁぁん」


「こ、此方(こなた)は、タダのおしゃべり人形なのじゃ!」


 最近、チヨの肩の上が定位置になったカンテラの付喪神(つくもがみ)幼女カガリ、チヨに突っ込みを入れるが、チヨの脅しにすぐに人形のふりをする。


「皆、夕方5時までですからね。そこから先はお家に帰って、お家の方に宿題を見てもらってください。先に言っておきますが、ここで習字は許可しませんからね」


「はーい!」


 子供たちは、ハジュンの声に元気そうに答える。

 その中には、一時期イジメから不登校になっていたショウタもいた。


「ショウタ君、猫のミイちゃんは、あれから元気?」


「うん、マオお姉ちゃん。元気過ぎて、昨日もイタズラして晩御飯の煮魚を盗んでたよ。もちろん、身体に悪いから、塩分抜きのをワザと盗ませてたけど……」


 笑いながらマオの問いに答えるショウタ。

 その様子に、それを聞いているハジュンにも笑顔が浮かんだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「今日もお疲れ様です。2人とも賄い食べたら夜の部お願いしますね」


「はーい。今日は何かなぁ。あ、オムライスですか。いただきまーす!」


「マオお姉さん、慌てなくてもマスターの賄いは逃げないですぅ。あー、美味しいのぉ!」


「此方も美味しいのじゃ!」


 2人、いや3人は、ハジュンが作ったオムライスを賄い食として食べる。

 カガリも、大きなスプーンによそわれたオムライスを口いっぱいにほおばっていた。

 とても美味しそうな表情で食べるので、作ったハジュンも嬉しそうだ。


「そういえば、猫が塩分ダメなのは腎臓が弱いからですよね。じゃあ、化けタヌキのチヨちゃんは大丈夫なんですか?」


「アタシ、この姿なら人間と同じ代謝だから大丈夫だよ。タヌキ形態なら、味が濃いのは身体に悪いかもね。玉ねぎとかも、食肉目には毒だし」


 そう言いつつ、加熱して甘くなった玉ねぎを食べるチヨ。


(わたし)も昔、チヨちゃんのお母様などタヌキさん達に食事を出すときに、心配しました。人間が食べられても、玉ねぎやチョコレートなど食肉目が毒になる食品多いですからね。でも、化けられるタヌキさん達は代謝を人類に近づけられるので、大丈夫ですって」


 ハジュンは、遠くを見ながら自らが作ったオムライスを食べる。

 猫や犬、更には化けタヌキや化け狐とも付き合いが長いハジュンは、昔を懐かしんだ。


「チョコも本当はダメなんですね」


「ええ、マオさん。なので、某妖怪さんの猫さんみたいに、猫にチョコは絶対ダメですよ。基本、猫さんは甘味を感じないそうですし」


「アタシは甘いもの、だーいすき! マオお姉ちゃん、バレンタインデー前にチョコ作るの練習して食べっこしよーね」


「うん!」


「此方も、食べるのじゃぁ!」


 まるで姉妹の様に仲の良い3人に、微笑むハジュンだった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ハジュンさん、閉店前にすいません」


 閉店準備を開始していたころ、作業着にネクタイを締めた真面目そうな中年男性が「六波羅探題」を訪れた。


「いえいえ、石川さん。閉店前という事は、ややこしい案件ですか?」


「はい。当方からある展示品が盗難されてしまったのです」


 石川は、「六波羅探題」がある市役所の職員。

 部署は教育委員会の文化・スポーツ振興課、NPO団体に管理委託をしている歴史考古博物館で館長をしている。


「あそこに展示されているもので、私案件なら……。あの妖刀ですか?」


「はい、その通りです。以前、展示前に先代課長がハジュンさんに封印を依頼していたのを、新人職員だった私も見ていましたから……」


 この地域、弥生時代以前から人が生活しており、四国内交通の要所でもあったので、多数の古墳、遺跡、そして遺物が存在する。

 そういった遺物の中には、霊的に危険な物やカガリの様な付喪神も存在する。

 そういう関係で、市役所内部でも遺物を見つける道路・工事関係や発掘物を担当する部署とハジュンは、以前より付き合いがある。


「ハジュンさん、妖刀って何なんですか?」


「そこはアタシが、マオお姉さんに答えますぅ! 古来より刀、刀剣類は神やアヤカシを引きつけ、退治する力がありますの。その中でも神様のお力をお借りできる神剣、草薙剣(くさなぎのつるぎ)様とか、魔の力を借りる妖刀なんかがありますの」


「草薙剣は、わたしでも知ってます。皇室の宝物でしたっけ? 三種の神器?」


「ええ、あの剣、天叢雲(あまのむらくもの)(つるぎ)は日本を守る神器です。皇室にあるのは神様が御宿りになられる依り代、形代(かたしろ)です。壇ノ浦(だんのうら)で失われたのは、この形代ですね。御本体は熱田神宮の御神体として安置されています」


 マオの疑問に、すらすらと答えるハジュン。

 その知的な美男子の様子に、今更ながらマオは頬を赤くした。


「ですが、今回の妖刀は、そんな良いものではありません。元は城山にあった抜け道井戸の中にあったものですから……」


「城山って、海沿いの小山にある桜の名所でしたっけ?」


「はい。あの場所には室町南北朝の頃から砦、小さなお城があって戦国末期まで幾度も奪い合い、何回も落城し、戦乱が多数起きた悲劇の城なんです」


 ここ四国の真ん中にある市は、四国四県が重なり古来より交通の要衝。

 四国を制覇するためには、ここを抑える事で敵の動きを止められる重要箇所。

 現在でも高速道路のXジャンクションが存在し、このジャンクション付近で事故などが発生すれば、四国の交通網は麻痺する。


「あそこには、春の花見に前の会社の人に連れて行ってもらった事があります」


「ここって小さいけど、城下町だもんね。鉄砲とか馬場(ばば)とか、(いくさ)関係の地名もお城の近くに多いしぃ」


「ですね。古戦場ですので、少し離れた場所でも『野々首(ののくび)』なんて物騒な地名もありますし。さて、そこのお城。最後に落城したのが確か戦国の中後期、高知の長曾我部(ちょうそかべ)様の攻撃で、その時の城主河上様は今の製紙工場辺りで騙し打ちによりお亡くなりになりました」


 歴史の目撃者であるハジュン、戦国期の事を見てきたかのように話す。


「あ! 工場の近くに赤いお社があったのが、それですね。工場の人に聞いたことあります」


「その時、河上様の娘様、年姫(としひめ)様が落城時に城山の崖、今は工事で海が埋め立てられてしまいましたが、そこから馬に乗って海に身を投げて亡くなられました。なので、あの崖を『姫ヶ嶽(ひめがたけ)』。その姫が打ち上げられた隣の市の浜が『姫浜』と呼ばれてます」


「悲しいお話なのぉ。いつ聞いても泣いちゃうの」

「此方も悲しいのじゃ」


 ハジュンの説明にチヨとカガリが涙ぐむ。


「そこの崖の下には、工事前には梵字(ぼんじ)を岩に刻み込んで供養をしたものがあり、また洞窟もありました。その洞窟は城内にあった井戸に繋がっていて、城内から逃げる際の非常路だったと思われます。今回の妖刀は、その洞窟から発見されたものなのです」


「ご説明、ありがとうございます、ハジュンさん。その小さな女の子がお聞きしていた付喪神さんですね。カガリちゃん、私は石川と言います。今後とも宜しくお願いしますね」


「はいなのじゃ!」


 チヨの肩の上で元気にドヤ顔で挨拶をするカガリ。

 今更ながら10センチの幼女を見ても驚かない石川。

 そんなオカルトに手慣れた様子に、マオは驚いた。


「石川さん。オカルト大丈夫なのですね? 普通、怖いとか思いますけど……」


「ええ、私も新人の時は随分と怖かったですよ。いつまでも年を取らない美男子さんが、悪霊退散するんですからね」


 石川は、少し薄くなりつつある白髪頭を掻く。


「状況は分かりました。一応確認ですが、上や警察には届け出ていますよね」


「はい。上司や市長、警察には届け出済みです。案件が案件なので、まだマスコミには黙ってもらっていますが……」


「なら、大丈夫です。市長さんの耳に被害者発生が入る前に片づけましょうね」


 ハジュンは石川の顔を見て、大丈夫と安心させた。


「それは助かります。既に県議や国会議員の方の耳にも入ったらしいですし。お支払いですが、予算が……」


「お役所では、使途不明金や宗教関係費は出せないですものね。では、物品回収後の封印時に、遺物清掃や研ぎ直しの名目でお願いします」


「それは非常に助かりますです。では、くれぐれも宜しくお願い致します」


 ペコペコと頭を下げながら、石川は店を出て行った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「またマスター。安く仕事を受けたのぉ!」

「まあまあ、ハジュン殿にも考えがあるのじゃ!」


「チヨちゃん、今回はしょうがないですよ。早く妖刀発見しないと、被害者出ちゃいますから。それにお役所に極秘な予算なんて無いんですし……」


「ハジュンさん、その妖刀って危険なんですか? なにか、偉い人もいっぱい気にしていらっしゃるようですし……」


 チヨは、閉店後の机を拭き掃除しながら、ハジュンが安く仕事を受けたことに文句を言う。

 カガリはチヨをなだめ、ハジュンも仕方が無いと答える。

 そんな中、マオは妖刀の危険性について、ハジュンに聞いた。


「あの妖刀は、戦国期から洞窟内にあって、海際なのに錆もしませんでした。刀自体は古刀末期から新刀初期の数打ち物なので、値打ちは大したことは無いですけれど」


「古刀と新刀、数打ち物ってどういう意味ですか?」


 いきなり刀剣の専門用語が飛び出したので、マオは首をかしげる。


「日本刀には作られた時代や作者によって分類されます。神代、平安期以前の俗にいう日本刀、太刀や打ち刀になる前のものがあって、元寇の危機があった鎌倉期から室町期に打たれた刀が古刀。日本刀最強の時代でして、名刀の大半はこの時代の品です。村正様とか正宗様などの作品が現在でも残ってますね」


 ハジュンは、すらすらと日本刀の説明を始める。


「古刀末期、今の岡山県にあった長船村が最盛期には備前長船ものとして有名でしたが、戦国期に洪水で村ごと流されて刀工さんも亡くなり、技術が失われてしまいました。また、戦国期にはとにかく刀が必要ということになり、量産品、俗にいう数打ち物が作られました。これ以降が新刀時代。今の刀鍛冶の作り方は、基本的に新刀時代のものですね。そうそう、私、一本だけですが新刀時代初期の備前長船ものを持ってます」


 ハジュンは、しばしキッチンの裏に入り、家屋の中から白鞘に入った日本刀を持って来た。


「これが日本刀、備前長船モノの新刀です。刀の刃紋が丁子(ちょうじ)乱れと言って、ぴょこぴょこした感じでしょ?」


 ハジュンは、息がかからない様に畳んだ和紙を咥え、保存用の白鞘から刀を抜いた。


「また、マスターのウンチクとオタク話始まっちゃったの。アタシ、この刀見るの何回目かなぁ」

「此方、怖いのじゃ!」

「うわぁ。見ていたら、なんか引き込まれてしまいますね」


 チヨは、うんざりとした顔。

 それに比べてカガリは怖がり、マオはじっと刀を見た。


「とまあ、古今東西。刀剣には魔を払う力、また魔を引き込む力がありました。今回の妖刀は、何回もの落城時で失われた兵たち、そして亡くなった城主家族の方々の無念・怨念が集まっていました。最近になって発見されたのは明治、大正期でしょうか。近所の若者が度胸試しにと、城の枯れ井戸に入って崖下の脱出路共々刀を発見したそうです。ですが、その刀を持ち帰った若者は酷い腹痛に襲われ、怖くなって元に戻したと。これは後日、発見者本人から聞いてます。なお、その若者は後日に日本刀マニアになってます」


 ハジュンは、日本刀を鞘にしまいながら妖刀の由縁をマオ達に話す。


「その後、城山北側海の埋め立て工事の際に、慰霊の梵字石ともども刀についての除霊・慰霊の依頼が私のところに来ました。で、わたしは慰霊と念の封印を行い、刀は城の遺物として歴史考古学博物館に保管されていました」


「なるほどです。それなら確かにハジュンさんが受ける仕事ですね」

「でも、安く仕事うけるのは困りますぅ」

「これも人助けなのじゃ!」


 3人娘は、それぞれの意見を言う。

 それを笑顔で聞いてハジュンは、言う。


「では、早速お仕事開始です。あの刀には、私の魔力でマーキングしています。今晩中に片を付けますよ!」

「はいです!」


 「六波羅探題」は臨戦態勢に入った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ちきしょう。金目のものがあるかと思ったけど、大したもん無ぇじゃねーかよぉ」


 とある安宿の一室、歴史考古学博物館に盗みに入った泥棒が愚痴る。


「ふつー、ああいう場所には掛け軸とか壺とかがあるのに、銅鐸なんかのレプリカなんて売れやしねぇ。精々、小林一茶の短冊くらいと、この刀くらいかよぉ」


 殆ど人も訪れない、小山の中にある歴史考古学博物館。

 そこなら警備も手薄だと盗みに来た泥棒。

 あまりに展示物が少なく、売れそうなものも少なかったので、文句を言う。


「けど、この短冊は売れねぇよなぁ。直筆とかなら、すぐにバレそうだ。その点、この刀なら出どころも分かりにくいヤツだから、実家の蔵から出たとでも言って警察に届けてから、売っぱらうかな」


 日本刀が納屋や蔵から出てくるのというのは、今もよくある。

 そして日本刀を売る場合は、警察に発見届をしてからでないと、古物商には売れない。

 小林一茶の直筆短冊ともなれば、数が少ない上に警察を通じて古物商に連絡が入っている。

 個人以外に売ると確実にアシがつく品だ。


 しかし、日本刀なら余程の目利きが見なければ作者が分からず、鞘などの(こしら)えまで変えられてしまえば既に警察に届け出済みや盗難届が出ているものと同一化の判別は難しい。

 実家の蔵から出てきましたとでも言って、遠くの県の警察に届けられれば、目利きがいない限り盗品とも思わずに地元教育委員会から登録証が発行され、売り買いが可能になる。


「さて、錆てたら困るから、抜いてみるかな。うん? これ、紙で封されてんな。邪魔だ!」


 泥棒は、その紙の封印が妖刀の力を封じていたとも知らずに破り捨て、刀身を抜いた。


「こ、こいつは……。すげぇ」


 錆一つ無い刀身に薄紫の妖気を放つ妖刀。

 その妖気に泥棒は魅入られ、吸い込まれるように視線が刀身から離せなくなった。


「こ、これ。試し切りってやつしてぇ。人を切りてぇ……」


 泥棒は、ゆらりと立ち上がり抜き身の刀を持ったまま、安宿の部屋から出ようとした。


「泥棒さん、止まりなさい。そのままでは、貴方殺人も罪になってしまいますよ?」


 泥棒の背後に、いきなり長身長髪、眼鏡を掛けた美男子が出現した。


「ぐるるぅ?」


 既に泥棒の眼は赤く濁り、正気を完全に失っていた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ハジュンさん、大丈夫かなぁ?」


「マスターは絶対に大丈夫ですぅ。だって、あんなオタクでも絶対無敵の第六天魔王、鬼神様ですよ。マスター倒すなら、本物の神様呼ばなきゃ無理ですぅ」


「で、此方達はどうしてここに居るのじゃ?」


 3人娘達、今は泥棒が宿泊している安宿近くの自動車内に待機中。

 普段ならチヨはハジュンと一緒に行くのだが、流石に妖刀相手で危険なので、マオ達の警護役として来ている。


「えっとぉ。もし大変な事になりそうなら警察や消防に通報するのと、情報統括だったっけ? チヨちゃん、これでハジュンさんの眼鏡カメラからの映像中継できたよ」


「ほう、今の科学はこんな事が出来るのじゃなぁ」


「えっとぉ。あー、マスター。見え切りとかカッコつけ足らないのぉ。せっかく、やるなら特撮ヒーローとかみたいにやらなきゃなの!」


 少し狭い車内で、眠気覚ましにコーヒーを仲良く飲みながらわいわいやっている3人娘。

 彼女達は、ハジュンの活躍をタブレット越しに見守った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ぐぎょ?」


「あらあら。早速正気無くしちゃいましたか。これは、速攻で倒さなきゃ不味いですね」


 もはや幽鬼の様になっている泥棒を見て、ため息を付くハジュン。

 懐から、抜けないサイズの宝剣を抜いた。


「さあ、来なさい!」


 ハジュンはちょいちょいと指先で泥棒を挑発した。


「ぎゃぁぁ!」


 妖刀を大きく振りかぶってハジュンに踏み込む泥棒。


「はぁ。まったく剣術の基本もなってないですね。残念。もっと剣豪とかと戦いたいものです」


 ため息を付いて残念がるハジュン。

 妖刀の一撃を右手に持った両刃の宝剣で受け止める。

 そして、踏み込んでスポンと左手手刀を泥棒の腹に突き刺した。


「ぎぃぃぃ!」


 そして腹の中を一ひねりしてから手刀を抜いたハジュン。

 泥棒は激痛に悶えて気絶、妖刀をぽたりと落とした。


「貴方、内臓脂肪多いですよ。刑務所で健康的な食生活をして下さいね」


 腹から無造作に抜いた左手をぴょいと振り、妖刀を拾うハジュン。

 その手は、一切血で汚れていなかった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「きゃー! ハジュンさん、お腹なんてぶち抜いたら泥棒さん殺しちゃうのぉ!」


「マオお姉さん、大丈夫だって。ほら、左手全く血が付いて無いでしょ? あれ、霊的治療と同じで、刺してるけど一緒に治癒もしているの。まー、痛いらしいけど」


「おう、腹の中をかき混ぜたのじゃぁ! あれは死なんでも死ぬほど痛いのじゃぁ!」


 マオとカガリは、ハジュンの「虐殺」を見たくないから眼の前を手で覆うも、チヨは大丈夫と気にしていない。

 事実、ハジュンの左手、袖先さえも全く汚れが無い。


「マオさん、こちらハジュンです。犯人取り押さえました。警察への連絡お願いします」


「は、はいですぅ。ハジュンさん、お疲れさまでした!」


 ハジュンからの連絡を受けたマオは、びっくりしつつも返事をした。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ハジュンさん、ありがとうございました。まさか、お頼みしたその日のうちに事件解決するなんて、助かりました」


 事件解決後の翌々日、石川はポケットマネーで買ったお菓子を持って「六波羅探題」に来た。


「いえいえ。誰か被害者が出てからでは遅いですものね。これで市長さんとかも安心ですね」


 丁重に石川の相手をするハジュンをよそ眼に、石川が持ち込んだお菓子に興奮する3人娘。


「あ、このお菓子は山の道の駅でしか買えないやつですね。ありがとうございます」


「アタシ、この饅頭、だいすきー!」


「此方にも食べさせるのじゃぁ!」


「ははは、喜んでもらって良かったよ。ハジュンさん、今後とも宜しくお願いしますね」


「はい、こちらこそ!」


 今日もアヤカシ喫茶店「六波羅探題」は賑やかだ。

「今回は城山と刀剣じゃな。この辺りも作者殿が得意分野じゃな。この城、ワシもタケ殿の実家に行ったときに行ったのじゃ」


 『異世界CSI』タケ君の実家は、お城のすぐ下ですからね。

 今回の話もフィクションです。

 人物に関して、一切モデルは居ませんので……。

 ある一人以外はですけど、身内だから問題無いかな(笑)


 では、今後とも非定期に更新しますので、宜しくお願い致します。

 この話は同じものをアルファポリスさんにも投稿しており、キャラ文芸大賞に参加してます。

 応援よろしくね!

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